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ジョン・ピーター・ラッセル《フィンセント・ファン・ゴッホの肖像》解説!

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印象派
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「このゴッホ、いつもの筆致じゃない…誰が描いたの?」
その違和感の正体は、作者がゴッホ本人ではなく豪州の画家ジョン・ピーター・ラッセルだからです。
1886年、パリで出会った二人の友情から生まれた一枚で、のちにゴッホ自身が大切に保管し、家族へ託したことで現在のファン・ゴッホ美術館(アムステルダム)に至ります。まずは作品詳細、次に背景を丁寧にたどります。

ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」で来日する作品です。

ぬい
ぬい

これ、ほんとにゴッホが描いてないの? 雰囲気ぜんぜん違う!

ラッセル作だよ。出会いはパリのコルモンのアトリエ。そこから話が始まるんだ。

レゴッホ
レゴッホ
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《フィンセント・ファン・ゴッホの肖像》

まずは簡単に作品の情報を紹介します。

ジョン・ピーター・ラッセル 《フィンセント・ファン・ゴッホの肖像》
作品詳細

作品名:《フィンセント・ファン・ゴッホの肖像》

作者:John Peter Russell(ジョン・ピーター・ラッセル)

制作年:1886年(パリ)

技法:油彩/カンヴァス

サイズ:60.1 × 45.6 cm

所蔵:ファン・ゴッホ美術館(アムステルダム)

1886年のパリで、豪州出身の画家ジョン・ピーター・ラッセルは親友となったゴッホの肖像を制作し、贈呈したと伝えられます。ラッセルのアトリエでこの肖像を見た同時代の画家ハートリックは、青い綿の上着をまとい、こちらへ振り向くゴッホの姿に強い印象を受けたと回想しています。のちに画面の色調は経年でやや暗く沈みましたが、作品の吸引力は失われていません。

肖像の頭上には「Vincent pictor(画家フィンセント)」、画面右側には「amitie(友情)」と赤字で書き込みがあり、現在はほとんど判別しづらいものの、友への捧げものとして描かれた事実を物語ります。

ゴッホはこの肖像を非常に大切にし、サン=レミからの書簡で弟テオに「丁重に扱ってほしい」と託しています。見返りとして、ゴッホが三足の古い靴を描いた静物(現・ハーヴァード大学付属フォッグ美術館蔵)をラッセルに贈った可能性が高いとされます。その後も二人の交流は続き、アルルからはペンによる素描12点が送られ、サン=レミ期の手紙では、テオが保管する作品群からラッセルが好みの一作を選んでよいと伝えられています。

ぬい
ぬい

友情の証に描かれたってエピソード、めっちゃ胸熱だね

だろ?ただの肖像じゃなくて、ラッセルとゴッホの固い絆そのものなんだよ

レゴッホ
レゴッホ

それでは制作背景を区切り切り見ていきましょう!

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パリで育まれた友情と制作の経緯

ジョン・ピーター・ラッセル

1886年、パリのフェルナン・コルモンのアトリエで、ラッセルはオランダから来たゴッホと知り合います。まもなくラッセルは自分のスタジオ(パリ・アンパス・エレーヌ15番地)で友人の肖像に取り組みました。制作は同年の春から秋のあいだと考えられ、画面には赤い文字で「Vincent Pictor(画家ヴィンセント)」、反対側に「J. P. Russell Paris 1886 Amitié(友情)」と記されます。肖像の誕生が、私的な贈り物=友情の証であったことが伝わる瞬間です。

ぬい
ぬい

“Amitié”ってわざわざ書いちゃうの、エモい!

ね。単なるモデルじゃなく“友”として描いたってサインだよ。

レゴッホ
レゴッホ
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写実を基調に、のちの印象派的感覚がにじむ描写

ラッセルはこの肖像で、当時の写真表現を思わせる写実的で落ち着いたトーンを選びました。一方で、顔や手のタッチには印象派的な筆触が残り、やわらかな光の移ろいが感じられます。正面でも横顔でもない3/4視の振り返りポーズは、ゴッホの鋭い視線をこちらへ引き寄せ、画面に心理的な緊張を生んでいます。今日見られる暗めの背景は経年で沈んだもので、当初はより明るかったと美術館は解説します。

ぬい
ぬい

目つき、刺さる…! 黒背景に赤ひげが映えるね

写実寄りだけど、筆の呼吸は軽やか。写真っぽさと絵の具の手触りが同居してる。

レゴッホ
レゴッホ
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ゴッホの反応と、その後の行方

ゴッホはこの肖像をとても気に入り、贈呈を“交換”にして受け取ったと伝わります。ラッセルは見返りに《 worn out(疲れ果てて)》の素描や《靴》などを選び、ゴッホはパリを離れたのちも「ラッセルの肖像を大切にしてくれ」と弟テオへ書き送っています。作品はテオ、義妹ヨハンナ、そしてその息子へと受け継がれ、現在はファン・ゴッホ美術館の所蔵(アムステルダム)に。同時代の画家による“初期のゴッホ肖像”の代表作として位置づけられています。

ぬい
ぬい

本人が“特別”って言ったの、なんか泣ける…。

自画像とは違う“他者のまなざし”を、ゴッホ自身が大事にしたんだよ。

レゴッホ
レゴッホ
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ラッセルが見た「画家ヴィンセント」

彼はゴッホを“悲劇の人”としてではなく、絵筆を握る職能者としてとらえました。肩越しにこちらを見据える構図は、見る者に「制作の現場を覗き見たような距離感」をもたらし、手に握られた鉛筆(画家の属性)が、画面外にあるイーゼルやキャンバスを想像させます。暗地に浮かぶ肌の色、ひげの朱、眼窩の陰影——すべてが、当時のアカデミックなパレットとラッセルの観察力を物語ります。

ぬい
ぬい

“画家であること”を全力で伝えてくるポーズだね。

うん。芸術家像じゃなく“働く画家”としてのヴィンセントを刻んでる。

レゴッホ
レゴッホ
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美術史上の位置づけと見どころの整理

この肖像は、パリでの出会いを写す友情の記録であると同時に、ゴッホが自分の絵を“他者のまなざし”に委ねた希少な例でもあります。のちにロートレック(1887)、ゴーギャン(1888)らがそれぞれのゴッホ像を描きますが、ラッセルの一枚は最初期の同時代肖像として特別な重みを持ちます。写実と印象派的な筆触の混在、肩越しの視線、そして赤ひげの熱。ラッセルが見た“職人としてのヴィンセント”が、いまも静かにこちらを見返してきます。

ぬい
ぬい

自画像じゃ届かない“他人から見たゴッホ”がここにある感じ。

そう。鏡じゃなく“友の目”が描いた、もう一つの真実だね。

レゴッホ
レゴッホ
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おすすめ書籍

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まとめ

ジョン・ピーター・ラッセルによる《フィンセント・ファン・ゴッホの肖像》は、単なる写実的な肖像画ではなく、画家同士の深い友情を示す特別な作品です。

ジョン・ピーター・ラッセルは印象派の画家たちと交流し、その影響を受けながら制作しましたが、この《フィンセント・ファン・ゴッホの肖像》は純粋な印象派作品ではありません。光や色彩の筆づかいには印象派的な要素が見られる一方で、人物像には写実的な重みと精神性が込められており、ラッセル独自の肖像画表現となっています。
画面に刻まれた「Vincent pictor」と「amitie」という言葉は、ラッセルがゴッホを芸術家として敬い、同時に親友として結びつきを感じていたことを明確に伝えています。

また、ゴッホ自身もこの肖像を非常に大切に扱い、弟テオに保管を託し、さらには作品を贈って友情に応えました。こうした背景を知ると、この肖像画は単なる美術史的な資料ではなく、人と人との絆が作品の奥に流れていることが見えてきます。

ぬい
ぬい

やっぱり作品の裏にある人間ドラマを知ると、見方が全然変わるね

やっぱり作品の裏にある人間ドラマを知ると、見方が全然変わるね

レゴッホ
レゴッホ

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参考

  • Van Gogh Museum, collection entry “John Russell, Portrait of Vincent van Gogh, 1886.”(作品解説・技法・トーン) Van Gogh Museum
  • NGV(ビクトリア国立美術館)エッセイ “Amitié: Russell and Van Gogh.”(制作時期・銘文・背景) NGV
  • Wikipedia「Vincent van Gogh (Russell)」(作品史・交換・書簡に触れる要点の整理)※一次情報は上記機関を優先。 ウィキペディア

(注:展示やクレジットは変更される場合があります。鑑賞前に各館の最新情報をご確認ください。)

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