ギリシャ神話の中でも、とりわけ人気の高い存在それがペガサスです。翼を持ち、空を駆ける白馬として、文学やファンタジー作品にたびたび登場します。
しかし、このペガサスには兄弟がいたことをご存じでしょうか?その名はクリュサオル。
本記事では、メドゥーサの死から誕生したこの兄弟の神話と、それぞれの役割、そして西洋美術における描かれ方まで詳しく解説していきます。

ペガサスって化け物から生まれたの?
メドゥーサの死と、ふたりの誕生

神話によると、英雄ペルセウスがメドゥーサの首を切り落とした瞬間、その傷口からペガサスとクリュサオルの二柱が同時に生まれたとされます。
この場面は『ヒュギーヌスの神話集』や『ピンダロスの詩』、さらにはローマ時代の『メタモルポセス』などに言及があります。
ペガサスはすぐに大空へと舞い上がり、神々の世界へ向かったとされます。一方のクリュサオルは、大地に残り、のちに怪物スキュラやキマイラの母となるエキドナと結ばれます。
このように、ふたりは誕生の瞬間から異なる運命を歩むことになるのです。
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誕生エピソードが衝撃的すぎる
ペガサスとはどんな存在か?

天馬としての象徴
ペガサス(Pegasos)は、ギリシャ神話で最も有名な翼のある白馬。その姿は神々しさと自由の象徴として、多くの文学・芸術作品に登場します。
ベレロポンとの冒険

ペガサスの最大の見せ場は、英雄ベレロポンとの共闘です。
ベレロポンはペガサスに乗って、火を吐く怪物キマイラを討伐。この活躍でペガサスの名は一躍有名になります。
神々の仲間入り
最終的にペガサスは天へ昇り、ゼウスの雷霆(らいてい)を運ぶ神聖な馬となります。その姿は星座「ペガスス座」としても残されています。

最終的に星座になるのか
クリュサオルとは何者か?
名前の意味と姿
クリュサオル(Chrysaor)は、ギリシャ語で「黄金の剣を持つ者」という意味を持ちます。ただし、神話における登場回数は非常に少なく、姿かたちも不明確です。
一説には戦士の姿、または巨人の姿で描かれたともいわれます。

絵は?
影の存在から、怪物の父へ
情報は少ないものの、クリュサオルはエキドナとの間に恐ろしい怪物を生み出します。
その一部がこちら!
ガエロン(ゲーリュオーン):3つの体を持つ巨人

オルトロス:双頭の番犬(ケルベロスの兄弟)

つまりクリュサオルは、後世に語り継がれる多くの怪物たちの父でもあったのです。

クリュサオルの絵は?
ペガサスは多くの絵画に描かれてきましたが、クリュサオルはほとんど描かれていません。これは彼の物語が記述も少なく、姿も明示されていないためで、今日まで“神話の影の存在”として語られるにとどまっています。
ペガサスとクリュサオルの違いと関係性
要素 | ペガサス | クリュサオル |
---|---|---|
出生 | メドゥーサの血から誕生 | 同上(兄弟) |
姿 | 翼を持つ白馬 | 黄金の剣を持つ戦士(諸説あり) |
活躍 | 英雄と共闘、神々の仲間入り | 怪物の父として神話に関与 |
知名度 | 非常に高い | 非常に低い |
このように、兄弟でありながら光と影のように対照的な存在として神話に刻まれています。

兄弟なのに凄い違い!
西洋美術におけるペガサスの描写
ペガサスはその美しい姿から、数多くの画家によって描かれてきました。とくに人気なのは以下のような作品です。
テオドール・ファン・テュルデン《アテナとペガサス》

テオドール・ファン・テュルデンの《アテナとペガサス》は、ギリシャ神話を題材にしたバロック期の作品です。
知恵と戦の女神アテナが、英雄ペルセウスによって誕生した天馬ペガサスを受け取る場面が描かれています。
画面には緻密な衣装表現や荘厳な構図が用いられ、神話の神聖さと英雄性が強調されています。
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ルーベンスの《アンドロメダを解放するペルセウス》

ルーベンスの《アンドロメダを解放するペルセウス》は、ギリシャ神話の英雄ペルセウスが怪物からアンドロメダを救出する瞬間を描いたダイナミックな作品です。
筋肉質なペルセウスと、鎖につながれたアンドロメダの対比が、バロック美術らしいドラマティックな構成を際立たせます。
豊かな色彩と流れるような動きが特徴で、観る者を壮大な神話の世界へ引き込みます。

一貫して白馬として描かれているね。
おすすめ書籍
下記記事でギリシャ神話を学ぶ上でおすすめの書籍を紹介します。

リンク飛ぶのめんどくさい人向けにここでも紹介!
どちらもわかりやすくて初心者から上級者までおすすめの本です。
まとめ|天を駆けた馬と、語られぬ戦士
ペガサスとクリュサオル彼らはメドゥーサという恐るべき怪物の死から生まれた兄弟です。
ペガサスは神々の馬として、空と神聖の象徴に。
クリュサオルは怪物の血を受け継ぐものとして、静かに影を落とします。
一見、注目度に差があるふたりですが、その対比こそがギリシャ神話の奥深さを示しているとも言えるでしょう。
美術、文学、神話の中で今も息づく彼らの物語を、ぜひこれからも楽しんでください。
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