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ゴッホの《干しわらと風車》を解説!1885年8月ニューネン

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ポスト印象派
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畑のまんなかで、縄で束ねられた干しわらが風を受けて立っています。
地面にはストロークが波のように走り、左奥には風車の影。空には鳥が舞い、夏から初秋へ移る時間がさらさらと紙に流れ込んでいます。

1885年8月、オランダ・ニューネンで制作された《干しわらと風車》は、ゴッホが土の匂いを“線”だけで描き起こした素描です。
色はなくとも、収穫の重みと風の向きがはっきり残り、ニューネン期の締めくくりへ向かう活気が感じられます。

ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」で来日する作品です。

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ぬい
ぬい

モノクロなのに、風の音まで聞こえる感じだね。

でしょ。色よりも線の勢いで季節を走らせてるんだ。

レゴッホ
レゴッホ
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《干しわらと風車》

まずは簡単に作品の情報を紹介します。

作品詳細

作品名:干しわらと風車(英題:Stooks and a Mill

制作時期:1885年8月(ニューネン)

技法・素材:紙に素描(チョーク)
サイズ:22.6×29.5cm

画題:束ねられた干しわらの列、左奥の風車、舞う鳥、畦道のストローク

備考:同時期の屋外素描と併走し、後年の油彩に通じる“運動の設計図”として位置づけられます

所蔵:ファン・ゴッホ美術館

ぬい
ぬい

油彩じゃなくてドローイングなんだ。

うん。でも情報量はぎゅっと詰まってるよ。

レゴッホ
レゴッホ
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背景|ニューネン後期、畑のリズムを紙にとどめる

1885年のゴッホは《ジャガイモを食べる人々》を経て、農村の暮らしをさらに幅広く描いていました。
8月は刈り入れと乾燥の季節。外光が強く、風もある日は、絵具より先に紙と黒の画材を持ち出し、素早い観察で“時間の流れ”を掴みます。
アンヴェルスへ移る前年末までの短いあいだに、こうした屋外素描を重ねることで、後の色彩の爆発に耐える“フォーム”を固めていきました。

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ぬい
ぬい

まず線で骨格を作ってたってことね。

そう。色はあとからいくらでも乗るけど、運動の骨は今つくる。

レゴッホ
レゴッホ
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モチーフ解説|束ねられた干しわらと風車の意味

画面手前の干しわらは、穂を上にして縄で数段に締め、乾燥させるために立てられています。
農具小屋の代わりに風と日を活用する合理的なやり方で、ゴッホはその“縄の段”や穂先の乱れまで簡潔な線で示しています。
左奥の風車は脱穀や粉挽きに関わる村のインフラ。素描ではシルエットだけですが、収穫サイクルの起点と終点を一枚に同居させる役割を果たします。

ぬい
ぬい

わらの結び目だけで、作業の手順が想像できる。

記号みたいに省略してるのに、情報は濃いんだよ。

レゴッホ
レゴッホ
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構図と遠近|手前の“重量”、奥の“風”

もっとも大きな干しわらを画面手前に置き、右奥へ向かって列を短くしていくことで、遠近のスピードが生まれます。
地面に走る斜めのストロークは、風向きと畝(うね)の流れを兼ね、視線を一気に奥へ運びます。
空の鳥の群れは、黒い小点でリズムだけを刻み、風車の静止感と対照を成します。

ぬい
ぬい

足もとから奥へ、視線が“すべる”感じが気持ちいい。

線の向きで道筋を作ってるから、迷わず進めるんだ。

レゴッホ
レゴッホ
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線とトーン|擦り込みとハイライトの最小限

黒チョークの面を擦り込み、陰の側を大きくまとめたうえで、穂先や縄の段にだけシャープな線を入れています。
地面は横方向の広いトーンで“地の重さ”を、干しわらは縦方向のタッチで“束の張り”を表現。
トーンの幅は限られますが、方向が違うだけで材質がはっきり分かれ、色がなくても景色が立ち上がります。

ぬい
ぬい

たしかに、横は土、縦はわらって読み分けられる。

そう。方向を変えるだけで、質感の辞書になるんだ。

レゴッホ
レゴッホ
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季節の気配|収穫後の“少しの静けさ”

刈り取られた畑に残るのは、束ねられたわらと鳥の影、そして風の音だけです。
画面に人の姿はありませんが、縄の締まり具合や地面の踏み跡に、昼までの仕事の熱がまだ残っています。
作業の合間のわずかな静けさを、ゴッホは線の呼吸で記録しています。

ぬい
ぬい

人はいなくても、働いた気配はちゃんと残ってる。

その“余韻”を描けるのが上手いんだよね。

レゴッホ
レゴッホ
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同時期作との連関|家・人・畑が三位一体になる

《小屋》
《ニューネンの教会の会衆》

同年の《小屋》では暮らしの灯が、春の《ニューネンの教会の会衆》では共同体の時間が描かれました。
本作はその外側で回る“畑のサイクル”を担い、家・人・畑が相互に支え合う構図を補完します。
ニューネン期を一枚で語れないのは、その全体が“生活の集合体”として設計されているからです。

ぬい
ぬい

なるほど、これは畑パート。全部合わせて村の一日になるんだ。

うん、パズルがそろうと風景が呼吸を始める。

レゴッホ
レゴッホ
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まとめ|色の前にある“運動の設計図”

《干しわらと風車》は、線の方向とトーンだけで季節と作業のリズムを立ち上げた素描です。
のちの南仏の強い色彩に先行して、ここでは“運動”そのものが主役になっています。
束ねられたわら、走る地面、遠くの風車——その三つが、収穫という時間の一筆書きを完成させています。

ぬい
ぬい

モノクロなのに、景色が頭の中で色づく感じがする。

基礎が正確だと、見る側の心が自然に色を塗ってくれるんだよ。

レゴッホ
レゴッホ

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