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三代歌川豊国《花源氏夜の俤》を解説!ゴッホに影響を与えた浮世絵

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浮世絵
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ゴッホがパリで夢中になった日本の浮世絵。その中でも、三代歌川豊国(歌川国貞)の《花源氏夜の俤(よるのおもかげ)》は、夜桜・提灯・豪奢な衣装が一枚の舞台のように響き合う傑作です。
ここでは作品そのものの魅力を押さえつつ、輪郭線と色面の使い方が、どうゴッホの画面設計へ翻訳されたのかを、具体的な作品名を挙げながら分かりやすく解説します。

ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」で鑑賞できる作品です。

ぬい
ぬい

浮世絵って“きれい”だけじゃなくて、構図の教科書にもなるんだね

そう。ゴッホはそこをガッツリ吸収して、自分の絵に作戦として落とし込んだんだ

レゴッホ
レゴッホ
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《花源氏夜の俤》

まずは簡単に作品の情報を紹介します。

作品詳細

作品名:《花源氏夜の俤》

作者:三代歌川豊国(歌川国貞)

制作年:1861年(文久元年)

技法:大判錦絵三枚続

サイズ:各38.0 × 25.0 cm

所蔵:ファン・ゴッホ美術館(アムステルダム)

ぬい
ぬい

三枚続って横長のパノラマ感、映えるよね

しかも夜景×提灯。光の設計がわかりやすいのがミソ

レゴッホ
レゴッホ
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背景|国貞と「偐紫田舎源氏」ブームの余波

江戸後期、柳亭種彦の通俗小説『偐紫田舎源氏(にせむらさき いなかげんじ)』が大ヒットし、源氏モチーフを当世風に戯れる“源氏絵”が大流行します。国貞(のちの三代豊国)はこのブームを牽引し、絵本の挿絵から錦絵の独立作まで幅広く展開しました。本作の“花源氏”も、原典『源氏物語』の高貴な情趣を、江戸の遊興・四季の行楽に映し替える典型です。

ぬい
ぬい

“いなか源氏”がベストセラーって、当時の源氏人気すごい

うん。国貞は役者絵の達人だけど、物語絵でもキラリなんだ

レゴッホ
レゴッホ
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構図と登場人物|夜桜の舞台に“花源氏”が立つ

三枚続の中央では、龍文の羽織をまとった色好みの“花源氏”が夜空を仰ぎ、左右には華やかな女性や小姓が控えます。手前の敷物と欄干が舞台のように画面奥を開き、桜と池の庭園、吊り灯籠が遠近をつなぐ設計。鑑賞者は縁側に座したまま上演中の一幕に立ち会うかのような没入感を得ます。英語タイトルに “The Night Appearance of Genji among the Flowers” とある通り、花(桜)と夜景が主役です。

ぬい
ぬい

中央の視線、月を探してるみたい

本当だね!

レゴッホ
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色彩と版技法|灯りの“にじみ”を版で演出する

群青の夜空、緋色の敷物、翡翠色の植え込み。対照の強い色面を重ねつつ、提灯の白はにごりの少ない胡粉を厚く置いて光源化。桜は淡紅と白の重ね摺りで夜気にふわりと浮き、衣装文様には雲母摺やぼかしが感じられます。こうした刷りの妙が、夜の涼やかな空気と宴の熱気を同居させます。

ぬい
ぬい

提灯の白、ほんと光って見える

刷り師の腕だね。版木と絵の具で“照明”を作ってる

レゴッホ
レゴッホ
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題名の意味|「夜の俤(おもかげ)」が呼び覚ます余情

“俤(おもかげ)”は面影・残像・余情のニュアンス。夜桜の下、灯に照らされた顔や衣の一瞬の美をすくい取るタイトルです。欧文表記も “Shadows of the Night” や “Night Appearance” とされ、「夜にうつる面影」という解釈が各館で共有されています。

ぬい
ぬい

“俤”って言葉、タイトルだけでロマンあるわ

“俤”って言葉、タイトルだけでロマンあるわ

レゴッホ
レゴッホ
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ゴッホに与えた影響|“平面と装飾”が南仏で花開く

三代歌川豊国(国貞)のような江戸後期の浮世絵は、はっきりした輪郭線、広いベタ面、衣装文様のリズム、思い切ったトリミングで場面を作ります。
ゴッホがパリで大量に集めて眺めていたのが、まさにこのタイプの版画でした。彼は弟テオや友人たちと日本版画を交換し合い、パリで日本版画の展示を開いたほど熱中します。背景に浮世絵を貼り込んだ《タンギー爺さん》、栄泉をもとに描いた《おいらん(花魁)》は、その熱の“証拠”です。

豊国三代の源氏絵・美人画・役者絵に見られる、図案化された衣装や欄干・障子の直線、灯りの白さの“面”は、ゴッホにとって大きな学びになりました。アルルに移ってからの《ひまわり》《黄色い家》《アルルの寝室》では、色面をぶつける設計と、輪郭で形を留めるやり方が強まり、画面全体が装飾的に響き合います。
夜景作《夜のカフェテラス》《ローヌ川の星月夜》の高いコントラストも、夜と灯を“色の面”で対置する浮世絵の視覚感覚と通じます。

つまり《花源氏夜の俤》のような華やかな当世風源氏絵は、ゴッホにとって“物語”というより画面づくりの教科書でした。人物のポーズや衣装の模様、欄干が導く奥行きの取り方——そうした“絵の文法”が、南仏期の装飾的・色彩的な作風にまでつながっていきます。

ぬい
ぬい

ゴッホって浮世絵を“読む”より“使う”感じだね

そうそう。国貞のキメ台詞はそのままじゃなくて、線と色のルールとして吸収したわけ

レゴッホ
レゴッホ
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まとめ(ゴッホファンのための視点)

《花源氏夜の俤》は、物語絵としての魅力に加え、輪郭線で形を留め、色面をぶつける浮世絵の“画面のルール”を凝縮した一枚です。ゴッホはパリでこうした版画を集め、南仏で装飾性と強い配色へと転化しました。

提灯の白、桜の面、欄干の直線——その配置感覚は《タンギー爺さん》の背景貼り込み、《おいらん(栄泉を模して)》の図案化、《夜のカフェテラス》《ローヌ川の星月夜》の夜景コントラストにまで連なります。
この浮世絵を手がかりにゴッホを見ると、彼の“色と線の決断”が、単なる感情の爆発ではなく学習と翻訳の結果だったことがはっきり見えてきます。

ゴッホを深掘りしたい人こそ、《花源氏夜の俤》を比較のレンズに。関連作と見比べれば、ヴィンセントの画面設計がどう成熟していくか、道筋がくっきり浮かび上がります。

ぬい
ぬい

浮世絵→ゴッホって、まっすぐ一本線でつながったわ

だね。次は《おいらん》と並べ見しよ。線と面の翻訳がもっとクリアになるよ

レゴッホ
レゴッホ
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参考(主要出典)

  • Museum of Fine Arts, Boston: The Night Appearance of Genji among the Flowers(作品ページ) collections.mfa.org
  • Honolulu Museum of Art: Flower Genji, Shadows of the Night(作品ページ) honolulu.emuseum.com
  • 北海道立美術館:収蔵データ「花源氏夜の俤(1861, 大判錦絵三枚続)」 北海道立美術館ポータルサイト
  • 早稲田大学古典籍データベース:『花源氏夜の俤』刊記(板元:近久) wul.waseda.ac.jp
  • 『偐紫田舎源氏』の概説(Wikipedia/神奈川県立歴博の解説) ウィキペディア+1
  • ※本記事は上記一次情報・公的データに基づいて記述しています。表記(年記・板元・題箋)は摺りや版本の差で揺れがあるため、実見の際は現物キャプションを優先してください。
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