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ゴッホの《木の根》を解説!クロースアップされた大地のうねり

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ポスト印象派
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画面いっぱいに絡み合う根と幹。
地平線も空もなく、青紫の幹が砂色の斜面に食い込み、若葉の緑が脈打つように震えています。

《木の根》は、オーヴェル=シュル=オワーズで描かれたゴッホ晩年の作品です。
最期の絵としばしば紹介されますが、現在は「最晩年の有力候補」というのが妥当な言い方です。
ただ、その切り立った構図と激しい筆致が、ゴッホの到達点を示していることに疑いはありません。

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ぬい
ぬい

根っこがこんなに主役になるなんて、攻めてる!

遠景を捨てて“接写”にしたのがポイント。
ほぼ抽象絵画の手前まで行ってるね。

レゴッホ
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《木の根》

まずは簡単に作品の情報を紹介します。

作品詳細
  • 作品名:《木の根》
  • 制作年・場所:1890年7月頃、オーヴェル=シュル=オワーズ
  • 技法・支持体:油彩・カンヴァス
  • サイズ:約50×100cm(横長)
  • 所蔵:ファン・ゴッホ美術館(アムステルダム)
  • 備考:2020年、実在の場所が特定されたとする研究が発表(オーヴェルの斜面の根群)。最終作かどうかは断定不可だが最晩年作であることは確実
ぬい
ぬい

横長なんだ。だから根の“帯”みたいな広がりになるんだね。

うん、パノラマにすることで“地表を這う力”が強調されてる。

レゴッホ
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制作背景|オーヴェルの短い夏、画面は地面へ近づいていく

1890年5月、ゴッホはパリ北方のオーヴェルに移り、わずか2か月あまりで集中的に制作します。
麦畑や村の通りを描いたのち、彼の視線は足元の地面へ。
《木の根》は、宿のそばの斜面で密集する根を極端に近づけて描いたと考えられています。
具体的な風景の写生でありながら、画面はほとんど抽象的なリズムへと変わります。

ぬい
ぬい

“見上げる空”から“見下ろす地面”へ、視線が反転してる感じ。

その転回がこの時期の核心。周囲の世界を“構造”として捉え直しているんだ。

レゴッホ
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構図の見どころ|地平線なし、トリミングで生まれる抽象

この絵には空も地平線も出てきません
幹と根が画面の上下左右から出入りし、私たちの視線は強制的に“内部”へ引きこまれます。
とくに中央の青紫の太い根が横に走り、そこから細い枝根が下へ落ちる。
S字やU字の反復が蔓(つる)の譜面のように連なり、自然の形が音楽的な秩序に置き換えられています。

ぬい
ぬい

写真でいう“寄りすぎ”が、逆に迫力になってる!

トリミングの大胆さは浮世絵の影響も感じるね。画面外を想像させる設計だ。

レゴッホ
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色彩と筆致|青紫の幹、若葉の緑、砂色の地面

幹はウルトラマリン+紫寄りで、輪郭に濃い線が走ります。
地面は黄土・ベージュ・赤茶が細いストロークで積み重なり、斜面の傾きが生まれます。
若葉はレモンイエローを含む緑で、湿った光を拾う。
黒い影で締めず、補色と明度差だけで凹凸を起こすのがゴッホの常套手段。インパスト(厚塗り)の凹凸が触覚まで連れてきます。

ぬい
ぬい

近づくと油絵の“盛り上がり”がはっきり見えるんだよね。

あれが呼吸のリズムをつくる。光が斜めに当たる展示だと特に効くよ。

レゴッホ
レゴッホ
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どう読む?——“遺作”神話を越えて、方法を見る

《木の根》は長く「遺作」と呼ばれてきました。
近年は、現場写真との照合から描かれた場所が特定された可能性が高く、最晩年の有力作であることは確かです。
ただし“最後の一枚”の断定はできません。
大事なのは、この作品が極端な近景・大胆なトリミング・リズムの反復で、現実のモチーフを抽象の手前まで押し上げている点です。
ここには「見えるものをそのまま写す」を超えた、絵画の方法そのものが刻まれています。

ぬい
ぬい

物語で泣かせるタイプじゃなくて、“描き方”で攻めてくる感じだ。

まさに。方法がメッセージになっている好例だね。

レゴッホ
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まとめ|大地の“構造”を描いた到達点

《木の根》は、モチーフを極限まで近づけ、自然の構造=リズムとして可視化した一枚です。
風景や人物の物語を脱ぎ捨て、色と線と厚みで絵画そのものへ踏み込んだ、ゴッホの最終局面。
ここで私たちは、画家の視線が世界の“かたちの骨格”にまで届いていたことを、はっきり確認できます。

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ぬい
ぬい

根っこって、生命の“源”を見てる感じがしてくる。

うん。見下ろす視線なのに、どこか“内側へ”潜る旅でもあるんだ。

レゴッホ
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