ギリシャ神話の英雄ヘラクレスが挑んだ「12の功業」。
その中でも、第四の試練である「エリュマントス山のイノシシの捕獲」は、ただの怪物退治ではありません。
生け捕りという難題、友情との別れ、そして王の臆病な反応まで――この物語には、強さと人間らしさが同時に描かれています。
この記事では、神話の内容から登場するイノシシの正体、途中で出会うケンタウロス、さらには美術作品に描かれたシーンまで詳しく解説します。
ギリシャ神話の深みとヘラクレスの魅力を、ぜひ一緒に探ってみましょう。

第4の功業!
12の功業とは?

ギリシャ神話において、ヘラクレスは「12の功業(トラブス)」と呼ばれる試練を課された英雄として知られています。これは、彼が犯してしまった罪を贖い、不死の存在へと至るための償いとして与えられたものです。
この試練はミュケナイの王エウリュステウスによって命じられたもので、常人では成し遂げられないような困難な任務が次々に課されました。
その中でも、今回ご紹介する「エリュマントス山のイノシシの捕獲」は、ヘラクレスにとって四番目の功業にあたります。

12個も試練あるって知ってた?
しかもただの筋トレじゃなくて、神様の世界まで巻き込んだ大冒険ばっかりだよ……!
エリュマントス山のイノシシとは?
このイノシシは、ギリシャ中部・アルカディア地方のエリュマントス山に生息していた巨大な野生動物でした。体は非常に大きく、鋭い牙と凶暴な性格で人々を恐れさせていた存在です。畑を荒らし、村を襲い、手に負えない存在として神話に登場します。
ヘラクレスはこのイノシシを「生け捕りにしてミュケナイへ連れてくる」よう命じられました。

ただ倒すんじゃなくて、「生け捕り」っていうのがまた難易度高いんだよね……
イノシシって俊敏で賢いんだよ?
ポロスとの出会いとケンタウロスとの騒動

任務の途中、ヘラクレスはエリュマントス山のふもとで、知恵あるケンタウロスのポロスと出会います。ポロスはヘラクレスを歓迎し、もてなしました。ここで彼らは神々のワイン(共用のもので、ケンタウロス全体の宝物)を開けてしまいます。
これに怒った他のケンタウロスたちが襲いかかり、戦闘が勃発します。ヘラクレスは戦いに勝利しますが、誤ってポロスを死なせてしまうという悲劇的な出来事もありました。

まさか友情のひとときがこんな悲劇につながるなんて……神話って容赦ないね。
でも、ポロスの話があることで物語に奥行きが出る気がするな。
イノシシの捕獲

イノシシは雪の積もる山を駆け回っていましたが、ヘラクレスはそれを巧みに追い詰め、最終的には深い雪の中で身動きが取れなくなったところを捕らえることに成功します。
この姿を縄で縛り、生きたままミュケナイへと連れ帰るのです。
そして、イノシシを見せられたエウリュステウス王は、恐怖のあまり大きな壺の中へ逃げ込んだとされています。彼の臆病さを示す有名なエピソードですね。


エウリュステウス、毎回びっくりしすぎだよね。
でも壺に隠れるとか、ちょっとかわいくて笑っちゃうかも。
美術作品に見るこの功業

この功業を描いた作品は、ルネサンスから近代にかけて多数存在しています。なかでも有名なのが、古代ローマ時代の石棺やルネサンス期の版画作品、19世紀の新古典主義画家による油彩画です。
多くの作品では、ヘラクレスが縄で縛った巨大なイノシシを引きずっている場面や、エウリュステウスが壺に隠れているコミカルなシーンが描かれています。

このエピソード、画家たちもユーモアを交えて描いてるよね。
真面目な英雄譚の中に、ちょっとした笑いの要素が入ってて絶妙!
豆知識|「エリュマントス山」とは?
エリュマントス山は実際にギリシャにある山で、現在も自然豊かな地域として知られています。古代ギリシャの人々は、そこを神秘的な存在の住まう場所と考えていたのです。
また、この功業のエピソードは、「野性を制御する」ことの象徴ともいわれ、人間の理性によって自然の猛威をコントロールするという深い意味も含まれています。

なるほど、ただのイノシシ退治じゃなくて、自然との向き合い方っていうテーマも隠れてたんだね。深いなぁ……。
おすすめ書籍
下記記事でギリシャ神話を学ぶ上でおすすめの書籍を紹介します。
・ギリシャ神話の本ランキング!初心者におすすめのわかりやすい5選!

リンク飛ぶのめんどくさい人向けにここでも紹介!
どちらもわかりやすくて初心者から上級者までおすすめの本です。
まとめ
「エリュマントス山のイノシシの捕獲」は、ヘラクレスにとって肉体的な力だけでなく、冷静さと持久力、さらには思いやりや悲しみといった人間的な感情まで問われる試練でした。
フォロスとの交流、イノシシの追跡、そしてエウリュステウスのリアクション……このエピソードは単なる捕獲劇ではなく、ギリシャ神話らしい豊かな物語性をもっています。
この後も続く「12の功業」では、さらに壮大で困難な試練が待ち受けています。ヘラクレスの冒険の続きを、どうぞお楽しみに!
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なんだかんだでこの功業、好きかも!ドキドキもあるし、しんみりもあるし。
ヘラクレスの魅力、どんどん深まっていくね。