ヨハネス・フェルメールといえば、『真珠の耳飾りの少女』などで知られる静謐な画家ですが、
《ヴァージナルの前に座る女》は、その作風の真骨頂とも言える、静かな室内に込められた感情のゆらぎを描いた作品です。
こちらを見つめる演奏中の女性、背景に飾られた恋愛をほのめかす絵画、そして差し込む自然光。
この記事では、フェルメールがこの小さな室内で何を描こうとしたのかを、見どころとともにわかりやすく解説します。

「なんにもしゃべってないのに、“この人、いま何考えてるんだろう”ってすごく気になっちゃう絵だよ!
作品基本情報

タイトル:ヴァージナルの前に座る女(A Lady Seated at a Virginal)
制作年:1670〜1672年頃
サイズ:51.5 × 45.5 cm
技法:油彩/キャンバス
所蔵先:ナショナル・ギャラリー(イギリス・ロンドン)

この人、すごく落ち着いた顔してるよね。
でも後ろの絵とか、気になることいっぱい…!
・小型の鍵盤楽器ヴァージナルに向かって、演奏する若い女性を描いた作品。
・清潔感のある明るい室内で、柔らかな光と静かな時間が流れる。
・フェルメール晩年の作風らしく、すっきりと洗練された印象。

やさしい音がふわ〜っと聞こえてきそうだね!
作品概要|音のない音楽、視線の向こうにある物語

フェルメールが晩年に描いた小品の一つ、《ヴァージナルの前に座る女》は、
静かな室内で楽器を弾く女性を描いた、まさにフェルメールらしさの詰まった一枚です。
女性は画面右側で椅子に腰掛け、正面を見つめながらヴァージナル(小型鍵盤楽器)に手を添えています。
私たち鑑賞者の視線と、女性のまなざしがまっすぐぶつかることで、絵に一種の緊張感が生まれています。

この絵、音が聞こえてくるわけじゃないのに、“静かに演奏中”って感じが伝わってくるのすごいね!
見どころ①|画面構成と視線の演出

この作品では、構図の巧妙さが際立っています。
ヴァージナルと椅子、そして床のタイルのパースが画面の奥行きを強調し、視線は自然と女性の顔へと導かれます。
また、左手前に置かれたヴィオラ・ダ・ガンバが、女性の孤独を強調しているとも解釈されています。
つまり「誰かと演奏していた痕跡」であり、画面に“音楽の余韻”を感じさせる小道具です。

「一人でいるのに、“誰かいたかも”って感じがするの、さすがフェルメール…!
見どころ②|背景の絵とカーテンの意味
女性の背後には、2点の絵が飾られています。
一つはヴァージナルの蓋裏の田園風景画。自然の解放感を象徴。

もう一つは壁に掛けられた男女の寓意的な絵画で、恋愛や音楽の象徴とも読み取れます。

これらは女性の内面、あるいは絵画のテーマを示唆している可能性があります。
さらに、画面左には鮮やかな模様のカーテンが描かれており、これはフェルメールが好んで使った「覗き見る構図」の要素。
まるで私たちがカーテン越しに彼女の世界を盗み見ているような演出がなされています。

音楽って、“好き”って気持ちとつながってるんだね。
だからこんなにやさしい空気なのかも!
見どころ③|沈黙の中の音楽と、時間の一瞬
この絵には「音」がありません。けれど、
画面の中には音楽が奏でられた“直前”あるいは“直後”のような一瞬の空気が閉じ込められています。
女性は鍵盤に触れながら、こちらを見つめています。
何を考えているのか、音を止めた理由は何なのか――明言されることはありませんが、
フェルメールは、そうした「言葉にならない時間」を絵に定着させています。
豆知識|もう1枚ある「ヴァージナルの前の女」との関係は?
この作品には、よく似た構図の姉妹作《ヴァージナルの前に立つ女》があります。


両者は…
- 同じ楽器
- 同じような背景の装飾画や床
といった共通点が多く、対作品(ペア)として描かれた可能性が指摘されています。
座る vs 立つ、静けさ vs 緊張、というように内面の変化や場面の切り替えを描いているのかもしれません。

同じ場所なのに、こっちは“落ち着いてる時間”、もう一枚は“これから何か起きそう”って感じがするよね!
まとめ|視線と空気でつながる静かな室内劇
《ヴァージナルの前に座る女》は、単に音楽を奏でる女性を描いただけの作品ではありません。
演奏の合間の一瞬の視線、背後の装飾画がもつ意味、光の穏やかさ。
そのすべてが、観る者と絵の中の人物との静かな関係性をつくり出しています。
フェルメールはこの作品で、“演奏そのもの”ではなく、“演奏する人がいる空間と心の動き”を、
光と構図で描き出したと言えるでしょう。

音も動きもないのに、こんなに豊かな時間が伝わってくるって、ほんとすごい…!
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