ヨハネス・フェルメールといえば、静謐な室内画や「真珠の耳飾りの少女」で知られていますが、
ヨハネス・フェルメール初期の作品『取り持ち女』は、
彼の静謐なイメージとは異なり、にぎやかで大胆な場面を描いています。
売春宿の一幕をテーマにしたこの絵には、若きフェルメールの挑戦と試行錯誤が詰まっています。
この記事では、『取り持ち女』を初心者にもわかりやすく解説。
作品の背景、見どころ、フェルメールの隠れた個性まで、丁寧に読み解きます。

フェルメールの新たな一面を一緒に発見していきましょう!
作品基本情報

タイトル:取り持ち女(The Procuress)
制作年:1656年
サイズ:143 cm × 130 cm
技法:油彩/キャンバス
所蔵先:ドレスデン国立絵画館(ドイツ)

今回の絵、サイズもテーマも、いつものフェルメールさんとちょっと違うね!
・赤や金の豪華な色づかいが目をひく。
・大人の社交場面をウィットに富んで描写。
・初期フェルメールらしい、活気ある一作。
作品概要|フェルメール初期の異色作
『取り持ち女』は、フェルメールが20代半ばで描いた初期作品です。
題材は、売春宿での取引を描いたもので、当時のオランダでは人気のジャンルでした。
普段のフェルメールに見られる「静謐な室内光景」とはまったく違い、
この作品は大胆で活気に満ちた雰囲気を持っています。
兵士が金を差し出し、若い女性が受け取ろうとする、そんなきわどい瞬間が捉えられています。

にぎやかで、ちょっとドキドキする場面だね
どこを見たら面白い?|若きフェルメールのエネルギー
色彩の鮮やかさ
赤、黄色、黒といった強い色彩が画面にリズムを与えています。
人物たちの駆け引き

取り持ち女はにやりと笑い、若い女性は微妙に視線を外しながら兵士を受け入れる様子が描かれています。
フェルメール自身?

左端にグラスを持って微笑む男性がいますが、これはフェルメール自身の自画像だという説もあります。

フェルメールさん、こっそり自分も登場してるのかな?なんだか楽しそう!
テーマと時代背景|取り持ち女とは?
「取り持ち女」は、17世紀オランダで人気だった絵画テーマのひとつです。
売春宿を描くことで、
・道徳的な教訓を伝える
・庶民の日常をユーモラスに描く
両方の目的を果たしていました。
この時代のオランダでは、公式には禁じられていたものの、管理下で売春が実質的に認められていました。
フェルメールも時流に合わせ、こうしたテーマに挑戦したのでしょう。

楽しそうに見えるけど、裏にはちゃんと社会の問題も隠れてるんだね!
フェルメールらしさは見える?
『取り持ち女』は、彼の代表作とはかなり雰囲気が違いますが、
じっくり見るとフェルメールらしいポイントが見えてきます。
光の演出
室内に自然光が差し込み、人物たちに柔らかな陰影を作っています。
構成の安定感
派手なテーマにもかかわらず、画面はきちんとバランスよく整理されています。
これらは、後にフェルメールが完成させる「静謐で完璧な室内世界」の基礎になっているのです。

最初は元気いっぱいだけど、ここからフェルメールさんらしい静けさに向かっていくんだね!
豆知識|この絵にはこんな裏話も!
かつてはフェルメールではなく、他の画家の作とされていたことがありました。
でも、キャンバスに書かれた”Meer”(フェルメールの略称)というサインと、材料分析によって真作と認められています。
また、当時のデルフトでは若い画家たちが「売れるテーマ」に挑戦していたため、
フェルメールもこうした市場に応える必要があったと考えられています。

若いころって、いろんなことに挑戦するんだね。
フェルメールさんもがんばってたんだ!
まとめ|フェルメールの冒険の一枚
『取り持ち女』は、
静かなフェルメール作品に親しんでいる人にとっては意外な一枚かもしれません。
しかし、ここには
・若さゆえのエネルギー
・社会を見つめる冷静な目
・そして、確かな技術への挑戦
が詰まっています。
この作品を知ることで、フェルメールがなぜ後にあれほど洗練された作風を持つようになったのか、
その「出発点」を垣間見ることができるでしょう。
ぜひ、静かなフェルメールだけでなく、
情熱的な若きフェルメールにも触れてみてください!