同じ画家、同じ主題、そしてほとんど同じ構図――けれど、見れば見るほど違いがある?
レオナルド・ダ・ヴィンチの《岩窟の聖母》には、実は2枚のバージョンが存在します。ひとつはパリのルーヴル美術館に、もうひとつはロンドンのナショナル・ギャラリーに。
描かれた順番は? どうして2枚あるの? 天使の視線、指先の動き、手の配置――細部に宿る“レオナルドの意図”とは?
この記事では、ルーヴル版とロンドン版を徹底比較しながら、2つの《岩窟の聖母》に込められた秘密と魅力をわかりやすくご紹介します。
どちらも本物、でも感じる印象はまったく違う。あなたは、どちらの聖母に心を動かされるでしょうか?
この記事は本当に面白いので必読じゃぞ!


気になるーーーーー!
そもそも《岩窟の聖母》はなぜ2枚ある?
レオナルド・ダ・ヴィンチの《岩窟の聖母》には2つのバージョンがあります。


最初に描かれたルーヴル版は、ミラノの聖フランチェスコ小聖堂の祭壇画として制作されました。しかし報酬や契約をめぐる問題から、最終的に納入されず、レオナルドは第二のバージョンを描くことになります。それが現在ロンドンにあるものです。

つまり“リテイク”がロンドン版なんだね。
でも、両方本気で描いてるのが伝わってくるのすごい。
《岩窟の聖母》ルーヴル版とロンドン版の比較
比較項目 | ルーヴル版(パリ) | ロンドン版(ナショナル・ギャラリー) |
---|---|---|
制作年 | 1483年 – 1486年 | 1495〜1508年頃 |
特徴的な表現 | 天使が鑑賞者を見つめている。指さしジェスチャーがドラマティック | 天使は鑑賞者を見ず、指差しもない。敬虔で静かな雰囲気 |
宗教的象徴 | 明確な象徴は描かれていない(ヨハネの十字架などはなし) | ヨハネの十字架、天使の翼など、典礼的で明確なアイコンが追加 |
背景描写 | 岩の質感と空気感があり幻想的。自然との融合感が強い | 背景は簡素で、人物を際立たせる構図 |
色彩と質感 | スフマートが強く、輪郭がぼかされて柔らかく幻想的 | 明瞭な輪郭と明るめの色調。やや写実的で、情報が整理されている |
印象 | 詩的で神秘的。内省的で深みのある雰囲気 | 説明的で明快。教義的な意味づけがはっきりしている |
解説:
ルーヴル版は芸術性と思想性が高く評価される「詩的な作品」。
ロンドン版はより宗教的に“正統”であることを求められて描かれた「教義的な作品」。
両者を見比べることで、レオナルドが同じ主題をいかに異なるアプローチで描いたかを体感できます。

こうして比べると、それぞれに違う“良さ”があるんだね。まるで双子みたいだけど、性格は全然ちがう感じ!
違い①|ウリエルの視線とジェスチャーの変更
最も明確な違いは、右手の天使(ウリエル)のポーズと視線です。
ルーヴル版:ウリエルは鑑賞者の方をじっと見つめていて、洗礼者ヨハネを指さしている。視線の強さが絵に“語りかける”力を与えている。

ロンドン版:ウリエルはヨハネを指さしておらず、視線も外れている。より控えめで、全体として静かな印象。

この違いによって、ルーヴル版はドラマ性が高く、ロンドン版は敬虔で瞑想的な雰囲気になっています。

ウリエルがこっちを見てると、“あ、話しかけられてる”って感じになるの、ちょっとドキッとするよね。
違い②|ジェスチャーと象徴の明瞭さ
ルーヴル版では、マリアの手が祈るヨハネに向けてかざされているのに対し、ロンドン版ではより抑制的で、手の動きも穏やかです。


また、ロンドン版には以下のような宗教的象徴(アトリビュート)が明確に追加されています。
ヨハネの持つ十字架の杖

ウリエルの翼がはっきり描かれている

光の効果がやや弱まり、人物や象徴が明瞭に浮かぶ構成
この違いにより、ロンドン版は教義に忠実で典礼的、ルーヴル版は詩的で神秘的と評されます。
ロンドン版は“ちゃんとわかりやすく”した感じがする。
でも、ルーヴル版の“なんか不思議…”な感じもいいんだよなぁ

違い③|色彩と背景の表現
色の使い方や背景表現にも差があります。
ルーヴル版:湿度を帯びたような暗めの色調。岩の質感や深みがあり、幻想的な空間。スフマートがより顕著。

ロンドン版:明るめの色使いで、人物がくっきり浮かび上がる。背景の描き込みもやや簡素で現実的。
レオナルドは、視覚よりも感覚や思想に訴える作品を目指していたともされており、ルーヴル版の方がより“芸術家的実験”として評価される傾向があります。


ルーヴル版の方が“夢の中にいるみたい”で、ロンドン版は“祈りの時間”って感じかも。
登場人物ごとの違いを比較
ここからは、登場人物ひとりひとりにの描かれ方の違いを見ていきましょう!
上の情報と被る部分もあるがより詳しく書いてあるぞ!

聖母マリア|中心の構図と保護の象徴
要素 | ルーヴル版 | ロンドン版 |
---|---|---|
位置と姿勢 | 画面の中央、正面を向いて座る。堂々とした存在感。 | ほぼ同様の位置だが、動きがやや控えめ。 |
手のジェスチャー | 左手で祈るヨハネに手をかざし、右手でキリストに優しく触れる。保護と導きの象徴。 | キリストの頭上に右手をかざすジェスチャー。ヨハネには直接触れない。 |
象徴的な意味 | 二人の子を包み込む“母”の象徴として強く描かれ、慈愛と加護を同時に表す。 | より宗教的儀礼の中の“マリア像”として、敬虔な姿が強調されている。 |



マリアさまの“見守ってる感”が違うんだね。
ルーヴル版の方が、“母”って感じが強い気がする!
幼児キリスト|仕草と霊的な気配の違い
要素 | ルーヴル版 | ロンドン版 |
---|---|---|
姿勢と視線 | 地面に座って、祈るヨハネに祝福の手を差し出す。やや正面向き。 | ほぼ同じ構図だが、姿勢がわずかに控えめ。視線も明確ではない。 |
ジェスチャー | 手を軽く上げて祝福を示す姿勢。自然体ながら“救い主”としての性格が暗示されている。 | ジェスチャーはやや不明瞭。より幼い子どもとして描かれた印象。 |
象徴的意味 | ヨハネの祈りを受け止めるキリスト。未来の役割(救世主)を予感させる。 | あくまで“赤ん坊”としての存在感。象徴性よりも自然な描写に近い。 |



同じ構図なのに、ルーヴル版のキリストは“もう何か知ってる”みたいな目に見える気がするの不思議だよね……
洗礼者ヨハネ(幼児)|構図の主題性と象徴の違い
要素 | ルーヴル版 | ロンドン版 |
---|---|---|
姿勢と行動 | 両手を合わせて祈るポーズ。キリストへ信仰を示している。 | 同じように祈っているが、より明確な十字架の杖を持っている。 |
象徴アイテム | 特になし(自然な子どもとしての描写) | 十字架の杖(将来の洗礼者としての予告) |
意味合い | ヨハネの存在がキリストの神性を強調する“予兆”として描かれている。 | 典礼的な意味が強く、明確に「洗礼者ヨハネ」として表現されている。 |



ロンドン版は“これはヨハネです”ってわかりやすくなってるけど、ルーヴル版のさりげなさもすてきだなぁ。
天使ウリエル|構図のバランスと観者との距離感
要素 | ルーヴル版 | ロンドン版 |
---|---|---|
視線とポーズ | 観者の方をじっと見つめる。右手でヨハネを指さし、構図に力強さを与えている。 | 視線は外れ、指さしもなし。やや静かで控えめな存在感。 |
象徴性 | 視線と指さしによって、構図全体を“動かす”役割を担っている。 | 脇役として構図の中にとけ込んでおり、観者との心理的距離は遠い。 |
意味合い | “これは誰なのかを見よ”と観者に語りかけるような、ナビゲーター的存在。 | 神聖な存在として場面に加わっているが、観者に語りかける機能は控えめ。 |



ウリエルが見てくるの、ちょっと緊張するけど……“こっちに問いかけてる感じ”がして印象に残るよね!
総まとめ|“誰に語りかけているか”が違いを分ける
ルーヴル版とロンドン版の大きな違いは、作品が“誰に語っているか”にあります。

ルーヴル版は観者と人物たちの間に視線と感情のやりとりがあり、対話的で詩的
ロンドン版は宗教的意味や象徴が整理され、典礼的で静謐

どちらもレオナルドらしい繊細な構成と光の表現がありながら、作品の「空気感」や「語りかけ方」が異なります。ぜひ、両方をじっくり見比べながら、自分なりの“感じ方”の違いを楽しんでみてください。

どっちが“正しい”じゃなくて、どっちが“好きか”でいいんだよね!
レオナルドって奥が深すぎる……!
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