ヨハネス・フェルメールといえば、静かな室内画や「真珠の耳飾りの少女」で知られていますが、
その静謐な世界観を象徴する一枚が『水差しを持つ女』です。
大きな出来事は何も起きていないのに、見つめていると心が落ち着いていく、そんな不思議な魅力を持つ作品です。
本記事では、『水差しを持つ女』の構図や光の描写、道具に込められた意味まで、
フェルメール初心者にもわかりやすく解説します。
日常のひとコマを、崇高な芸術にまで高めたフェルメールのまなざしを、ぜひ感じてみてください。
きれいに朝の空気が描かれてるみたいで、ぼくもすっごく深呼吸したくなったよ…！
作品基本情報
タイトル：水差しを持つ女（Young Woman with a Water Pitcher）
制作年：1664〜1665年頃
サイズ：45.7 cm × 40.6 cm
技法：油彩／キャンバス
所蔵先：メトロポリタン美術館（アメリカ・ニューヨーク）
朝の空気がそのまま絵になったみたい…
きもちがすーっと落ち着くね
・清らかな朝の光の中、水差しを持つ若い女性を描いた作品。
・純粋さと静謐な気配が漂い、フェルメールらしい光の魔法が光る。
・身近な日常を神聖な瞬間へと昇華させた名作。
作品概要｜フェルメールの美学が詰まった一枚
『水差しを持つ女』は、フェルメールが描いた典型的な室内画の一つで、
控えめな女性のしぐさと、室内に差し込む柔らかな自然光が特徴的です。
窓を開けようとしているのか、光を受けながら水差しに手を添える女性。
その動作は非常に静かでありながら、画面全体からは清らかさと凛とした気配が感じられます。
見どころ｜構図・光・しぐさに注目
画面左の窓から差し込む自然光
フェルメールは左からの光を巧みに使い、女性の顔・頭巾・水差しに透明感のある陰影を与えています。
背景の青いカーテンや壁とのコントラストが絶妙です。
人物の落ち着いたポーズ
女性はきつくポーズを取るわけでもなく、自然な動きの途中をとらえたような描写がされています。
これにより、観る側は「今まさに動こうとしている瞬間」に立ち会っているような感覚になります。
日常の中の静謐さ
この絵にはドラマも感情の起伏もありません。
けれども、その“何も起きていない”空間が静けさそのものを美に昇華しています。
なにもしてないみたいで、すごく“してる”感じが伝わってくるの、不思議…！
豆知識｜フェルメールと「窓」「水差し」
フェルメールの作品には、左から光が差す構図が多く見られます。これは、実際の彼のアトリエの構造によるものと考えられています。
水差しと洗面器は、当時の朝の身支度を示すアイテムであり、清潔・貞節・慎みといった価値観と結びつけられていました。
この作品に見られる調度品（真鍮の器具、ステンドグラス、織物）は、フェルメールの写実性と素材へのこだわりをよく表しています。
水をくむだけの場面に、“心がきれい”ってメッセージがこもってるなんて…
しずかに感動しちゃったよ
フェルメールらしさ｜「沈黙の中の美」
『水差しを持つ女』は、フェルメールが得意とした「何げない日常の中にある美しさ」を体現する作品です。
誇張されない感情
女性の顔には、笑みも怒りもありません。けれどその穏やかな表情からは、内面の静けさがにじみ出ています。
静かに語る構成
目立ったアクションのない絵なのに、なぜか何度でも見たくなる──
それがフェルメールの“沈黙の構成力”です。
この人、なにも言ってないけど“ちゃんと生きてる”って伝わってくるのがすごい…！
まとめ｜日常を崇高に描いた小さな名画
『水差しを持つ女』は、
誰もが過ごす「朝」の何気ない瞬間を、ここまで静かに、そして美しく描いた名作です。
フェルメールは、劇的な出来事を描かずとも、
“ただそこにいる”という尊さを、光と構図、素材の描写によって伝えてくれます。
あなたもぜひ、この作品の前で、静けさを味わう時間を楽しんでみてください。
