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レオナルド・ダ・ヴィンチの《ジネーヴラ・デ・ベンチ》を解説!

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イタリア・ルネサンス
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レオナルド・ダ・ヴィンチ《ジネーヴラ・デ・ベンチ》は、《モナ・リザ》より前に描かれた若きレオナルドの女性肖像画です。
表情をほとんど動かさない貴婦人と、彼女を取り囲む鋭い針葉の木立。小さな一枚ですが、見るほどに静かな緊張感が高まっていきます。

モデルはフィレンツェの名家の娘ジネーヴラ・デ・ベンチ。彼女の婚約か結婚の記念として描かれたと考えられ、女性肖像が「横顔」で描かれることが多かった当時としては、珍しい正面に近いポーズが採用されています。

しかもこの作品、板の裏側にも月桂樹やシュロ、ジュニパーとラテン語のモットーが描かれた“両面仕様”になっていて、外見だけでなく人格や評判までも可視化しようとするレオナルドのこだわりが詰まっています。

この記事では、作品データ、モデルの素顔、革新的な描き方、植物モチーフとラテン語の意味、そして現代での位置づけまで、ジネーヴラの肖像をじっくり解説していきます。

ぬい
ぬい

《モナ・リザ》より先に、こんなガチな肖像画を描いてたのかってちょっとびっくりだよ。

だよね。もうこの段階で“人間の内面を描く”ってテーマが始まってる感じする。

レゴッホ
レゴッホ
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《ジネーヴラ・デ・ベンチ》

まずは簡単に作品の情報を紹介します。

作品詳細

・作品名:ジネーヴラ・デ・ベンチ
・作者:レオナルド・ダ・ヴィンチ
・制作年:1470年代半ば〜後半頃(おおよそ1474〜1478年)
・技法:板に油彩
・サイズ:縦約38.1cm × 横約37cm(ほぼ正方形)
・所蔵:ナショナル・ギャラリー・オブ・アート(ワシントンD.C.)
・備考:アメリカ大陸で恒常的に公開されている唯一のレオナルド作品

ぬい
ぬい

ミラノとかパリじゃなくて、ワシントンにあるレオナルドってこれだけなんだ。

うん、アメリカに行く機会あったら“レオナルド枠”はこの子一択ってことになるね。

レゴッホ
レゴッホ

<作者についての詳細はこちら>

レオナルド・ダ・ヴィンチを解説!代表作と発明、性格、名言に迫る

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モデルのジネーヴラとは誰か|フィレンツェ貴婦人の素顔

ジネーヴラ・デ・ベンチは、15世紀フィレンツェで知られた上流階級の女性です。銀行業や政治に関わる一族に生まれ、若くして教養と美貌を備えた女性として名を馳せました。メディチ家の周辺で活躍した詩人たちが、彼女を題材にした詩を書き残していることからも、その存在感の大きさがうかがえます。

この肖像は、ジネーヴラが十代後半で結婚した時期と重なるため、婚約あるいは結婚を記念して描かれたと考えられています。当時、女性の肖像画は家と家を結ぶ結婚にまつわる“名刺”のような役割を持っており、花嫁の品位や教養を視覚的にアピールするものでした。

ジネーヴラは、正式な夫とは別に、ヴェネツィアの外交官ベルナルド・ベンボとも精神的な交流を持っていたとされています。彼が残した詩文からは、恋愛感情と精神的な尊敬が入り混じった、当時流行していた“プラトニック・ラブ”の雰囲気が読み取れます。

ぬい
ぬい

政治も文化もごちゃっと混じってるフィレンツェで、こんな貴族女子として生きるのかなり大変そう。

その空気感ごと切り取ってるのがこの肖像って思うと、急に人間ドラマが濃く見えてくるね。

レゴッホ
レゴッホ
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レオナルド初期の肖像画表現|正面に向き合う視線の衝撃

《ジネーヴラ・デ・ベンチ》のいちばんの特徴は、当時としては珍しい三四分位(肩から上を斜めに向けて、顔だけこちらを向く)のポーズです。女性を真横からの「横顔」で描く伝統が根強かったフィレンツェで、レオナルドはあえて視線を観る者の方向へ向けさせ、より心理的な距離の近さをつくりました。

肌の描写には、のちに《モナ・リザ》で完成するスフマートの初期形がすでに見られます。輪郭線を目立たせず、光と影を柔らかくぼかしながら重ねることで、ジネーヴラの頬や顎は陶磁器のように滑らかな質感を帯びています。

背景は、針葉樹の木立と湖や丘が奥へ続いていく構図になっており、人物を単に室内に座らせるのではなく、自然の空気感と結びつけようとするレオナルドの志向がはっきり見て取れます。この「人物+風景」という組み合わせも、後の《モナ・リザ》へとつながる重要な試みです。

ぬい
ぬい

正面からじっとこっち見てくる感じ、今見ても結構攻めた構図だよね。

うん、当時の人たちは“肖像画に見つめ返される”体験、相当インパクトあったと思う。

レゴッホ
レゴッホ
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ジュニパーの木と「笑わない顔」に隠されたメッセージ

ジネーヴラの頭の後ろに広がる濃い緑色の木は、ジュニパー(ねずの木)です。イタリア語でジュニパーは「ジネプロ(ginepro)」と言い、モデルの名前Ginevraと音が響き合っています。名前の言葉遊びであると同時に、この木はルネサンス期には女性の貞節や純潔を象徴する植物とされていました。

つまり、ジネーヴラの顔の周囲をぐるりと囲む棘だらけのジュニパーは、「彼女自身の名」と「貞節」という徳を、同時に視覚化したモチーフです。柔らかい肌と冷たい針葉樹のコントラストは、美しさの裏にある厳格さや緊張感を伝えているようにも見えます。

表情も印象的です。口元はきゅっと結ばれ、目線はやや斜め下に落ちています。この無表情に近い顔は、現代の感覚だと「少し冷たそう」に見えますが、当時の理想的な貴婦人像は、感情を荒立てず、節度を保って振る舞うことが重視されました。ジネーヴラの表情には、その価値観がそのまま刻み込まれているといえるでしょう。

ぬい
ぬい

“ニコニコしないことが礼儀正しい”っていう価値観、けっこうカルチャーショック。

だからこの無表情も“クールな美徳アピール”と思って見ると、ちょっと見え方変わるよね。

レゴッホ
レゴッホ
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裏面のラテン語モットー|「美は徳を飾る」というメッセージ

この肖像画のパネル裏面には、月桂樹とシュロの枝が円を描くように組み合わされ、その中心にジュニパーの小枝が描かれています。そこに絡みつく帯には、ラテン語で「VIRTUTEM FORMA DECORAT」と書かれています。意味は「美は徳を飾る」あるいは「美しさは徳を引き立てる」と訳されます。

中央のジュニパーは当然ながらジネーヴラの名前を暗示し、月桂樹は知性や詩の才能、シュロは道徳的な徳や勝利を象徴すると解釈されています。三つの植物とモットーを合わせると、「知性と徳を備えた女性ジネーヴラ。その徳は、外見の美しさによって一層輝く」という意味合いになります。

さらに赤外線調査によって、このモットーの下層に、ベンボ家のものと見られる別の標語「Virtus et Honor(徳と名誉)」が書かれていた痕跡も確認されています。このことから、ヴェネツィアの外交官ベルナルド・ベンボがこの肖像の制作に深く関わっていた可能性が高いとされています。

ぬい
ぬい

表が顔、裏が性格と人間関係の“エンブレム”って、ほぼ推しグッズだよね。

分かる。裏面だけ見ても一枚の作品として成立してるのがまたオシャレなんだよな。

レゴッホ
レゴッホ
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失われた手と、《モナ・リザ》につながるレオナルドの肖像表現

現在の《ジネーヴラ・デ・ベンチ》は胸から上の肖像ですが、研究者の多くは、もともとは下部にジネーヴラの手が描かれていたと考えています。パネルの下端が後世に切り詰められていることや、レオナルドの残した手のデッサンの中に、この作品のためと思われる習作があることがその根拠です。

もしオリジナルの姿が残っていれば、《ジネーヴラ・デ・ベンチ》は《モナ・リザ》と同じように、膝から上を描いた女性半身像として並べて比較されていたはずです。現存部分だけを見ても、背景の処理や顔の角度、視線の扱いなど、後の《モナ・リザ》につながるアイデアがすでに詰まっているのが分かります。

若きレオナルドはこの一枚の中で、「写実的な観察」と「理想化された美」と「内面表現」の三つを同時に追いかけています。その試行錯誤の痕跡こそが、《ジネーヴラ・デ・ベンチ》を単なる美人画以上の作品にしているポイントです。

ぬい
ぬい

手が残ってたら、完全に“もう一人のモナ・リザ”ポジションだったかもしれないね。

でも顔だけだからこそ、この無表情に全部の集中線が集まってる感じもあって、これはこれで好き。

レゴッホ
レゴッホ
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アメリカで見られる唯一のレオナルドとして

《ジネーヴラ・デ・ベンチ》は、現在ワシントンD.C.のナショナル・ギャラリー・オブ・アートに所蔵されています。1967年、リヒテンシュタイン公家のコレクションから購入されたときには、当時としては史上最高額クラスの値段がつき、大きな話題になりました。

そして今もなお、アメリカ大陸で常設展示されているレオナルド作品はこの一枚だけです。ヨーロッパまで行かなくても、レオナルドの油彩を実物で体験できる場所として、多くの来館者がまっ先に足を運ぶ作品になっています。

モナ・リザのような微笑みはありませんが、その代わりに、沈黙と緊張の中に知性と誇りが凝縮された独特の存在感があります。レオナルドが「美」と「徳」の関係をどう考えていたかを読み解く上でも、《ジネーヴラ・デ・ベンチ》は欠かせない一枚です。

ぬい
ぬい

派手さはないけど、じわじわ効いてくるタイプの名作って感じ。

そうそう。一周回って“この静かさがレオナルドの本気なんだな”って思えてくる。

レゴッホ
レゴッホ
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おすすめ書籍

このサイトの参考にもさせて頂いている本を紹介します。

まとめ:静かな顔に刻まれた「美と徳」のプレッシャー

《ジネーヴラ・デ・ベンチ》は、単に“美人を描いた若き日のレオナルド”というだけの作品ではありません。
名前と結びついたビャクシンの木、裏面のラテン語の銘文、「美しさ」と「美徳」を求められた上流女性の人生、そしてそれらを冷静に観察したレオナルドのまなざしが、一枚の小さな板に凝縮されています。

微笑まないジネーヴラの顔は、どこか現代的でもあります。理想と期待を背負わされながら、心の底ではうっすら疲れているような表情に、21世紀を生きる私たちも共感してしまうのではないでしょうか。

ぬい
ぬい

モナ・リザよりも、こっちの方が感情移入しやすいかもしれない。

だよね。“完璧な微笑み”じゃなくて、“がんばってるけどしんどそうな顔”って、めちゃくちゃリアルだもん。

レゴッホ
レゴッホ
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