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ゴッホ《ルーラン夫人(ラ・ベルソーズ)》を解説!母の手に宿る子守歌

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ポスト印象派
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アルルに移って間もない1889年初頭、フィンセント・ファン・ゴッホは郵便配達夫ジョゼフ・ルーランの妻、オーギュスティーヌ・ルーランをモデルに、連作《ラ・ベルソーズ(子守歌)》を描きました。
手に握られた細いロープは、画面外のゆりかごへ続いている——見えない揺れを、黄色と緑の震える色面で聴かせるように描いた一作です。背景の花唐草は日本の版画への憧れを思わせ、アルルの明るい光と“ジャポニスム”の学びが、人物画にまで届いたことを伝えます。

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ぬい
ぬい

ロープの先に揺りかごがあるって設定、胸きゅんだわ

でしょ? 音のない“子守歌”を色で鳴らしたんだ

レゴッホ
レゴッホ
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《ルーラン夫人(ラ・ベルソーズ)》

まずは簡単に作品の情報を紹介します。

作品詳細

作品名:ルーラン夫人(ラ・ベルソーズ/La Berceuse)

制作年:1889年1月

制作地:フランス、アルル

技法:油彩・カンヴァス

モデル:オーギュスティーヌ(マダム)・ルーラン

備考:同主題で短期間に複数点が制作されました(

ぬい
ぬい

“連作”ってことは何枚もあるんだね

うん。色の配合や背景を少しずつ変えて、理想の“子守歌”を探ったのさ

レゴッホ
レゴッホ
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アルルの冬、母性のイメージを色で組み立てる

モデルはルーラン家の母、オーギュスティーヌ。ゴッホは彼女を“子守歌を歌う人”として捉え、両手に揺りかごの紐をそっと握らせました。画面には赤子は描かれませんが、手の重なりと静かな頬の陰影が、夜半に子を寝かしつける気配を伝えます。
アルル特有の乾いた冬光は、彼のパレットを明るい黄と緑へ押し上げ、人物画でありながら風景のように光が循環します。ゴッホが人物画に“新しい静けさ”を見いだした時期の核心にある一作です。

ぬい
ぬい

見えない赤ちゃんまで想像させるのずるい

想像してもらうのが狙い。省略は最高の演出なんだ

レゴッホ
レゴッホ
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線で囲い、面で歌う――浮世絵から学んだ設計

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輪郭を黒く引き締め、色は面で置く。背景の花唐草は反復するリズムを生み、子守歌の“拍子”のように働きます。こうした装飾的な平面感は、日本の版画に学んだ構図意識の応用です。
ゴッホはこの肖像を中心に、左右へ《ひまわり》を並べる三連の“飾り壁”を構想しており、色相の対比(赤—緑、黄—青)で穏やかな揺れを可視化しようとしました。色で音楽を奏でる、という彼の夢が最も明確に表れています。

ぬい
ぬい

たしかに、背景が“メロディー”みたい

輪郭がベースライン、平塗りがコード。バッチリ音楽してるよ

レゴッホ
レゴッホ
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ルーラン一家の肖像群のなかで

ゴッホはアルル滞在中、ジョゼフ・ルーラン(夫)や子どもたちも繰り返し描きました。《ラ・ベルソーズ》はその中心に置かれる“母の像”で、穏やかな正面性と静謐な色調が群像の支点になります。短い間に複数のヴァージョンに取り組んだのは、色彩のわずかな差が心理の振幅を変えると信じたからです。
構図はほぼ一定でも、背景の花の密度や衣の緑の明度を調整し、慰撫する力の強さを探る研究が続けられました。

ぬい
ぬい

同じポーズでも印象が違うのはそのせい?

そう。色の一段階で気分は変わる。そこが絵の面白さだね

レゴッホ
レゴッホ
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“見えない揺りかご”という発明

彼女の手にある一本の紐は、画面外の揺りかごに結ばれている——この目に見えない設定が作品の肝です。視線は観者の想像力を誘導し、ゆったりと上下する運動が、背景の唐草や衣の折り目、テーブル端の赤にまで伝播していきます。
物語を語りすぎないからこそ、鑑賞者は自分の記憶と重ねて“聞こえない歌”を聴くことができます。ゴッホが目指した「慰めとしての絵」の核心がここにあります。

ぬい
ぬい

紐一本で世界が動くなんて、発想が天才

道具は最小、効果は最大。それがアルルで掴んだ感覚さ

レゴッホ
レゴッホ
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絵を組み合わせて壁を飾る

当時のゴッホは、人物像でも装飾性と色のハーモニーを強め、浮世絵のように“絵を組み合わせて壁を飾る”発想を膨らませていました。ルーラン夫人像は、頭部の黄—オレンジ系と緑の衣を響かせ、平面的な背景と重ねることで、連作の中心に据えるにふさわしい安定感を目指しています。こうした意図は、同時期の書簡や同主題の反復からも読み取れます。

ぬい
ぬい

要は“装飾としてのポートレート”ってことね

うん。生活空間と仲良くできる絵にしたかったんだ

レゴッホ
レゴッホ
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まとめ|ゴッホ《ルーラン夫人(ラ・ベルソーズ)》――色彩で奏でる“子守歌”の肖像

1889年1月、アルルで描かれた《ルーラン夫人(ラ・ベルソーズ)》は、ゴッホが人物画において到達した新しい境地を象徴する作品です。
ここで彼は、母性ややすらぎといった感情を、物語ではなく色と線のハーモニーで表そうとしました。

背景の花唐草は音楽のように揺れ、衣の緑と肌のオレンジが互いに共鳴します。視覚のリズムが“見えない子守歌”を生み、人物画でありながら聴覚的な静けさを感じさせます。
また、浮世絵から学んだ明快な輪郭と平面的な構成によって、写実を超えた象徴的な美しさを実現しています。

この作品は単なる肖像ではなく、「慰めの絵」「音楽のように感じる絵」というゴッホの理想を最も純粋なかたちで体現したもの。
彼が信じた「芸術の力は人を癒す」という思いが、画面のすみずみまで息づいています。

ぬい
ぬい

静かなのに、なんか胸の奥があったかくなる

それが“子守歌”の仕事さ。音じゃなくて、色で眠らせるんだ

レゴッホ
レゴッホ

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