ヨハネス・フェルメールといえば、静かな室内画や「真珠の耳飾りの少女」で知られていますが、
その初期作品『紳士とワインを飲む女』では、男女のやりとりが描かれた少し緊張感のある一場面に注目が集まります。
にこやかにワインを楽しんでいるように見えるその構図の裏には、
駆け引きや感情の揺らぎ、道徳的なメッセージが密やかに込められているのです。
本記事では、この作品の魅力や構図、象徴的なアイテムなどを、
初心者にもわかりやすく解説していきます。

「たのしそうな空気のなかに、“ほんとはどう思ってる?”がかくれてる感じがするね…
作品基本情報

タイトル:紳士とワインを飲む女(The Glass of Wine)
制作年:1658〜1660年頃
サイズ:66.3 cm × 76.5 cm
技法:油彩/キャンバス
所蔵先:ベルリン絵画館(ドイツ)

二人のあいだに何かある…?って、絵を見てるだけでドキドキしてきちゃう!
・ワイングラスを手にした女性と、ワインを勧める紳士が描かれた作品。
・笑顔の裏に、社交と駆け引きの緊張感がにじむ。
・柔らかな光と精密な室内描写がフェルメールらしさを引き立てる。
作品概要|フェルメールが描いた沈黙の物語

『紳士とワインを飲む女』は、
フェルメールが若いころに描いた男女のやりとりを描いた初期室内画です。
赤いマントの紳士と、ワイングラスを口に運ぶ女性。
一見和やかな空気が漂いますが、実はこの絵には微妙な駆け引き、主導権の探り合いが込められていると考えられています。
どこを見たら面白い?|構図と視線の読み解き
男性の姿勢と位置

紳士は椅子に座りつつも、体を女性に向けて積極的にアプローチしています。
めちゃめちゃ女性の事を見ていますね。
女性の表情と態度

グラスに口をつけつつ、彼女はどこか気まずそうな表情。
無理に飲んでいるようにも見え、本心と行動のズレを感じさせます。
背景の窓と絵画

窓から入る光や、壁にかかる寓意的な絵(音楽と愛)も含めて、
この場面が単なる日常ではなく、恋愛・誘惑・駆け引きの舞台であることがわかります。

ちょっと無理してる気もする…。
この場面、ほんとに楽しいのかな?
フェルメールらしさ|静かな空間に感情を刻む
この作品には、フェルメールらしい表現がすでにしっかりと見られます。
やわらかな自然光の演出
左の窓から入る光が、人物やテーブルにリアルな陰影をもたらし、空気の透明感を感じさせます。
色彩のハーモニー
紳士の赤、女性の白、家具の茶色などが、画面を落ち着かせつつ感情の奥行きを表現しています。
感情を語らずに見せる技法
表情やしぐさは控えめ。でもだからこそ、見る人の想像を引き出し、
「この後どうなる?」と思わせる緊張感が生まれるのです。

フェルメールさんって、静かな“心のセリフ”を描くのがほんとにうまいよね!
豆知識|音楽と恋の関係に注目!

- 後の壁にはステンドグラス風の窓と寓意画が描かれています。
- ステンドグラスには、「Temperantia(節度・自制の美徳)」を象徴する女性像が見られます。これは、当時広く知られたモラル図像です。
- この「Temperantia(テンペランティア)」は、恋や酒に対して慎み深くあるべきという道徳的メッセージを含んでおり、
- 絵の中の男女のやりとりに対するさりげない警告や教訓として読み取ることができます。
- また、女性の衣装や振る舞いの品位の高さ、男性の服装の華やかさなども、17世紀オランダの中産階級的道徳観を反映しています。

『ワイングラスを持つ娘』と同じ!?
まとめ|静かな空間に流れる感情の駆け引き
『紳士とワインを飲む女』は、
華やかでも劇的でもないけれど、静けさの中に濃密な心理劇が展開する作品です。
フェルメールは光と構図を巧みに使い、
「描かないことで語る」という、独自の手法をこの時期から確立し始めていました。
あなたもぜひ、このワンシーンの中に込められた“目に見えない会話”を読み取ってみてください。