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マザッチョの《貢の銭》をわかりやすく解説!初期ルネサンスの傑作

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初期ルネサンス
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フィレンツェのサンタ・マリア・デル・カルミネ教会、ブランカッチ礼拝堂の壁を飾るマザッチョ《貢の銭》は、初期ルネサンスを代表するフレスコ画です。

キリストと弟子たちの前に税金の徴収人が現れ、ペテロが湖で魚を釣り、その口から出てきたコインで税を支払うという出来事を、一枚の画面の中に三つの場面として描き込んでいます。

人物たちは体のボリュームや重みがしっかりと表現され、山々が続く背景や右側の建物には遠近法が用いられています。光は礼拝堂の窓と同じ方向から差し込み、実際の空間と絵の中の世界が自然につながるように計算されています。

この記事では、《貢の銭》の基本データから、聖書の物語、三場面構成の工夫、遠近法と光の表現、そしてマザッチョという画家の人物像や《聖三位一体》との関係まで解説していきます。

ぬい
ぬい

一枚の絵なのに、時間が三つ流れてるってすでに設定から面白いよね。

うん、ストーリーマンガのコマ割りを一枚に凝縮したみたいな感じだよな。

レゴッホ
レゴッホ
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《貢の銭》

まずは簡単に作品の情報を紹介します。

作品詳細

作品名:貢の銭
作者:マザッチョ(Masaccio)
制作年:1420年代半ばごろ(おおよそ1425年前後と考えられている)
技法:フレスコ(湿った漆喰の上に描く壁画技法)
サイズ:高さ約2.5m×幅約6m
主題:新約聖書『マタイによる福音書』17章24〜27節に登場する「神殿税」のエピソード
場所:イタリア・フィレンツェ、サンタ・マリア・デル・カルミネ教会ブランカッチ礼拝堂

ぬい
ぬい

高さ2メートル超えの横6メートルって、想像以上にでかいね。

そうそう、教会の中で見ると“壁一枚がそのまま絵”って感じで迫力すごいんだよ。

レゴッホ
レゴッホ

<作者についての詳細はこちら>

マザッチョについて解説!ルネサンスを一気に加速させた若き天才

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マザッチョとブランカッチ礼拝堂の背景

マザッチョは1401年に生まれ、1428年ごろにはすでに亡くなっていたと考えられている、非常に短命な画家です。
にもかかわらず、ブランカッチ礼拝堂での仕事によって「初期ルネサンス絵画の出発点」とまで評されるほど大きな影響を残しました。

ブランカッチ礼拝堂は、フィレンツェの有力者フェリーチェ・ブランカッチが、聖ペテロの物語をテーマにしたフレスコ装飾を依頼した礼拝堂です。仕事はマゾリーノという年長の画家とマザッチョの二人に任され、その後の仕上げはフィリッピーノ・リッピが担当しました。

礼拝堂の壁には、聖ペテロが牢から解放される場面や、病人を癒やす場面、アダムとイヴの追放など、救いの歴史を物語る場面が連続して描かれています。その中でも《貢の銭》は、構図の巧みさと人物表現の力強さから、ブランカッチ礼拝堂を代表する場面として特に高く評価されています。

ぬい
ぬい

二十代でこの礼拝堂のメイン担当って、プレッシャー半端ないよね。

しかもその仕事が何百年も“ルネサンスの教科書”扱いされてるんだから、ほんと伝説級だよ。

レゴッホ
レゴッホ
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聖書のエピソード《貢の銭》とは何か

《貢の銭》の元になっているのは、新約聖書『マタイによる福音書』17章24〜27節に出てくる「神殿税」の話です。

ガリラヤ湖畔の町カファルナウムで、神殿への税金を徴収する人がペテロのもとに来て「先生(イエス)は税を納めないのか」と問いかけます。ペテロがそのことをキリストに報告すると、キリストは王の子どもは税から自由であることを示しつつも、「人々をつまずかせないために」税を払うよう指示します。そのために、ペテロに「湖へ行って釣りをし、最初に釣れた魚の口からコインを取り出して税を納めなさい」と命じる、というのが物語のおおまかな流れです。

このエピソードは、キリストが奇跡によって問題を解決しつつ、世の秩序と信仰をどのように両立させるのかを示す場面として理解されてきました。作品の主役は聖ペテロですが、その背後には、信仰者と社会との関係というテーマも読み取ることができます。

ぬい
ぬい

“魚の口からコイン”って、冷静に考えるとかなりインパクトある奇跡だよね。

だよな。マザッチョはその不思議さを、ちゃんと現実味ある絵に落とし込んでるのがすごいんだよ。

レゴッホ
レゴッホ
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一枚の中に三つの時間が流れる構図

《貢の銭》のいちばんの特徴は、聖書の物語の三つの場面を、一枚の壁画の中に同時に描いていることです。

画面中央では、赤い短いチュニックを着た徴税人が、こちらに背を向けて立っています。彼は右手を差し出し、キリストの一行に税金を求めています。キリストは静かな表情で彼の方を向き、右手で遠くの湖を指し示しています。そのすぐ隣で、ペテロも同じ方向を指さし、キリストの言葉を受け取ったことがわかるポーズを取っています。

左端には、湖のほとりでしゃがみ込み、魚の口からコインを取り出しているペテロの姿が描かれています。衣服の色や形は中央のペテロと同じで、同一人物であることがすぐにわかるようになっています。

右側では、今度はペテロが建物の前に立ち、先ほどの徴税人にコインを渡しています。こちらでも、ペテロは中央と同じ青い衣と黄色いマントを身につけており、物語の連続性が視覚的に示されています。

中央から左、そして右へと視線を動かしていくと、時間が進んでいくように感じられる構図になっており、ルネサンス初期における「時間表現の実験作」としても非常に重要な作品です。

ぬい
ぬい

真ん中のペテロと、左と右のペテロ、全部同じ服だから、一目で“同一人物三連続”ってわかるの賢いよね。

しかも真ん中の徴税人のオレンジの服が、全体をつなぐ色のアクセントになってて、視線をグッと引き寄せてくるんだよな。

レゴッホ
レゴッホ
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遠近法と光でつくられた立体感とリアリティ

《貢の銭》には、初期ルネサンスらしい遠近法と光の表現が徹底して使われています。

まず右側の建物に注目すると、アーチや壁の奥行きが、一点透視図法に近い形で描かれています。階段や柱のラインは、画面の奥の一点へと収束していくように配置されており、人物たちがしっかりと立つ「舞台」としての空間をつくり出しています。

背景の山並みは、遠くにいくほど色が淡くなり、輪郭がぼんやりとしていきます。これは「空気遠近法」と呼ばれる描写で、実際の風景で大気を通して物を見るときの変化を取り入れたものです。

人物の体は、一定方向から差し込む光によって立体感が与えられています。ブランカッチ礼拝堂の窓と同じ方向から光が来るように計算されており、顔や衣服の明暗が自然につながることで、彫刻のようなボリュームが生まれています。

キリストやペテロたちの表情や仕草も、人間らしい感情が伝わるように描かれています。驚き、不安、納得といった微妙な心の動きが、顔の向きや手の伸ばし方の違いとして表現されており、中世の硬直した人物像から大きく踏み出した表現だと評価されています。

ぬい
ぬい

光の向きまで礼拝堂の窓と合わせてあるって、こだわりが職人レベルだね。

そうそう。だから現場で見ると、ほんとに同じ光の中に人が立ってるみたいに見えるんだよ。

レゴッホ
レゴッホ
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マザッチョという画家と《聖三位一体》とのつながり

マザッチョの《聖三位一体》を徹底解説|初期ルネサンス最大の壁画

マザッチョは「マゾ(トンマーゾ)の大ざっぱなやつ」という意味のあだ名で呼ばれていました。几帳面というよりは、絵を描くことに集中するあまり他のことには無頓着だった人物像が想像されますが、その分、絵画表現の面では誰よりも前に進んでいたと言えます。

彼のもう一つの代表作《聖三位一体》は、サンタ・マリア・ノヴェッラ教会に描かれた巨大なフレスコで、古代ローマ風の礼拝堂空間を一点透視図法で描き出しています。
《貢の銭》と《聖三位一体》を並べて見ると、前者は「物語を語る水平の構図」、後者は「信仰の中心を示す垂直の構図」として、マザッチョの二つの側面が表れているように見えます。

どちらの作品にも共通しているのは、人物がしっかりと重みを持った存在として描かれ、建築空間や遠近法が、物語や信仰の内容を支える骨組みになっている点です。マザッチョの仕事は、後のミケランジェロをはじめ多くの画家たちに研究され、ルネサンス絵画の基準を決定づけました。

ぬい
ぬい

《貢の銭》が“動きのマザッチョ”、《聖三位一体》が“静けさのマザッチョ”って感じだね。

そうそう。どっちも二十代で描いたって考えると、もう才能バグってるとしか言えないよな。

レゴッホ
レゴッホ
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おすすめ書籍

このサイトの参考にもさせて頂いている本を紹介します。

まとめ|《貢の銭》が今も語り続けるもの

マザッチョ《貢の銭》は、聖書の一場面を丁寧に再現した宗教画であると同時に、初期ルネサンスが目指した新しい絵画表現の実験場でもあります。

一枚の画面に三つの場面を組み込む構図、建物や山々に使われた遠近法、礼拝堂の光と連動した明暗表現、感情豊かな人物たち。これらが組み合わさることで、観る人は物語の現場に立ち会っているかのような臨場感を味わうことができます。

短い生涯の中で、マザッチョは中世からルネサンスへの橋渡しとなる作品を次々と生み出しました。その中でも《貢の銭》は、信仰の物語と人間らしいドラマを両立させた名場面として、今も世界中から多くの人をブランカッチ礼拝堂へ引き寄せています。

ぬい
ぬい

こうやって整理して読むと、《貢の銭》って“絵画のルールがアップデートされた瞬間”って感じがするね。

だな。フィレンツェ行く機会あったら、これはマジで生で見とかないと損なレベルだと思う。

レゴッホ
レゴッホ
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