ギリシャ神話の中でも、ひときわ壮大なスケールを誇る「ヘラクレスの12の功業」。
これは、英雄ヘラクレスが贖罪と栄光のために挑んだ12の試練を指します。
本記事では、それぞれの功業を簡単に紹介しつつ、美術作品との関連や、各功業が持つ象徴的な意味にも軽く触れていきます。各項目から詳細記事にもアクセスできるよう設計していますので、気になるものから読み進めてください。
▶ ヘラクレス神話まとめ:ヘラクレスの神話を簡単に完全解説!十二の試練と壮絶な生涯まとめ

ヘラクレスの冒険を学ぼう!
なぜ12の功業は生まれたのか?
ヘラクレスの12の功業は、ギリシャ神話でもっとも有名で過酷な試練の連続として知られています。
しかし、そもそもなぜ、彼はそんな試練を課せられたのでしょうか?
理由は――ヘラクレスが自分の家族を手にかけてしまったからです。
この悲劇の背景には、神ヘラの嫉妬と策略がありました。
ヘラクレスはゼウスと人間の女性アルクメネの間に生まれた子であり、その出生そのものがゼウスの正妻ヘラにとっては屈辱の象徴でした。
ヘラは生まれたときからヘラクレスを憎み、様々な妨害を繰り返します。
ある日、ヘラは狂気をもたらす呪いをかけ、ヘラクレスに一時的な発狂を引き起こさせます。
その結果、彼は自らの妻メガラと子どもたちを自分の手で殺してしまいました。
正気を取り戻したヘラクレスは、自分が犯した過ちに深く苦しみます。
そして、この罪を償うために神託を求め、デルポイの巫女ピュティアからこう言い渡されます。
「ミュケナイの王エウリュステウスに仕え、彼の命じる課題をすべてこなせ」
こうして、ヘラクレスはエウリュステウス王の下僕として仕えることとなり、
次々と課される12の試練に挑むことになるのです。

家族を手にかけてしまったって……神話ってほんとに容赦ない展開あるよね。
でもそこから「試練を通じて償う」っていうのは、今の物語にも通じるテーマだと思う!
ネメアの獅子の討伐

ヘラクレスが最初に課された試練は、ネメアの谷に住む恐るべき怪物「ネメアの獅子」を退治することでした。この獅子は、どんな武器も通じない魔性の毛皮を持っており、人々を恐怖に陥れていました。
ヘラクレスはまず弓で攻撃しましたが歯が立たず、最後には洞窟に追い詰め、素手で絞め殺すという怪力を見せつけて討伐に成功します。その後、神から授かった知恵でその毛皮を自ら剥ぎ取り、不死身の獅子の毛皮を身にまとった彼の姿は、以降「英雄ヘラクレス」の象徴となりました。
【解説記事】
【ギリシャ神話】ヘラクレスの12の試練「ネメアの獅子討伐」を解説!【討伐」を解説

最初からクライマックスって感じ!獅子の毛皮がトレードマークになったのもここからなんだね。
レルネのヒュドラ退治

ヘラクレスの第2の功業は、不死の怪物ヒュドラの討伐でした。ヒュドラは9つの首を持ち、切り落としても再び生えてくるという恐ろしい再生能力を持っています。力任せでは太刀打ちできず、ヘラクレスは甥のイオラオスと共に戦うことを選びます。
イオラオスは切られた首の根元を松明で焼き、再生を防ぐという戦法をとりました。この連携によってヒュドラは次第に追い詰められ、最後に残った不死の首は大岩で押し潰されます。
討伐を終えたヘラクレスは、ヒュドラの毒の血を自らの矢に塗って持ち帰り、強力な武器として利用しました。この毒矢は、彼の後の運命に深く関わっていくことになります。
【解説記事】
・ヘラクレスの12功業「ヒュドラ退治」を解説!毒は武器になる!?

そんな判定ある!?でもヒュドラの首って、ほんと厄介そう……
アルテミスの鹿の捕獲

ヘラクレスの「アルテミスの鹿の捕獲」は、12の功業のうち3番目の試練です。
この鹿はアルテミスに捧げられた神聖な存在で、金の角と青銅の蹄を持ち、非常に素早いことで知られていました。ヘラクレスは神の怒りを買わないよう慎重に行動し、1年かけて追跡を続けた末にようやく捕獲に成功します。
ただし、この試練の目的は「生け捕り」であり、傷つけることなく達成する必要がありました。そのため、力だけでなく忍耐と知恵も求められた、繊細な試練だったといえます。
【解説記事】
・ヘラクレスとケリュネイアの鹿|神聖なアルテミスの聖獣を捕らえた静かなる功業を解説!

1年かかってるの、もはや執念だよ……!
エリュマントス山の大猪を捕獲

ヘラクレスの「エリュマントス山のイノシシ捕獲」は、12の功業のうち4番目の試練です。
暴れ回る巨大なイノシシを生け捕りにするという難題で、ヘラクレスは冬の山中に分け入り、巧みに罠を仕掛けて追い詰め、見事に捕獲しました。
このイノシシはアルゴリス地方を荒らしていた危険な存在で、生け捕りの条件も相まって高い知恵と体力が求められました。
結果的にこの捕獲は、ヘラクレスの英雄としての評価をより一層高める試練となりました。
【解説記事】
・エリュマントス山のイノシシ捕獲の試練!ヘラクレスの第四の功業をわかりやすく解説!

やっぱり力だけじゃなくて、知恵も使ってるんだね。
アウゲイアスの家畜小屋を清掃

アウゲイアスの家畜小屋の清掃は、ヘラクレスの「12の功業」のうち第5の試練です。
数十年間掃除されず、悪臭を放つ巨大な家畜小屋を一日で清掃するよう命じられたヘラクレスは、力ではなく知恵を使います。
彼は近くを流れる2本の川(アルペイオス川とペネイオス川)の流れを小屋へ導き、一気に洗い流すことで任務を達成しました。
この方法の大胆さと効率性から、「ヘラクレスの知恵が最も光る功業」として知られています。
【関連記事】
・ヘラクレスの試練あらすじ解説!アウゲイアスの家畜小屋掃除【12の功業第5話】

神話の中の「掃除」って、なんでこんな壮大なの!
ステュムパリデスの怪鳥を退治

ヘラクレスの第6の試練は、アルカディアのステュムパリデス沼地に棲む怪鳥たちを退治することでした。
これらの鳥は青銅のくちばしと羽を持ち、人間や作物に甚大な被害を与えていました。
力だけでは太刀打ちできない相手に対し、ヘラクレスは知恵と神の助けを借ります。
アテナの導きで、ヘパイストスの作った鳴り物(カスタネットのような器具)を手にします。
その音で怪鳥たちを空へと追い出し、狙いすまして弓矢で次々と撃ち落としていきました。
怪鳥の群れは散り、沼地はようやく静けさを取り戻します。
この試練は、怪力だけではなく工夫と道具を駆使したヘラクレスの知恵が光る一幕です。
【解説記事】
・ヘラクレスの12の功業解説!第6の試練ステュムパリデスの怪鳥退治編

この辺から戦いがちょっとファンタジー寄りになってきた感じある!
クレタ島の牡牛の捕獲

ヘラクレスの第七の試練は、「クレタ島の牡牛」を生け捕りにしてミケナイに連れてくることでした。
この牡牛は、ポセイドンがミノス王に捧げた神聖な牛で、本来は神への供物となるはずでした。
しかしミノスが約束を破ったため、ポセイドンは牡牛を凶暴化させて島を荒らす存在に変えてしまいます。
ヘラクレスはクレタ島へ赴き、素手で牡牛を組み伏せるという離れ業を成し遂げました。
彼は暴れる牡牛を見事に抑えこみ、海を渡ってミケナイまで運びます。
この牡牛は後にアテナイで災厄をもたらし、テセウスによって討伐されることになります。
こうして、この功業は他の英雄譚へと自然につながっていきます。
【解説記事】
・クレタ島の牡牛の捕獲|ヘラクレス第七の試練をわかりやすく解説

ミノタウロスのパパ牛だったって後で知って驚いた!
ディオメデスの人食い馬の奪取

ヘラクレスは、第八の功業としてトラキア王ディオメデスの人喰い馬を捕える任務を与えられました。
この馬たちは人肉を食べるよう飼いならされており、非常に凶暴でした。
ヘラクレスは友人アブデロスと共に王国に乗り込み、馬を厩から連れ出します。
しかしその途中、アブデロスは馬に食い殺されてしまいます。
怒ったヘラクレスはディオメデスを倒し、その遺体を馬に与えたことで馬たちはおとなしくなります。
その後、彼は馬を無事ミュケナイへ連れ帰り、任務を達成しました。
この試練は、知恵と力、そして痛ましい犠牲の両方を伴うエピソードでした。
【解説記事】
・ヘラクレスの第8の試練「ディオメデスの人喰い馬の捕獲」をわかりやすく解説

これ……やってることけっこうダークだよね……!
アマゾンの女王の帯を入手

ヘラクレスの第9の試練は、アマゾンの女王ヒッポリュテから神聖な腰帯を得ること。
腰帯はエウリュステウス王の娘への贈り物として求められた。
当初ヒッポリュテは好意的で、腰帯を譲ろうとする。
しかしヘラが妨害し、アマゾンたちに「ヘラクレスが女王をさらう」と嘘を流す。
争いが起こり、ヘラクレスは混乱の中でヒッポリュテを殺してしまう。
その後、腰帯を手に入れ無事任務を果たすことに成功。
この試練は、誤解と戦いが招いた悲劇として知られている。
【解説記事】
・ヘラクレス第9の試練とは?アマゾンの女王ヒッポリュテの腰帯をめぐる神話をやさしく解説

交渉で済むはずだったのに、戦闘になっちゃうのが悲しい……
ゲーリュオンの牛を連れ帰る

ヘラクレスの第10の試練は、西の果てエリュテイア島に住む怪物ゲリュオンから、神聖な牛の群れを奪うというものでした。
旅の途中、太陽神ヘーリオスから「金の盃船」を借り、広大な海を越えて目的地へと向かいます。
島に上陸したヘラクレスは、まず双頭犬オルトロスと牛飼いエウリュティオンを打ち倒しました。
続いて、三つの胴体を持つ怪物ゲリュオンとの戦いに挑み、ヒュドラの毒矢でこれを討ち取ります。
牛を奪った後の帰路でも、女神ヘラの妨害や盗賊カコンの襲撃など、数々の困難が待ち受けていました。
それでもヘラクレスはあきらめず、すべてを乗り越えて牛の群れを無事ミケーネまで届けます。
この試練は、彼の強さだけでなく、勇気と執念を物語る壮大なエピソードとして語り継がれています。
【解説記事】
・ヘラクレス第10の試練とは?ゲリュオンの牛を奪う神話をわかりやすく解説!

この試練、旅の途中でいろんな伝説がくっついてるのも魅力!
黄金のリンゴを手に入れる

ヘラクレスは、神々の庭に実る「黄金の林檎」を持ち帰るという試練に挑むことになります。林檎のありかを探すため、彼は変幻自在の海神ネレウスを捕まえて問いただします。
旅の途中では、エジプト王ブシリスの生贄にされそうになり、リビアの巨人アンタイオスとも死闘を繰り広げました。やがて天を支える巨人アトラスと出会い、代わりに林檎を取ってきてもらう交渉をします。
林檎を手に戻ったアトラスは、空を再び支えるのを拒みますが、ヘラクレスは機転を利かせて林檎を取り返します。林檎はエウリュステウス王に献上されますが、神聖すぎて恐れられ、最終的にはアテナによって天界に戻されました。
この試練は、力だけでなく知恵と交渉で乗り越えた、英雄ヘラクレスの成熟を示す物語です。
【解説記事】
・ヘラクレス第11の試練とは?黄金の林檎を求めた神々との知恵比べを解説!

空を支えるとかスケールでかすぎるよ!
冥界の番犬ケルベロスを連れ出す

ヘラクレスが最後に挑んだ第12の試練は、冥界の番犬ケルベロスを生きたまま地上に連れ帰るというものでした。
冥界に入るため、彼はギリシャ南部のターナロン岬にあるとされた死者の門をくぐり、魂の国へ足を踏み入れます。
冥界の王ハデスは、武器を使わず素手でケルベロスを制するならば、連れ帰りを許すと条件を出しました。
ヘラクレスは三つの頭を持つ怪物ケルベロスに組み付き、圧倒的な力で暴れる身体を押さえ込みます。
激闘の末にケルベロスを捕らえた彼は、地上へと戻り、ミケーネの王エウリュステウスの前に姿を現しました。
王はあまりの光景に恐れおののき、甕に隠れたとも語られています。
こうして12の功業すべてを果たしたヘラクレスは、人間の限界を超えた英雄としてその名を不朽のものにしました。
【解説記事】
・ヘラクレス第12の試練を解説|冥界の番犬ケルベロスを捕らえた英雄神話

ラストが冥界っていうのもドラマチックだね!
なぜこれほどの試練が与えられたのか?
ヘラクレスがこれらの功業を課されたのは、自らの罪の贖いと神への忠誠を示すためでした。
同時に、この12の冒険は、後世に語り継がれる英雄像のテンプレートとなり、古代の彫刻やルネサンスの絵画など、数多くの美術作品の題材にもなりました。
おすすめ書籍
下記記事でギリシャ神話を学ぶ上でおすすめの書籍を紹介します。
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どちらもわかりやすくて初心者から上級者までおすすめの本です。
まとめ|ヘラクレスの12の功業が語り継がれる理由とは?
ヘラクレスの12の功業は、単なる怪物退治の物語ではありません。
それぞれの試練には「力」「知恵」「忍耐」「勇気」など、英雄に必要な資質が込められており、彼の成長物語としても読むことができます。
さらに、この12の冒険は多くの芸術作品や文学に影響を与え、古代ギリシャから現代まで、その姿は多様な形で再解釈され続けています。
なぜ私たちは今もヘラクレスの物語に惹かれるのでしょうか?
それは、「試練を乗り越えて前に進む」姿が、いつの時代にも人々の心に響くからに他なりません。
ぜひ、各功業の詳細記事を通じて、彼の冒険の奥深さをさらに感じてみてください。
【続きのエピソード】
・試練の後の放浪と戦い|ヘラクレスが辿った最後の苦難と神格化への道

全部の功業をこうして振り返ってみると、ヘラクレスってほんとにいろんな意味で“超人”だったんだなって思うよ。力も知恵も根性も全部そろってる!一個ずつ深掘りしていくの、楽しみだね。