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ゴッホ《梅の花(広重による)》を解説!ジャポニスムを油彩で増幅した実験作

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ポスト印象派
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真紅の空を背に、黒く太い幹が斜めに横切り、白い梅がぱっと灯ります。
画面の左右にはオレンジ色の縁取りと大きな文字。版画の平面性と油絵の厚みがぶつかり合い、視線が一気に吸い込まれます。

1887年10〜11月、パリで描かれた《梅の花(広重による)》は、歌川広重《名所江戸百景 亀戸梅屋舗》を下敷きにした“ジャポネズリー(日本趣味)”の代表作です。
ゴッホは構図を大胆に拡大し、色を限界まで明るく強くして、浮世絵の語法を自分の絵肌へ翻訳しました。

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ぬい
ぬい

元は版画なのに、油絵になったら熱が段違いだね。

でしょ。線と平面は借りて、色と厚みは全開でいってるんだ。

レゴッホ
レゴッホ
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《梅の花(広重による)》

まずは簡単に作品の情報を紹介します。

作品詳細

作品名:梅の花(広重による)

典拠:歌川広重《名所江戸百景 亀戸梅屋舗》

制作:1887年10–11月、パリ

技法:油彩・カンヴァス

所蔵:ファン・ゴッホ美術館(アムステルダム)

備考:同年、同シリーズから《雨の橋(広重による)》も制作

ぬい
ぬい

橋のほうが先で、そのあとに梅って流れなんだ。

うん。同じ広重から続けてやって、手応えを深めてるよ。

レゴッホ
レゴッホ
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背景|“浮世絵の展示”と収集熱が生んだ油彩の臨写

1887年のゴッホは、モンマルトルのカフェ・タンブランで自分たちの浮世絵コレクション展示を開き、版画をまとめて目の前に並べられる環境を得ました。
兄テオと合わせた所蔵は数百点規模。線の明快さ、思い切ったトリミング、季節感の扱い方に強く惹かれ、油彩での臨写に踏み切ります。
《梅の花》は、そのクライマックスに位置づく一枚です。

ぬい
ぬい

壁にずらっと版画を掛けて、その場で“翻訳”してた感じだね。

そう。見てすぐ描くから、体温がそのまま乗るんだ。

レゴッホ
レゴッホ
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何をどう変えたのか|構図拡大・縁取り追加・色の増幅

原作の大胆な手前枝のクロップは活かしつつ、ゴッホは画面サイズに合わせて構図を拡大しました。
左右にはオレンジ色の装飾縁を新たに描き込み、漢字の見出し風の文字をあしらって“掛け軸風”の舞台装置を強調しています。
色はさらに攻め、原作よりも空を深い赤に、芝を濃い緑に押し上げ、補色の対比で花を前へ弾ませました。輪郭線は浮世絵の墨線を思わせる太い暗色で引き、油絵具の厚みで立体感を加えています。

ぬい
ぬい

版画の静けさは残しつつ、温度だけぐっと上げてる感じ。

そう。“語法は借りる、温度は自分で上げる”が合言葉だ。

レゴッホ
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色と絵肌|チューブ色に近い純度で勝負

当時のゴッホは、色を混ぜ過ぎずに高明度のまま置く方向へ舵を切っていました。
この画でも赤・緑・橙・白の四色が主役で、背景の赤はわずかな暗緑を混ぜる程度。
花の白は厚塗りで盛り、光を実際に反射させて版画にはない物質感を与えています。

ぬい
ぬい

少ない色数なのに、画面がスカスカにならないのがすごい。

面と輪郭の設計が効いてるから、色が少なくても密度が出るんだ。

レゴッホ
レゴッホ
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広重へのリスペクト|“切り取り”と“余白”を受け継ぐ

広重の元図は、近景の太枝で風景を大胆に遮断し、奥に梅園と人影をのぞかせる写真的トリミングが魅力です。
ゴッホはこの構図の骨を忠実に守りつつ、余白の扱いを油彩用に調整して、前後の奥行きをわかりやすくしました。
遠景の人物群は小さく簡略化され、「近くの樹皮の手触り」対「遠くの春の気配」という二層が際立ちます。

ぬい
ぬい

枝でバサッと遮るの、今見ても超モダン。

だよね。広重の構図センスに“厚み”を足したのがこの絵。

レゴッホ
レゴッホ
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同時期作との関係|《雨の橋》と対の“見本帖”

《梅の花》と対をなすのが、同じ《名所江戸百景》から取った《雨の橋(広重による)》。

ゴッホ《雨の大橋(歌川広重による)》を解説!浮世絵を質感豊かに表現
一方は季節の花と赤、もう一方は雨筋と青
ゴッホはこの二作で、浮世絵の線・面・色面分割を自分の語法へ定着させ、のちのアルル《アーモンドの花》へとつながる“日本発の明快さ”を獲得します。

ぬい
ぬい

赤の梅と青の雨、色の教科書みたいなペアだね。

うん、見本帖を自分で作っちゃった感じ。

レゴッホ
レゴッホ
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まとめ|借景ではなく“翻訳”としてのジャポニスム

《梅の花(広重による)》は、単なる模写ではなく、広重の構図=文法を、ゴッホの色=発音で読む“翻訳”の絵です。
縁取りの文字、補色の衝突、太い輪郭、厚い白。
日本の版画から学んだ平面の美と、自分の絵肌をどう交差させるか——その答えが、ここに凝縮されています。

ぬい
ぬい

原作の敬意と、自己主張の両立ってここまでできるんだ。

そう。尊敬はコピーじゃなくて、対話で示すのが一番強い。

レゴッホ
レゴッホ

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