スポンサーリンク

レオナルド・ダ・ヴィンチの《最後の晩餐》を解説!13人のドラマを描いた名画

アフィリエイト広告を利用しています。
イタリア・ルネサンス
スポンサーリンク

レオナルド・ダ・ヴィンチの《最後の晩餐》は、キリスト教絵画の中でも最もよく知られた場面のひとつを描いた作品です。
場所はミラノのサンタ・マリア・デッレ・グラツィエ修道院の食堂。修道士たちが毎日食事をしていた部屋の奥の壁いっぱいに、ほぼ実物大のキリストと十二使徒が並んでいます。

描かれているのは、単なる食事の場面ではありません。福音書ヨハネによれば、イエスはこの席で「あなたがたのうちの一人が、わたしを裏切ろうとしている」と告げます。レオナルドは、そのひと言が発せられた直後、部屋に走った衝撃の一瞬を切り取っています。中央に静かに座るキリストと、両側で激しく動き出す弟子たちの対比こそ、この作品の一番のポイントです。

ぬい
ぬい

“裏切り宣言”が落ちた瞬間のグルチャって感じだね。みんな一斉に『え、誰?』『まさか自分?』ってざわついてる。

しかもそのカオスを、全員分ちゃんと違うリアクションで描いてるのがレオナルドの変態的な観察力だわ。

レゴッホ
レゴッホ
スポンサーリンク

《最後の晩餐》

まずは簡単に作品の情報を紹介します。

作品詳細

・作品名:最後の晩餐
・作者:レオナルド・ダ・ヴィンチ
・制作年:約1495〜1498年
・素材・技法:漆喰下地の壁にテンペラと油彩を用いた「乾式壁画」
・サイズ:縦約460cm × 横約880cm(壁一面を覆う巨大な壁画)
・場所:サンタ・マリア・デッレ・グラツィエ修道院 食堂(ミラノ)
・主題:ヨハネ福音書13章に記される、裏切りの予告が告げられた瞬間の「最後の晩餐」

ぬい
ぬい

数字で見るとデカさが現実味わくね。縦4.6メートルって、ほぼ2階建て分じゃん。

そうそう。写真で見慣れてるけど、実物は“壁が全部スクリーン”みたいな迫力あるから、一度は生で浴びたい。

レゴッホ
レゴッホ

<作者についての詳細はこちら>

レオナルド・ダ・ヴィンチを解説!代表作と発明、性格、名言に迫る

スポンサーリンク

制作の背景|スフォルツァ家の修道院を飾る大型プロジェクト

この作品は、ミラノ公ルドヴィーコ・スフォルツァの依頼で描かれました。彼は自分の一族のための礼拝堂を備えた教会として、サンタ・マリア・デッレ・グラツィエを改築し、その一環として食堂の壁画をレオナルドに任せます。

食堂の反対側の壁には、別の画家が描いた《磔刑》があり、《最後の晩餐》と向かい合う構成になっています。修道士たちは食事のたびに、キリストの最期の晩餐と十字架刑を視界におさめながら、祈りとともにパンを口にしていたわけです。

レオナルドは1490年代半ばから数年にわたり、この壁画に取り組みましたが、フレスコ画のように一気に描き上げるのではなく、構想を練りながら何度も手を入れています。修道院の記録には、制作が遅いことにしびれを切らした院長が苦情を出したというエピソードまで残っています。

ぬい
ぬい

食堂で毎日これ見ながらご飯って、修道士たちのメンタル引き締まりそう。

だよな。しかも反対側に磔刑って、食事中ずっと“命のパン”を意識させるガチ宗教空間だわ。

レゴッホ
レゴッホ
スポンサーリンク

実験的な技法と、なぜこんなに傷んでしまったのか

《最後の晩餐》が今も「保存が難しい作品」として有名なのは、レオナルドがあえてフレスコ画を避け、独自の技法で描いたからです。

通常のフレスコ画は、ぬれた漆喰が乾く前に顔料を塗り込むことで、絵の具が壁と一体化します。その代わり、乾くスピードが速いため、画家は一日に描ける部分が限られます。自分のペースで緻密な陰影や表情を描き込むのが好きだったレオナルドにとって、これはかなり窮屈なルールでした。

そこで彼は、壁をほぼキャンバスのように扱う方法を選びます。乾いた漆喰の上に下地層を作り、その上からテンペラと油彩を組み合わせて描く「乾式壁画」です。おかげで、人物の陰影やテーブルクロスの質感など、オイルペインティングに近い柔らかさが実現しましたが、問題は耐久性でした。湿気の多い外壁側に面していたこともあり、完成から数十年もしないうちに絵の具が剥がれ落ちはじめてしまいます。16世紀半ばには、すでに大きくぼやけて見える状態だったという証言も残っています。

その後、補彩や上塗りが何度も繰り返され、20世紀末の大規模修復(1978〜1999年)でようやく可能な限りオリジナルに近い層だけが慎重に残されました。現在見えている色や質感は、レオナルドの当初の鮮やかさからはかなり落ち着いて見えますが、それでも構図と表情の力は十分に伝わってきます。

ぬい
ぬい

“描きたいように描いた結果、めちゃくちゃ傷みやすかった”って、天才の実験あるあるだね。

そうそう。でもそのおかげで、今見ても他のフレスコと質感全然違うから、一発でレオナルドって分かるんだよな。

レゴッホ
レゴッホ
スポンサーリンク

遠近法と構図|見る人を食堂の一員にしてしまう仕掛け

《最後の晩餐》のすごさは、ドラマチックな表情だけではありません。部屋全体の遠近法が、鑑賞者を自然とテーブルの前に座らせてしまうように設計されています。

天井の格子模様、左右の壁のタペストリー、奥の三つの窓枠など、すべての線が一点に向かって収束する「一点透視図法」が使われています。その消失点は、ちょうどキリストの頭のあたり。つまり画面の空間構造そのものが、イエスを中心に組み立てられているのです。

また、十二使徒は三人ずつ四つのグループに分けられています。これは三位一体を連想させる「3」という数字の反復でもあり、キリストの背後の三つの窓とも響き合います。中央のキリストの体つきも、広げた腕と頭で正三角形を形作るように配置されていて、視線をしっかりと受け止める安定したフォルムになっています。

ぬい
ぬい

遠近法の線ぜんぶたどっていくと、最終的にキリストの顔に吸い込まれるんだよね。

そうそう。物理的にも精神的にも“中心はここです”って、絵そのものが宣言してる感じが気持ちいい。

レゴッホ
レゴッホ
スポンサーリンク

十二使徒それぞれのリアクション|「裏切り」のひと言が起こした心理ドラマ

この作品の主役はキリストですが、見れば見るほど面白いのは十二使徒一人ひとりの反応です。レオナルドは、ヨハネ福音書の「一人が裏切る」という予告の場面を選び、そのショックを全員分描き分けました。

向かって左端の三人(バルトロマイ、アルファイの子ヤコブ、アンデレ)は、椅子から前のめりになったり、手を突き上げたりして驚きを示しています。次の三人はペトロ、ヨハネ、ユダ。ペトロは短剣を握りしめて身を乗り出し、ヨハネはショックで身をあずけるようにして目を閉じています。ユダはほかの弟子と同じ側に座りながら、身を引いて影の中に沈み、手には銀貨の入った小袋を握っています。手前の塩壺がこぼれかけているのも、裏切りの象徴とされています。

キリストの右側の三人はトマス、大ヤコブ、フィリポ。トマスは人差し指を立て、のちの「疑い深いトマス」のエピソードを暗示しています。ヤコブは腕を大きく広げ、フィリポは胸に手を当て「まさか自分ではない」と訴えているように見えます。最後のグループ、マタイ、ユダ・タダイ、シモンは、互いに顔を見合わせて「いったい誰のことなのか」と議論している最中のようです。

従来のイタリア絵画では、ユダだけがテーブルの手前側に一人で描かれることが多かったのに対し、レオナルドはあえて他の弟子たちと同じ列に座らせました。そのうえで、陰影や身振りのわずかな違いだけで、彼の異質さと内面の葛藤を表現しています。

<裏切者に特化した記事はこちら>
《最後の晩餐》の裏切者は誰か?ユダです!どこにいる?徹底解説

ぬい
ぬい

こうやって聞くと、全員に“キャラ設定”と“伏線”が仕込まれてる感じだね。

うん。推し使徒決めてからもう一回見ると、同じ場面なのに視点が変わって楽しいんだよ。

レゴッホ
レゴッホ
スポンサーリンク

破壊と修復の歴史|戦争と時間を生き延びた奇跡の壁画

《最後の晩餐》は、完成からすぐに傷み始めただけでなく、その後の歴史の中でも何度も危機にさらされています。

17世紀には、壁の下部に出入り口を開ける工事が行われ、キリストの足元の部分が物理的に欠けてしまいました。19世紀には、兵士たちがこの食堂を馬小屋として使ったという記録まで残っています。第二次世界大戦では修道院が空爆を受け、食堂の屋根や周囲の壁が大きく崩壊しましたが、《最後の晩餐》のある壁だけは鉄骨の補強に守られて奇跡的に残りました。

20世紀に入ると、科学的な調査にもとづく本格的な修復が始まります。1978年から1999年にかけて行われた大修復では、数世紀分の補彩やニスが慎重に取り除かれ、残されたオリジナルの絵の具が安定するように加工されました。現在は、一度に入室できる人数と時間を厳しく制限し、空調で温度と湿度を管理することで、これ以上劣化が進まないよう守られています。

ぬい
ぬい

戦争や改築で何回も危なかったのに、最終的にちゃんと残ってるの、もはや“作品自体が奇跡体験”だわ。

だよね。今予約が取りにくいのも、『ここまで守ってきたからには絶対これ以上傷ませないぞ』っていうミラノの本気だと思う。

レゴッホ
レゴッホ
スポンサーリンク

おすすめ書籍

このサイトの参考にもさせて頂いている本を紹介します。

まとめ|科学者レオナルドが到達した「感情の劇場」としての宗教画

レオナルド・ダ・ヴィンチの《最後の晩餐》は、単なる宗教的な記念画ではなく、人間の感情と空間構成を徹底的に研究した結果生まれた「心理劇のステージ」のような作品です。

一点透視図法による完璧な空間設計の中心にキリストを置き、その周りに、驚き、怒り、不安、疑い、自己弁護といった多様な反応を見せる十二使徒を配置することで、見る者は自然とテーブルの前に座らされ、「もし自分がこの場にいたらどう反応しただろう」と考えずにはいられません。

実験的な技法のせいで極端に劣化しながらも、幾度もの修復と戦争の危機を乗り越えてきたこの壁画は、今もミラノの小さな食堂で静かに人々を迎えています。レオナルドが軍事技術者や音楽家、科学者としても活動した「万能の天才」だったことを思い出すと、この作品が単に信仰だけでなく、人間そのものへの深い好奇心から生まれたことも見えてきます。

現地で《最後の晩餐》と対面するときは、名画の有名シーンとして眺めるだけでなく、「これほどまでに計算され、同時に実験精神にも満ちた一枚が、500年以上の歴史を生き延びてここにある」ということ自体を味わってみると、よりいっそう心に残る体験になるはずです。

ぬい
ぬい

こうやって振り返ると、レオナルドの“理系脳”と“感情オタクっぷり”が両方フル稼働してる作品なんだなって感じるね。

うん。数式みたいな遠近法の上に、ぐちゃぐちゃの人間ドラマを乗っけてるのが最高にレオナルド。ミラノ行ったら、これは絶対押さえておきたい一枚だわ。

レゴッホ
レゴッホ
スポンサーリンク
タイトルとURLをコピーしました