ヨハネス・フェルメールといえば、『真珠の耳飾りの少女』など静かな日常の中に潜む感情の機微を描いた画家として知られています。
『手紙を書く貴婦人と召使い』はその中でも、わずかな視線や構図から豊かな心理劇を感じさせる一枚です。
この記事では、光・構図・手紙の意味を丁寧に読み解きながら、
フェルメールが描こうとした“言葉にできない気持ち”に迫ります。

しずかだけど、心の中ではぐるぐる考えてる時間って、絵にもなるんだね…!
作品基本情報

タイトル:手紙を書く貴婦人と召使い(Lady Writing a Letter with her Maid)
制作年:1670〜1671年頃
サイズ:72.2 × 59.5 cm
技法:油彩/キャンバス
所蔵先:アイルランド国立美術館(ダブリン)

静かなのに、すごく物語のある絵だよね…
なんか緊張感もあるかも!
・手紙を書く貴婦人と、それをじっと見守る召使いを描いた作品。
・ふたりの間に漂う微妙な緊張感が、静かなドラマを生み出している。
・フェルメール後期の円熟した構成力と光の扱いが堪能できる一作。

召使いさん、なんだかちょっと心配そうに見えるね…!
作品の構図|ふたりの女性がつくる三角形の緊張

この作品には2人の女性が描かれています。
テーブルにつき、羽根ペンを持って手紙を書こうとする上流階級の貴婦人と、

そのそばで手紙を持って控える召使いの女性。

ふたりはほとんど動かず、表情も控えめですが、
その視線や手の位置、姿勢からは、張り詰めた静けさが伝わってきます。

視線が交差してないのに、心がピリッとしてる感じ…
なんか深い理由がありそう!
光と色彩|貴婦人に集まる“内なる明るさ”

フェルメールお得意の左上からの自然光が、貴婦人の顔や金の衣装、手紙の白い紙を照らしています。
一方、召使いは影の中に立ち、顔の一部は暗がりに沈んでいます。
この光の使い分けによって、絵の中心にいるのはあくまで思案する貴婦人であることが強調され、
召使いの存在が支える者/見守る者/もしくは見張る者のようなニュアンスを生み出しています。

光って“気持ち”を映してるみたいだね。
お嬢さまはすごく悩んでそうな顔…
手紙のモチーフ|書くこと、書けないこと

フェルメールは複数の作品で「手紙」をテーマにしています。
本作でも、貴婦人は手紙を書こうとしていますが、筆は止まっている。
そして召使いは手紙を手にして待っており、書き終えるのを促すようにも、見張るようにも見える。
この状況は、以下のような“物語”を想起させます:
- 手紙を書くか、迷っている(相手に送るべきか)
- 恋愛の葛藤がある(召使いは事情を知っている?)
- 社会的な立場が障害になっている。

言葉にしようとした“気持ち”が、うまく出てこないときって、こういう顔になっちゃうよね…
モデルと注文主は誰か?
この作品のモデルが誰かは特定されていませんが、フェルメールの妻や娘がモデルである説もあります。
また、本作が誰かに注文された作品かどうかも不明ですが、当時の社会階層を背景にした内容であるため、
家庭内の静かなドラマを描く「ジャンル画」として制作された可能性が高いです。
召使いが“女性の信頼できる助言者”である可能性もあり、
静けさの中に込められた女性同士の関係性や緊張を想像させる点も、この絵の魅力です。

“主従関係”っていうより、“相談相手”みたいに見えてくるのが不思議…
まとめ|沈黙のなかで、最も雄弁に語る一枚
『手紙を書く貴婦人と召使い』は、派手な動きも物語の展開も描かれていません。
でも、視線・光・手紙というシンプルな要素から、緊張・葛藤・信頼といった複雑な感情がにじみ出ています。
フェルメールは、こうした“書かれなかった言葉”“交わされなかった視線”の中に、
見る者自身が感情を投影できる余白を残しました。
静かなのに、こんなに考えさせられる――まさにフェルメールの真骨頂といえる作品です。

この絵の中では、何も言ってないのに、“言いたいこと”がすごく伝わってくるんだよね…
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