ヨハネス・フェルメールといえば、静かな室内画や「真珠の耳飾りの少女」で知られていますが、
『小路』ではめずらしく屋外──それもごく普通の街角の風景が題材となっています。
レンガ造りの家並みと、そこに暮らす人々の気配。そのすべてが驚くほど静かで、そして深く心に残ります。
本記事では、フェルメールの『小路』について、構図や光の使い方、描かれている場所の特定に至るまで、
その魅力を初心者にもわかりやすく解説します。
フェルメールが切り取った、静けさと日常の美を一緒に味わってみましょう。

絵の中からパンの匂いがしてきそう…
ぬいもこんな町に住んでみたいなあ!
作品基本情報

タイトル:小路(The Little Street)
制作年:1658年頃
サイズ:53.5cm×43.5cm
技法:油彩/キャンバス
所蔵先:アムステルダム国立美術館(オランダ)

絵の中に入り込めそうなくらい、やさしい町の空気が流れてるね!
・デルフトの小さな通りと家々を描いた、フェルメール唯一の本格的な街角風景。
・レンガ造りの壁や窓辺の生活感あふれる描写が温かい。
・静かな日常の一瞬に、優しいまなざしが注がれている作品。
作品概要|フェルメール唯一の街角風景画
『小路』は、ヨハネス・フェルメールが描いた数少ない屋外風景画のひとつで、
彼の作品群の中でも例外的に「街並み」を描いた貴重な存在です。
オランダ・デルフトのとある町の一角。
レンガ造りの建物の前で家事をする女性、扉の奥にのぞく暮らしの気配、縫い物をする少女──
何の事件も起きない日常風景が、驚くほど深い静けさとリアリティで描かれています。
どこを見たら面白い?|構図と空気感に注目!
対称ではない構図の美しさ

建物は画面をほぼ均等に分けていますが、左右非対称で少しずれた門や窓が、自然で心地よいリズムを生んでいます。
生活の断片を切り取る視点

表に出ている女性だけでなく、奥の通路にちらりと見える人物や開け放たれた戸口が、生活の広がりを想像させます。
光の柔らかさ
強いコントラストではなく、全体を包むような優しい光が、画面に穏やかで安定した空気を漂わせています。

まるで風が通り抜けていくみたいな絵。
のんびりした午後って感じがするよ!
フェルメールらしさ|屋外でも失われない静謐さ

フェルメールは通常、室内の静かな光景を描くことで知られていますが、
この『小路』でも、その内面に寄り添うような静けさは健在です。
何も起きないからこそ、心に残る
街角の普通の風景が、なぜこんなに美しく、尊く感じられるのか──
フェルメールは、日常そのものが芸術になりうることを教えてくれます。
対象へのまなざしがやさしい
建物も人も風景も、どれかを目立たせることなく、すべてが自然体で共存しています。
豆知識|どこが描かれているの?
長らく「どこを描いたのか」は不明でしたが、2015年の研究で、
この小路はデルフトのファーリン通り(Vlamingstraat)にあった実在の建物だと判明しました。
フェルメールが生まれ育ったデルフトの町並みを、
愛情と観察眼を持って描いたことがわかる発見です。

この町、ほんとにあったんだ!
フェルメールさん、地元の風景が好きだったんだね
まとめ|フェルメールのもうひとつのまなざし
『小路』は、劇的なストーリーも歴史的事件も描かれていません。
けれどこの絵には、日々を丁寧に生きる人々の姿と、
それを見つめるフェルメールのやさしく、誠実なまなざしが詰まっています。
絵の前に立つと、まるで風や匂いや足音まで聞こえてきそう。
あなたもぜひ、この「何も起きていない絵」の中に、静かな感動を探してみてください。