ギリシャ神話に登場するアンドロメダは、岩に鎖で繋がれ、怪物に生贄として捧げられようとしていた王女。
その美しさゆえに母カシオペアが神々の怒りを買い、波乱の運命を背負うことになります。
しかし彼女は、空から舞い降りた英雄ペルセウスに救われ、やがて天に昇り星座となる――。
この記事では、アンドロメダの神話的背景から星座との関係、美術作品に描かれた姿までを、わかりやすく深掘りしていきます。

美術を見るうえではかかせない知識!
アンドロメダとは?ギリシャ神話に登場する王女の基本情報

アンドロメダは、ギリシャ神話におけるエチオピアの王女で、その名は「人類に支えられる者」という意味を持つとされます。
彼女の両親は、父ケフェウス王と母カシオペア王妃。この家族全体が、後に夜空の星座となったことでも有名です。
神話の中でアンドロメダは、母の不用意な発言が原因で怪物ケートスへの生贄として差し出されることになります。
岩に鎖で繋がれ、もはや助かる望みのない彼女の元へ現れたのが、英雄ペルセウスでした。
この出会いによって彼女の運命は大きく変わり、
「救われる王女」=ヒロインの原型として、後の西洋文学や芸術作品に大きな影響を与える存在となったのです。
アンドロメダは、受難と救済の象徴、そして神話が語る「人間の運命」の象徴として、今も語り継がれています。

「アンドロメダ」って、星の名前しか知らなかったけど、
神話を知るとすごくドラマチックな人生を歩んだ人だったんだね。
最初から“救われる運命”だったのかな…ってちょっと考えちゃうな。
神話に見るアンドロメダの物語|詳しい流れと背景
母カシオペアの傲慢と神々の怒り
すべての発端は、アンドロメダの母・カシオペア王妃のひと言でした。
彼女はある日、「自分の娘は海の精ネレイデスたちよりも美しい」と言い放ちます。
この発言が、海の神ポセイドンの怒りを買うことになります。
神々に対して傲慢な態度をとることは、ギリシャ神話では最も忌まれる行為のひとつ。
ポセイドンは、王国への罰として巨大な海の怪物ケートスを送り込み、沿岸を荒らし始めます。


神を怒らせたら怖いんだね!
生贄としてのアンドロメダ

神託を受けたケフェウス王夫妻は、王国を救うために「アンドロメダを怪物の生贄として捧げよ」という言葉に従うしかありませんでした。
こうして、アンドロメダは岩に鎖で縛られ、海岸でケートスの到来を待つ運命を背負わされます。
彼女は何の罪もないにもかかわらず、家族と国の贖罪のために犠牲にされようとしていたのです。

アンドロメダかわいそう。
空から現れた英雄ペルセウス
その絶望的な光景の中、空から舞い降りてきたのが、ゴルゴン退治の旅から戻る途中の英雄ペルセウスでした。

空飛ぶサンダルを履いた彼は、岩に縛られたアンドロメダの姿に心を動かされます。
事情を聞いたペルセウスは、王と王妃にこう申し出ます。
「彼女を救えば、妻として迎えてもよいか?」
ケフェウス王が了承すると、ペルセウスはケートスに立ち向かい、メドゥーサの首で怪物を石にして撃退します。

こうして、アンドロメダは命を救われ、ペルセウスとともに新たな運命を歩み始めたのです。

ペルセウスの登場シーン、まるで映画みたいにカッコいいよね。
でも、アンドロメダが助かったのは“奇跡”だったのか、それとも“運命”だったのか…
そう思うと神話って、ただのファンタジーじゃなくて深いんだなあ。
このペルセウスがアンドロメダを救う神話についてより詳しく知りたい方は、下記記事をご覧ください。
アンドロメダと星座|神話の終わりと天への昇華
結婚と新たな人生のはじまり

怪物ケートスから命を救われたアンドロメダは、約束どおりペルセウスの妻となり、
彼とともにギリシャへ戻って新しい人生を歩み始めます。
ふたりは多くの子どもをもうけ、その子孫には後にミケーネ王朝を築く者も現れることから、“英雄の家系の母”としての役割も果たしました。

「英雄の家系の母」って肩書かっこいいね。
神々による“星空への昇華”

アンドロメダとその家族は、死後に星座として天に昇った存在としても知られています。
- アンドロメダ座(Andromeda):彼女自身の星座。秋の星空でひときわ長く美しい形。
- カシオペア座:母である王妃。椅子に座った逆さの姿で描かれ、傲慢への罰の暗示があるとされます。
- ケフェウス座:父王ケフェウス。
- ペルセウス座:彼女を救った英雄。
- くじら座(ケートス):海の怪物として昇華。
これらの星座は、まるで神話の一幕が夜空に凍結されたかのように、毎年めぐる季節の中で姿を現します。

さっき画像貼ったけど、ケートスまで星座になっているのね!
アンドロメダ銀河との関係は?
よく話題になるのが、「アンドロメダ銀河」と神話のアンドロメダの関係。
これはアンドロメダ座の方向に位置する銀河であり、神話のアンドロメダとは直接的な関係はありません。
ただし、神話が天文学用語に影響を与えた好例といえるでしょう。

空を見上げると、そこに神話の登場人物たちが“今もいる”って考えると不思議な気持ちになるね。
アンドロメダって、「救われた王女」から「星の女王」になった感じがして、なんだか誇らしいなあ。
美術作品に描かれたアンドロメダの姿
なぜアンドロメダは描かれ続けてきたのか?
アンドロメダの神話は、西洋美術の中でも特に人気のある題材です。
その理由は、「美しい女性」「怪物との対峙」「英雄による救出」「結婚と昇華」など、
感情的にも視覚的にもドラマ性が強いシーンが多いからです。
また、アンドロメダの姿は時代とともに変化していきます。
古典的な理想美として描かれた時代もあれば、儚さや苦悩に焦点を当てた表現もあります。
ルーベンス《アンドロメダを解放するペルセウス》

ルーベンスは、英雄が王女を救う瞬間の劇的な場面を迫力ある筆致で描いています。
アンドロメダは淡く輝くような肌で表現され、「理想化された美の象徴」として捉えられています。

さっきの奴とは別のバージョンだね。
レンブラント《アンドロメダ》

- レンブラントはアンドロメダを、ただ美しい存在としてではなく、
- 恐怖と孤独に震える一人の少女として描いています。
- ヌードでありながら官能性を抑えた表現で、人間の弱さや心情のリアリズムを追求した傑作です。
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ギュスターヴ・モロー《ペルセウスとアンドロメダ》

象徴主義の代表的画家モローは、アンドロメダを幻想的かつ夢幻的に描いています。
美術的には装飾性が強く、「内面的な美と精神性」が強調されています。
ペルセウスの姿が小さく描かれており、ヒロインとしてのアンドロメダ自身に焦点が当てられています。

やっぱ時代によって描かれ方が違うね!
豆知識:アンドロメダ=“古典的ヌード”の象徴?
ルネサンス以降、アンドロメダの岩に縛られた姿は、「正当化されたヌード表現」として人気がありました。
宗教画が多かった時代でも、神話画ならば裸体が許容され、美の理想として賞賛されたのです。

絵を見てるだけで、アンドロメダが「ただの美人」じゃなくて、
いろんな意味を背負ったキャラクターなんだってわかるね。
特にレンブラントの絵は、アンドロメダの“心の声”まで聞こえてきそうだったよ…。
アンドロメダ神話が残した意味と現代的解釈
“受難と救済”という構造の典型
アンドロメダの物語は、神話における「救済されるヒロイン」像の原型です。
無実の罪で苦しめられ、強大な敵の前にさらされながらも、外部からの助けによって救われる――
この構図は、後世の文学・絵画・演劇・映画などで繰り返し再生産されてきました。
「助けられる女性=アンドロメダ」という図式は、“美しさと危うさの象徴”でもあります。
現代的な再解釈の視点
しかし現代では、アンドロメダのような「受け身の女性像」に対して疑問の声も上がっています。
- 「なぜ女性が犠牲になる必要があったのか?」
- 「彼女自身に選択肢はなかったのか?」
- 「ペルセウスとの結婚は“報酬”だったのか?」
これらの視点は、現代のフェミニズムやジェンダー論の中でも取り上げられており、
アンドロメダの神話が時代とともに意味を変えつつあることを示しています。

メドゥーサも再解釈されているんだよね。
詳しくは下記記事をご覧ください。
ポップカルチャーへの影響
アンドロメダのイメージは、映画やゲーム、漫画でもたびたび登場します。
たとえば:
- 『タイタンの戦い(Clash of the Titans)』
- 『聖闘士星矢』(アンドロメダ瞬)
- 『ペルセウスの冒険』をもとにしたRPG作品群
これらは、神話を現代的にアレンジしながらも、“救う・救われる”という感情の核心を描き続けています。

アンドロメダって、ただの「きれいな王女さま」ってわけじゃなかったんだね。
現代の私たちが見ても、いろんな感情や疑問を呼び起こしてくれる。
だからこそ、こんなにも長く語り継がれてるんだと思うなあ。
おすすめ書籍
下記記事でギリシャ神話を学ぶ上でおすすめの書籍を紹介します。

リンク飛ぶのめんどくさい人向けにここでも紹介!
どちらもわかりやすくて初心者から上級者までおすすめの本です。
まとめ|アンドロメダは“救われた姫”の原型
アンドロメダの物語は、ギリシャ神話の中でもとりわけ象徴的な構造を持っています。
母の過信によって犠牲となり、絶望の中に置かれながらも、外からやって来た英雄によって命を救われ、
最終的には結婚・昇華・星座化という理想的な“救済の完結”を迎えるのです。
このような「受難→救出→昇華」の流れは、以後の文学や芸術におけるヒロイン像の原点となり、
同時に“美と受難”“女性と運命”というテーマも内包しています。
しかしその一方で、アンドロメダはただの受け身な存在ではありません。
人間の非力さとそれでもなお生き延びようとする強さ、
救われる者としての尊厳や価値――
彼女は私たちに「希望とは何か」「人はどう救われるのか」という問いを投げかけ続けています。
夜空に輝く星となった彼女は、今も静かに語りかけてくるのです。

最初は「助けられるだけの人かな?」って思ってたけど、
調べていくうちに、アンドロメダの中にある“強さ”にも気づいたよ。
この神話が、ずっと語り継がれてきた理由が少しわかった気がするなあ。
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