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ゴッホ《防水帽を被った漁師の顔》を解説!1883年ハーグ期の作品

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ポスト印象派
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ごつごつした頬骨、潮風で刻まれた皺。
深くかぶった防水帽の縁から、硬いまなざしが横にのびる。

1883年1月、ハーグで制作されたフィンセント・ファン・ゴッホ《防水帽を被った漁師の顔》は、北海沿岸の漁師を真正面から描いた素描だ。
色は抑えられているのに、紙面には海の湿り気と風の冷たさが残っている。のちの「農民画」へつながる“頭部研究”の重要な起点として、この小品を丁寧に読み解く。

ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」で来日する作品です。

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ぬい
ぬい

渋いけど、めちゃ存在感あるね。

線とトーンだけでここまで来るの、初期ゴッホの真骨頂だよ。

レゴッホ
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《防水帽を被った漁師の顔》

まずは簡単に作品の情報を紹介します。

作品詳細

作品名:防水帽を被った漁師の顔

制作年:1883年1月(ハーグ)

技法:紙に素描(黒系のチョーク/木炭・鉛筆に白のハイライトを併用)

サイズ:中判の紙作品(作例により寸法差あり)

所蔵:ファン・ゴッホ美術館

ぬい
ぬい

油彩じゃなくてドローイングなんだ。

うん、でも量感は“彫ってる”くらい濃い。

レゴッホ
レゴッホ
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制作背景|ハーグで出会った「海の人々」

1881年末から83年の春まで、ゴッホはハーグを拠点に本格的な制作を始めた。
この時期、彼は近郊のスヘフェニンゲンへも足を運び、漁師やその家族の姿を繰り返し描いている。
《防水帽を被った漁師の顔》は、そうした現地観察から生まれた一連の頭部素描のひとつ。日雇い労働者や農民と同じまなざしで、漁師にも生活の尊厳を見た。

ぬい
ぬい

場所は違っても、視線はニューネンの農民と通じるね。

そう。「働く顔」を真正面から描く姿勢は一貫してる。

レゴッホ
レゴッホ
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図像と構図|横顔寄りの三四分位で“海風”を刻む

モデルは防水布のつば広帽(sou’wester)を深くかぶり、視線はわずかに横へ。
正面でも横顔でもない三四分位に止めることで、頬から顎へ落ちる影が強く出て、刻まれた皺が立体に読める。
肩は厚い外套で覆われ、画面下辺へ大きな三角形を作る。わずかな角度の選択が、静かな緊張を生む。

ぬい
ぬい

真正面より、この“少し横”が効いてるわ。

うん、骨格の凹凸がいちばんよく語る角度なんだ。

レゴッホ
レゴッホ
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素材と筆致|黒の幅と白の一閃

用紙の地色を残しながら、黒のコンテや木炭で面をまとめ、最終段で白チョーク(もしくは白色のガッシュ)を髭・帽子の光沢・目の際に引く。
黒の濃淡は五段階以上に分かれ、頬の硬さと帽子の濡れを描き分ける。
絵具の色に頼らず、トーンの積層だけで“海風に晒された皮膚”を成立させる方法は、のちの油彩の厚塗りに直結している。

ぬい
ぬい

白が少ないのに、光がちゃんと当たって見える。

要所にだけ置くからこそ、効き目が強いんだよ。

レゴッホ
レゴッホ
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防水帽が語る北海の現実

sou’wester は北海沿岸で使われた防水の作業帽。長い後つばが首筋を雨と波しぶきから守る。
帽子一つで職業も場所も時間帯(荒天・夜間の労働)も示せる、とゴッホは知っていた。
人物を記号化はしないが、装具の描写で“生の条件”を画面に刻む——それが初期の彼らしいリアリズムだ。

ぬい
ぬい

小道具が説明にならず、生活の手触りになってる。

まさに。帽子がただの帽子じゃなくて、海の気配を連れてくる。

レゴッホ
レゴッホ
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ハーグ期の「頭部研究」とその先

1883年前後の頭部素描は、後年のニューネンでの農民群像、さらには《ジャガイモを食べる人々》(1885)へつながる基礎体力づくりだった。
顔の骨格をトーンで彫り、労働の痕跡を“表情”ではなく“面の方向”で語らせる。その目と手が、やがて南仏の色彩を得てもぶれずに働き続ける。

ゴッホの《ジャガイモを食べる人々》を解説!ヌエネン時代の代表作

ぬい
ぬい

静かな紙片が、大作の土台になっていくのが見える。

うん。線とトーンの訓練が、のちの色を支えるんだ。

レゴッホ
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まとめ|色がなくても体温がある

《防水帽を被った漁師の顔》は、紙と黒と少しの白だけで、人間の重みを描き切った初期の到達点だ。
防水帽の光、頬の皺、外套の暗さ——どれも派手ではないのに、見る側の想像に潮の匂いを呼び込む。
ハーグの冬の空気ごと封じたこの一枚から、ゴッホの“人間を見る目”が確かに始動している。

ぬい
ぬい

控えめなのに、時間が経つほど沁みてくる。

そういう絵が、後のひまわりを支えてるんだよ。

レゴッホ
レゴッホ

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