スポンサーリンク

ゴッホの《クリシー大通り》を解説!青の素描がとらえた都会の呼吸

アフィリエイト広告を利用しています。
ポスト印象派
スポンサーリンク

冬の終わり、乾いた空気をはらむパリの空が、淡い青で紙面に広がります。
通りに並ぶ裸木、遠くへ吸い込まれる建物の列、右手前には寄り添う二人。
フィンセント・ファン・ゴッホ《クリシー大通り》(1887年2月)は、油彩ではなく青いチョークを軸にした素描で、モンマルトルの日常の気配をすばやいストロークに留めた一枚です。

ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」で来日する作品です。

【生涯を知りたい方はこちらがおすすめ】

ゴッホの人生を年表で徹底解説!作品と出来事からたどる波乱の生涯

ぬい
ぬい

青だけで空気まで描けるの、すご。

色数を絞ると、空気感がかえって立ち上がるんだ。

レゴッホ
レゴッホ
スポンサーリンク

《クリシー大通り》

まずは簡単に作品の情報を紹介します。

作品詳細

作品名:クリシー大通り(The Boulevard de Clichy

制作時期・場所:1887年2月、パリ・モンマルトル

技法・素材:紙に鉛筆・ペン・インク・チョーク・水彩

サイズ:40.1×54.4cm

所蔵:ファン・ゴッホ美術館(オランダ・アムステルダム)

ぬい
ぬい

基本は素描なんだね。

うん、でも“色の試し描き”としては完成度が高いよ。

レゴッホ
レゴッホ
スポンサーリンク

パリ生活の転調と、描く場所

1886年にパリへ移ったゴッホは、弟テオのアパルトマンに身を寄せ、その後ほどなく同じモンマルトル内で住まいを移します。美術館通いや仲間との交流に恵まれつつも、大都市の忙しさと騒がしさには消耗も覚えていました。クリシー大通りは、アトリエから歩いて通える日常の動線。賑やかな往来と、まだ郊外の空気をわずかに残す風合いが混じるこの通りは、彼にとって“都会を測る定規”のような場所でした。

ぬい
ぬい

家の近くの大通りって、毎日違う景色があるよね。

だからこそ、同じモチーフを何度も確かめたくなるんだ。

レゴッホ
レゴッホ
スポンサーリンク

青のチョークと補色のささやき

この素描の肝は、青を主体にした階調です。空、建物、影、遠景までも青系で塗り分け、濃淡だけで奥行きを作っています。ところどころに置かれたオレンジがかった小さなアクセント(窓辺や服の一部)が青を引き立て、静かなコントラストを生みます。紙の地色は年月とともに温かいトーンへと変化しており、結果として青×黄みの色相差がいっそう感じられるのも、この作品の魅力です。油彩で磨いた色彩理論を、素描でも実地で試している点が注目されます。

ぬい
ぬい

青の世界に、ちょっとだけオレンジ。効くねぇ。

補色は大声じゃなくて、“ささやき”でも効くんだよ。

レゴッホ
レゴッホ
スポンサーリンク

構図のキモ──通りがつくる遠近のハーモニー

視線は交差点を見渡す高さ。左端の丸みを帯びた建物、中央から右へ伸びる並木とファサードの帯、手前右の人物群という三点のアンカーが奥行きを支えます。直線と曲線、縦の樹と横の通りが織り合わさり、都市のリズムが軽やかに刻まれます。輪郭の取り方は硬すぎず、**素描ならではの“呼吸”**が画面に残されています。

ぬい
ぬい

線が少し揺れてるのが、逆に生きてる感じ。

都会って、まっすぐに見えて実はよく揺れてるんだ。

レゴッホ
レゴッホ
スポンサーリンク

油彩版とのちがい──人の密度と視点のわずかなズレ

同主題の油彩《クリシー大通り》(ゴッホ美術館蔵)が知られており、そちらは人物の数がやや多く、視点も少しだけ高めに感じられます。素描の本作は、人影を最小限に抑えて通りの「空気」を前面に。二つを比べると、同じモチーフを媒材によって描き分けるゴッホの意図が見えてきます。スピード感ある線で「動き」をつかみ、油彩では「光と色」を厚く検証する──そんな役割分担です。

ぬい
ぬい

下絵じゃなくて、別の完成形ってことか。

そうそう。手段が変われば、答えも一つじゃない。

レゴッホ
レゴッホ
スポンサーリンク

パリで深めた“色の理解”、素描での到達点

オランダ時代のゴッホは、強い陰影と輪郭を基調とする描写が中心でした。パリでは色彩の組み合わせそのものが主題になっていきます。本作は、青チョークを主音に据え、最小限の暖色で響きをつくる試みが素描として非常に成功した例です。のちの《セーヌの岸辺》や《アブサンの卓上》に通じる、明度設計の感覚がすでに育っていることが読み取れます。

ぬい
ぬい

線の練習じゃなくて、色の実験なんだね。

うん、線と色は別々に鍛えると、合流したとき強いんだ。

レゴッホ
レゴッホ
スポンサーリンク

おすすめ書籍

「ゴッホについて本で学びたいけど、どんな本が自分に合っているのかわからない」そんなお悩みを持つあなたへ贈る、ゴッホ入門編の本をご紹介します!Top5は別記事で紹介しています。

【関連記事】

ゴッホの本ランキング!初心者におすすめのわかりやすい5選!

まとめ──青の街路に滲む、歩く気配

《クリシー大通り》は、色数を絞る勇気と、素描の速度で掴み取った都市のリズムが魅力です。
青の濃淡とわずかな補色だけで、乾いた冬の光、人々の足どり、空の広がりまでが伝わってきます。モンマルトルの生活圏から生まれた一枚は、ゴッホの“パリの眼”の確かさを静かに証言しています。

ぬい
ぬい

静かなのに、人が行き交う音が聞こえる気がする。

紙の上でも、通りはちゃんと動き続けるんだ。

レゴッホ
レゴッホ

【関連記事】
ゴッホのパリ時代の作品まとめ!浮世絵への憧れと色彩の変化に迫る
ゴッホの人生を年表で徹底解説!作品と出来事からたどる波乱の生涯
【ゴッホの人生ガイド】エッテン・ハーグ・ドレンテを経てヌエネンへ
【ゴッホの人生】パリ時代完全解説!印象派との出会いと色彩革命
ゴッホのオーヴェル時代を完全解説!最期の70日と死の真相に迫る
ゴッホの人生を年表で徹底解説!作品と出来事からたどる波乱の生涯

スポンサーリンク
タイトルとURLをコピーしました