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コレッジョの《聖ヒエロニムスの聖母》を解説!昼とライオンの意味

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マニエリズム
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ルネサンス末期の巨匠コレッジョが描いた《聖ヒエロニムスの聖母》は、ただ美しいだけの宗教画ではありません。
画面を満たすやわらかな光としぐさの連なり、そこに込められた豊かな意味、そして足元にひっそりと佇む“あの動物”まで──知れば知るほど奥深い一枚です。

本記事では、構図の工夫や色彩、人物の象徴的意味まで、作品の魅力を丁寧にひもときます。
ライオンの秘密やマグダラのマリアの描き方、なぜ「昼(Il Giorno)」と呼ばれるのか?といった小ネタも満載。
読後には、あなたも“静かな感動”のとりこになっているかもしれません。

ぬい
ぬい

一見するとふつうの聖母子画に見えるけど、見れば見るほどいろんな発見があって面白いよ〜!


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作品基本情報


作品詳細

タイトル:聖ヒエロニムスの聖母(Madonna of Saint Jerome)
制作年:1528年頃
サイズ:205 × 141 cm
種類:油彩/キャンバス
所蔵先:パルマ国立美術館(パルマ)

ぬい
ぬい

ライオン…?

簡単に紹介

・聖母子と聖ヒエロニムス、マグダラのマリアが描かれた大作。

・肌の陰影がやわらかく、スフマート的な描写で人物に温もりと立体感がある。

・とくに幼子キリストと聖母の表情の描写において、レオナルド風の滑らかさが見られる。

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主題の解説|「聖母子」と信仰の象徴たちの集い

この作品は、聖母子を中心に、聖ヒエロニムスとマグダラのマリアを配した宗教画です。
聖母と幼子キリストは画面中央に描かれ、周囲の登場人物と穏やかに関係を結んでいます。

この主題は「聖会話(サクラ・コンヴェルサツィオーネ)」の伝統に属し、異なる時代・背景を持つ聖人たちが同じ空間で対話するかのように描かれています。実際の歴史的同時性はなく、信仰的な象徴性を一堂に集めた構成が特徴です。

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登場人物と描かれ方の解説

聖母マリア

画面の中心に位置する聖母マリアは、柔らかく微笑みながら、腕の中の幼子イエスを抱いています。聖母は理想化された美しさと穏やかな母性に満ちた表情で描かれています。

幼子キリスト

イエスは無垢な幼児として生き生きとした仕草を見せています。特にイエスは、前にかがみこむマグダラのマリアに手を差し出し、祝福ともとれる動きをしています。

マグダラのマリア

画面右下にひざまずいて幼子イエスの足に接吻しようとしている女性は、マグダラのマリアとされています。彼女は金髪の美しい女性として描かれ、悔悛の象徴であるへりくだった姿勢が強調されています。彼女の足元には香油壺は見られず、イエスに向けられた純粋な崇敬の眼差しと身ぶりによって、信仰と愛の深さが伝わります。

このように、伝統的な象徴(香油壺)がない代わりに、仕草や視線、構図によって人物の内面が語られているのが本作の特徴です。

ぬい
ぬい

たしかに壺はないけど、マリアさんの気持ちはちゃんと伝わってくるよね……!

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聖ヒエロニムス

左端に立つ半裸の壮年男性は、キリスト教の教父・聖ヒエロニムスです。彼はウルガタ訳聖書の翻訳者として有名で、その象徴である巻物を手にし、足元には彼のもうひとつの象徴であるライオンも描かれています。荒々しい体格と深い皺により、隠遁生活を送った聖人としての厳格なイメージが強調されています。

天使たち

聖母と聖ヒエロニムスの間には若い天使がひとり描かれており、巻物を手にしながら視線を下に向けています。中性的で穏やかな顔立ちと淡く輝く羽根により、場面全体の神聖な雰囲気が高められています。

右端の天使は水差しを持ち、浄化や奉仕の意味を感じさせます。

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見どころ①|自然光に満ちる空間と色彩設計の妙

この作品でもっとも印象的なのは、画面全体に広がるやさしく拡散された自然光の表現です。
コレッジョは、レオナルド・ダ・ヴィンチのスフマート技法の影響を受けつつ、それをさらに空間全体に応用するような形で、自らのスタイルを築き上げました。

人物に当たる光は局所的なものではなく、空気の中に漂うように滲み広がり、画面全体に“昼”の雰囲気をまとわせています。そのため、鑑賞者はまるでこの宗教的場面のすぐそばに立っているかのような没入感を得ることができます。

また、聖母の衣のブルーやマグダラのマリアの淡いピンク、天使の繊細な肌など、色の配置と明度差によって、視線が自然と聖母子へ導かれるように計算されています。
コレッジョはただ明るい色を使っているのではなく、光を“感じさせる”ような彩色と筆遣いによって、宗教画にやさしい詩情を加えているのです。

ぬい
ぬい

この絵、ほんとに“昼の光”でできてるみたい…。空気の中にあったかさがあるって、すごくやさしい感じ…!


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見どころ②|舞台的構図と視線誘導の巧みさ

画面を左右斜めに横切るようにかかる赤い天幕は、この作品の構図に劇的な効果を与えています。
まるで舞台の幕が上がったかのように、登場人物が神聖なドラマを演じている場面に見えてくるのです。

また、人物たちの視線や身振りも計算されており、見る者の目を自然と聖母子に集中させるように設計されています。空間に緊張感と調和が共存し、動きの中に静けさが宿るこの構成力こそ、パルミジャニーノの真骨頂です。

ぬい
ぬい

絵を“舞台”にしちゃう発想がすごい!
静かだけどドラマがぎゅっと詰まってるんだね

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見どころ③|しぐさと視線が紡ぐ無言の物語

本作には台詞も説明もありませんが、登場人物たちのしぐさや視線が、それぞれの信仰や感情を雄弁に語っています

たとえば、幼子イエスがマグダラのマリアに向けて手を伸ばす仕草は、まるで彼女の悔い改めと愛を受け入れるかのように見えます。そして、マリアは深く頭を垂れ、キリストの足に接吻しようとします。

このやりとりを見つめる聖母マリアの表情は、静かでありながらすべてを包み込むような安らぎを湛えています。さらに、その背後に立つ天使は、少し視線を伏せながら巻物を差し出すようにして構図に加わっており、物語に静かな深みを与えています。

このように、登場人物同士が互いに関わり合う姿が丹念に描かれていることで、観る者は“聖なるドラマ”の真っただ中にいるような感覚を覚えるのです。

ぬい
ぬい

「みんな声を出してないのに、気持ちがつながってるってわかるんだよね。
絵なのに“空気”があるってすごいなあ…

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見どころ④|象徴に満ちた小道具と仕草の意味

この作品では、人物たちの身に着けるものや手にする道具にも多くの象徴が込められています:

聖ヒエロニムスの巻物=聖書翻訳者としての知性

ライオン=彼の聖伝説で語られる“棘を抜かれた獅子”の象徴

マグダラのマリアの足への接吻=信仰と献身、殉教者としての敬虔さ

天使の書物=神の言葉と知の象徴

水差しを持つ天使=奉仕・洗礼・純潔の暗示

これらのモチーフを知ることで、作品の物語性や信仰的な意味合いがより深く読み解けます。

ぬい
ぬい

小さなアイテムにも意味があるんだね。
こういうの探すの、宝探しみたいで楽しいな〜!

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豆知識|「昼」と称される、光と色彩の傑作

コレッジョによる《聖ヒエロニムスの聖母》は、1520年代後半に描かれた大規模な宗教画で、現在はパルマ国立美術館に所蔵されています。
この作品は、パルマのサン・アントニオ・アバーテ教会にあった聖ヒエロニムス礼拝堂のために制作されたもので、依頼主は地元の篤信家ブリセイデ・コッラとされています。

作品はそのまばゆい光の表現から、コレッジョのもう一つの代表作《羊飼いの礼拝(La Notte/夜)》と対をなすように、「Il Giorno(昼)」という愛称でも呼ばれるようになりました。
《夜》が闇の中の神秘的な光を描いたのに対し、本作はあふれる昼の光に包まれた温かな空間が広がり、まさに昼と夜の“対話”のような関係性を感じさせます。

またこの作品は、同時代の画家はもちろん、後の芸術家にも強い影響を与えました。特にエル・グレコは、マグダラのマリアの描き方に深く感銘を受けたと伝えられています。
加えて、18世紀以降この作品はヨーロッパ各地の美術愛好家や王侯貴族の関心を集め、一時はナポレオン戦争の戦利品としてフランスに移されたこともありますが、最終的には1815年にイタリアに返還されました。

構図、光、色彩のいずれをとっても、当時の宗教画の中で異彩を放つこの作品は、「ルネサンスの終わり」と「バロックの胎動」の狭間で、静かに時代を照らし続けています。

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まとめ|ねじれた美しさが導く信仰の深み

コレッジョの《聖ヒエロニムスの聖母》は、ただの宗教画ではありません。
そこに描かれているのは、人物同士の静かな関係性、自然光のやさしさ、そして人間的なあたたかさです。

マグダラのマリアの悔悛、聖ヒエロニムスの厳しさ、幼子キリストのやわらかな慈愛。
登場人物たちは、象徴で飾られるよりも、生きた感情をたたえる存在として画面の中にいます

また、昼の光をテーマとしたこの作品は、対になる《夜(La Notte)》と並び称されるように、光そのものを主題とした作品でもあります。
聖性を、奇跡や威厳ではなく、日常の中にあるやさしさや静けさで伝える表現は、後の画家たちにも大きな影響を与えました。

現代の私たちがこの絵を見つめるとき、そこにあるのは500年前の信仰だけではありません。
“赦し”や“つながり”を感じさせる空間に身をゆだねることで、静かに心を澄ませる時間が生まれるのです。

ぬい
ぬい

すごく静かな絵だけど、見てると気持ちがほぐれていくみたい。
こういうのも“癒し”って言うんだろうなあ…

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