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ゴッホ《カフェ・タンブランの女》を解説!1887年初頭にパリの作品

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赤い羽根飾りのような帽子、腕を組んでテーブルに寄りかかる女性。
淡い緑灰色の室内には、タンバリン形の丸テーブル、泡立つビール、そして壁には日本の版画がちらりと見えます。

1887年初頭(1〜3月ごろ)、パリ・モンマルトルのカフェ・タンブランで描かれた《カフェ・タンブランの女》は、ゴッホがパリでつかんだ明るい筆触と、当時の“ジャポニスム”の熱気を同時に映す肖像です。モデルは店の女主人アゴスティーナ・セガトーリ。カフェが文化のサロンとして機能していたことが、一枚の絵から手触りとして伝わってきます。

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ぬい
ぬい

テーブルがほんとにタンバリンみたいで可愛い。

名前だけじゃなくて、什器まで“タンブラン”で統一してたんだよ。

レゴッホ
レゴッホ
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《カフェ・タンブランの女》

まずは簡単に作品の情報を紹介します。

作品詳細

作品名:カフェ・タンブランの女

制作時期:1887年1〜3月ごろ

制作地:パリ(モンマルトル、ブールヴァール・ド・クリシー沿いの Café du Tambourin)

技法:油彩/カンヴァス

モデル:アゴスティーナ・セガトーリ(Café du Tambourin の経営者、元モデル)

所蔵:ファン・ゴッホ美術館

ぬい
ぬい

モデルが店主本人ってところが、もう物語だね。

うん、店の“顔”を店の中で描いてるのがいいよな。

レゴッホ
レゴッホ
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パリの“たまり場”としてのカフェ・タンブラン

カフェ・タンブランは、モンマルトルの斜面を下るブールヴァール・ド・クリシーにあった芸術家行きつけの店です。
店名どおり、丸テーブルやスツールがタンバリンの意匠で統一され、壁には当時流行した日本の版画が飾られていました。
ゴッホは1887年の春、この店で浮世絵コレクションの展示を企画し、友人のエミール・ベルナールやルイ・アンクタンにも強い刺激を与えたことが知られています。兄テオと合わせた浮世絵の収集は500点以上に及んだとされ、その一部がこの画面の背景にも見えます。

ぬい
ぬい

カフェがギャラリー代わりって、最高の立地だ。

だよね。飲んで語って、そのまま壁で“展示”までできたんだ。

レゴッホ
レゴッホ
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アゴスティーナ・セガトーリという女性

モデルのアゴスティーナはイタリア出身で、パリでは若い頃にドガやコローのモデルを務めた経歴があります。
芸術への理解が深く、ゴッホとも親しく交流しました(私的に近しい関係を示唆する証言もありますが、断定はできません)。
彼女の落ち着いた表情と、きらびやか過ぎない服装は、カフェの“日常”を象徴します。ビールのジョッキと白い帽子箱のような小物が、くつろいだ時間をやわらかく印象づけます。

ぬい
ぬい

派手じゃないのに、目が離せない存在感だね。

店を切り盛りしてきた時間が、姿勢にそのまま出てる感じ。

レゴッホ
レゴッホ
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パレットと筆触――パリで軽くなった絵肌

画面を覆うのは、オランダ時代の重い土色ではなく、高明度の緑灰・青・黄を中心とした軽やかな混色です。
壁や衣服は短いストロークを重ねる分割筆触で構成され、明るさを失わずに量感をつくります。
赤い帽子とテーブルの縁の朱が、抑えめの色調の中で視線を結び、背景の浮世絵の青や白が室内に“冷たい光”を運んでいます。

ぬい
ぬい

色は淡いのに、空気が澄んで見える。

黒を避けて、色で影を作るパリ流の明るさだね。

レゴッホ
レゴッホ
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画面の設計――円と縦のせめぎ合い

円形テーブルとスツールが反復する円をつくり、手前から奥へリズムが続きます。
一方で、壁のフレームや椅子の背、女性の上半身は縦の線で構成され、画面に静けさを与えます。
円の“会話”と縦の“静止”が拮抗することで、喧噪ではなく、一息つく時間が立ち上がります。

ぬい
ぬい

丸と縦、無意識に気持ちを落ち着かせてくれるんだな。

そう。形のリズムで“居心地”まで設計してるんだよ。

レゴッホ
レゴッホ
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背景の浮世絵――パリで深まるジャポニスム

壁の版画は細部こそ簡略化されていますが、明快な輪郭と平面的な色面という浮世絵の語法が見て取れます。
ゴッホはコレクションと臨写を通じて、輪郭線の強さ、面の大胆な切り取り、そして画面を縁まで使い切る構図を学びました。
それらはのちの花束や南仏の風景に至るまで、作品の“骨格”として生き続けます。

ぬい
ぬい

背景の小さな版画なのに、画面の空気が変わるね。

うん、浮世絵は“抜け”を作る達人。室内にも風を入れてくれる。

レゴッホ
レゴッホ
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「兄弟の展覧会」を開いたカフェという記憶

1887年春、ゴッホはこの店で兄弟の浮世絵展を催し、自作や友人作家の展示も企画しました。
カフェはただの飲食の場ではなく、作品が人を呼び、人が作品を育てる実験の拠点でした。
《カフェ・タンブランの女》は、その中心にいた店主を静かに讃える肖像でもあります。

ぬい
ぬい

壁が“展示壁”だと思って見ると、ぐっと熱が増す。

だよな。ここで交差した視線が、そのまま絵の歴史になったんだ。

レゴッホ
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まとめ――日常の席に宿る、パリの文化の交差点

《カフェ・タンブランの女》は、1枚の肖像でありながら、カフェ文化・ジャポニスム・仲間との交流という1887年のパリを凝縮した作品です。
淡い光、軽い筆触、タンバリンの円、壁の版画。
喧噪をあおるのではなく、静かな熱で時代を語る——そのバランスこそ、この絵の魅力だと感じます。

ぬい
ぬい

静かなのに、店のざわめきが耳に残る。

そういう“温度”を、丸いテーブルと背景の版画が呼び起こしてるんだよ。

レゴッホ
レゴッホ

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