あなたはゴヤの『我が子を食らうサトゥルヌス』という絵画をご存知でしょうか?
この作品は、ゴヤの「黒い絵」のひとつとして有名です。
この記事では、その意味や背景、どこにあるかについて解説していきます。
一緒にその魅力に迫っていきましょう。
本記事のコンセプト上、最初にじっくり鑑賞からしていますが、すぐ解説をご覧になりたい方は目次で気になる個所をクリックすれば直ぐに飛べるので、ご活用ください。
ぬいと一緒に絵画を学ぼう!
『我が子を食らうサトゥルヌス』を鑑賞
え。何この絵。
こわ。。。
めっちゃ食らってる。
背景めっちゃ黒いね。
『我が子を食らうサトゥルヌス』を解説
皆さん隅々まで作品鑑賞は出来ましたでしょうか?
ここからは、『我が子を食らうサトゥルヌス』の解説をしていきますので是非最後までご覧ください!
知りたいような。
知りたくないような。
題名 :我が子を食らうサトゥルヌス
作者 :フランシスコ・デ・ゴヤ
製作年:1819年 – 1823年
種類 :油彩画
『我が子を食らうサトゥルヌス』は、フランシスコ・デ・ゴヤの晩年の作品で、連作「黒い絵」(Pinturas Negras)の一部を成す作品です。
ゴヤはこの時期、病により聴覚を失い、「聾者の家」(Quinta del Sordo)と呼ばれた自宅に引きこもる生活を送っていました。
この作品は当初、彼の自宅の壁を飾るための装飾壁画として描かれたが、ゴヤの死後、キャンバスに転写されたました。
『我が子を食らうサトゥルヌス』の意味~なぜ我が子を食らう?~
『我が子を食らうサトゥルヌス』は、ギリシア・ローマ神話に登場するサトゥルヌス(ローマ神話ではサターン、ギリシア神話ではクロノス)の伝説を基にしています。
神話では、サトゥルヌスは自らの子どもが将来自分を倒すという予言を恐れ、生まれた子どもを次々と飲み込んだとされています。
神話の詳しいストーリーは下記記事をご覧ください。
神話だとまる飲みしてなかった?
ぬいのいう通り、ギリシャ神話のサトゥルヌスは生まれてきた自分の子供たちをまる飲みにしていました。
しかし、ゴヤの描くサトゥルヌスは、神話のように丸呑みするのではなく、子を頭からかじり、食い殺す凶行をリアルに表現しています。
これは自己の破滅に対する恐怖から来る狂気を象徴しており、一種のパラノイアや権力者の恐怖を描いたものとも解釈されます。
美術的特徴
一つ目の特徴は色彩です。
『我が子を食らうサトゥルヌス』は黒を基調とした暗い色調が特徴で、これが「黒い絵」の名の由来でもあります。
背景はほとんど闇で、サトゥルヌスの姿が浮かび上がるように描かれています。
二つ目の特徴は表現です。
サトゥルヌスの表情は狂気に満ち、子を食いちぎる姿勢は非常に生々しく描かれています。
これはゴヤの心理的苦痛や当時の社会的混乱を反映していると考えられています。
三つ目の特徴は象徴性です。
生まれたばかりの我が子を食らうというサトゥルヌスの行為は、権力者の恐怖、自己破壊、そして老いや死に対する人間共通の恐怖を象徴しているとされています。
『我が子を食らうサトゥルヌス』の影響と評価
ゴヤのこの作品は、その衝撃的なビジュアルと深い心理的・社会的意味から、美術史上重要な位置を占めています。
また、この絵画は常に議論を呼んでおり、解釈は多岐にわたる。サトゥルヌスの行動は一見残酷だが、そこに込められたメッセージは、人間性の暗部や権力の恐怖、そして最終的には人間の運命と向き合うことについて深く考えるきっかけを提供しているように感じられます。
現代社会でも、『我が子を食らうサトゥルヌス』は権力や自己保身に対する批判、あるいは親子関係の複雑さ、自己破壊のシンボルとして参照されることが多い印象です。
アートや文学、さらにはポップカルチャーにおいても、この絵画はしばしば取り上げられ、現代の社会問題や心理状態を象徴的に表現する手段として用いられています。
このように、『我が子を食らうサトゥルヌス』はゴヤの芸術的才能と彼の深い内面世界を映し出す作品であり、その解釈は時代を超えて多様性を持っています。
『我が子を食らうサトゥルヌス』はどこにある?
ゴヤの『我が子を食らうサトゥルヌス』は、マドリードにあるプラド美術館(Museo del Prado)に所蔵されています。
ゴヤがこの作品を描いたのは、彼の自宅「キンタ・デル・ソルド」(Quinta del Sordo)の壁画としてでした。
1874年に壁画が剥がされ、キャンバスに移されてから、最終的にプラド美術館に収蔵されました。
作品は何度も修復が行われており、現在はその恐ろしい美しさを維持しながら展示されています。
ルーベンスの『我が子を食らうサトゥルヌス』
ゴアよりも先にルーベンスがギリシャ神話の「我が子を食らうサトゥルヌス」の場面を描いているので、おまけに紹介します。
題名 :我が子を食らうサトゥルヌス
作者 :ピーテル・パウル・ルーベンス
製作年:1636年 – 1638年
種類 :油彩画
こっちの作品はまる飲み感が出ているね。
まとめ
今回はゴヤの『我が子を食らうサトゥルヌス』について、背景やどこにあるか、意味などについて解説しました。
『我が子を食らうサトゥルヌス』は、ゴヤが晩年に描いた「黒い絵画」の一つであり、彼の深い心理的苦悩や社会的混乱を象徴する作品です。
古代の神話をモチーフにしながらも、この絵画は普遍的な恐怖や親子関係の複雑さを描き出します。
現在、プラド美術館で見ることができるこの作品は、美術史上最も衝撃的な絵画の一つとされ、ゴヤの革新的な美術手法と深い人間洞察を示しています。
この絵画は、視覚的な衝撃だけでなく、観る者に自分の内面と向き合う機会を提供し、芸術が持つ力と意義について深く考えさせるものです。
ゴヤの作品は、時間を超えて我々に語りかけ、感情の深部に触れることで、永遠の価値を保持しています。