ギリシャ神話の中でも最も知名度が高く、力強い女神の一人、ヘラ。
彼女は結婚と出産を司る女神であり、ゼウスの妻にしてオリュンポスの最高位の女神です。
しかし、ヘラはその威厳と美しさだけでなく、嫉妬深い性格で知られています。
彼女の物語は、神々の愛と裏切り、そして復讐のドラマを描き出し、古代ギリシャの文化や価値観を反映しています。
このブログでは、ヘラの神話的背景、彼女が関わる主要なエピソード、そしてそれが現代にどのように影響を与えているかを探ります。
ヘラの複雑なキャラクターを通じて、ギリシャ神話の深遠な世界を一緒に旅してみましょう。
さあ、一緒にヘラのあれこれを見てみよう!
ヘラを簡単に解説
ヘラの事をサクッと知りたい方向けに、ヘラの特徴を抽出したものを先に記載しておきます。
- ローマ神話名:ユノ
- 英語読み:ジュノー
- 役割: 結婚と女性の守護神
- 特徴: ゼウスの妻であり、嫉妬深い面を持つ。
- 象徴: 孔雀、牛
- 物語: ゼウスの浮気に悩まされるが、それでも家族の結束を守る。
- オリュンポス12神での権威:2位
ヘラはギリシャ神話の重要な女神で、結婚と出産を司る存在であり、ゼウスの妻としても知られています。
彼女はクロノスとレアの娘であり、ゼウスの姉妹でもあります。
オリンポスの女王として、ヘラの威厳と権力は他の女神たちを上回ります。彼女を象徴する動物は孔雀と牛で、これらは彼女の美しさと豊かさの象徴です。
ヘラは結婚の保護者であり、婚姻の神聖さを守る一方で、ゼウスの恋愛関係に嫉妬し、その結果として彼の愛人や子供たちに厳しい仕打ちをしたというエピソードが数多くあります。
これらの物語は、ヘラの性格や嫉妬心を描く重要な要素となっています。
さらに、ヘラは女性の権利や地位を象徴する存在であり、その信仰は女性の役割や家族の価値観を強調していました。
彼女の祭りでは、結婚や女性の健康に関する儀式が行われていたとされています。
ヘラの神話は、古代ギリシャの社会における女性の役割や生活の多様性を反映しており、彼女の物語はその時代の女性観を理解する手がかりを提供します。
さすが最高の女神だね。
ヘラの起源と家族
ヘラはクロノスとレアの娘として生まれ、彼女の兄弟姉妹にはゼウス、ポセイドン、ハデス、デメテル、ヘスティアがいます。
特にゼウスとは姉弟関係であり、後に結婚することでオリンポスの王と女王となるのです。
ヘラはテュポンとの戦いでゼウスを助け、神々の間での彼女の立場を強固にしました。
兄弟だけどヘラが美しすぎてゼウスに求婚されたんだよね
ヘラの嫉妬エピソード
有名なヘラの神話のエピソードをいくつか紹介します。
ゼウスとの結婚により、ヘラはオリンポスの女王となりましたが、同時にゼウスの浮気に対する嫉妬も彼女の物語に深く刻まれています。
ゼウスの多くの愛人やその子供たちに対するヘラの復讐は、神話の中心的なテーマの一つです。
以下、ヘラの嫉妬による被害者とそのエピソードを紹介します。
これらのエピソードは、ヘラの嫉妬心とその影響力の象徴的な例です。
それぞれの物語は、彼女のキャラクターを描く上で重要な役割を果たしています。
ヘラの行動は、ギリシャ神話の中で愛、復讐、そして権力のテーマを深化させています。
兄弟だけどヘラが美しすぎてゼウスに求婚されたんだよね
イオ (Io)
イオはアルゴスの王女で、ゼウスが彼女に求愛した際、ヘラの嫉妬を引き起こしました。
ゼウスはイオを白い牛に変えて彼女を隠そうとしたが、ヘラはそれを見破り、イオを永遠に追いかけるハエを送り、さらにアルゴス(百眼の巨人)に彼女を監視させました。
最終的に、ヘルメスがアルゴスを殺すことでイオは解放されましたが、彼女はエジプトに逃れ、そこで元の人間の姿に戻され、ゼウスとの間にエパフォスという子を授かりました。
ヘラクレス (Heracles/Hercules)
ヘラクレスはゼウスと人間アルクメネーの子で、ヘラは彼の出生から敵視しました。
彼女は彼が生まれると、毒蛇を送って殺そうとしましたが、ヘラクレスはそれを退けました。
その後も、ヘラは彼の人生を困難なものにするために様々な障害を設けました。
特に有名なのが「十二の功業」で、ヘラが間接的に彼がこれらの試練を課せられるきっかけを作りました。
セメレ (Semele)
セメレはゼウスの恋人で、ディオニュソスの母です。
ヘラはセメレの妊娠を知ると、彼女の心に疑いを抱かせるよう仕向けました。
セメレがゼウスの真正性を確かめるために彼に全力をもって現れるよう求めた結果、彼女はゼウスの雷によって焼き尽くされました。
しかし、ディオニューソスはゼウスが彼女の胎内から救い出し、自身の太ももに縫い込んで完成させました。
エウロパ (Europa)
エウロパはゼウスが牛に変身して誘拐した女性です。
ヘラの嫉妬は直接的な攻撃には至りませんでしたが、エウロパの運命は彼女の行動により大きく変わりました。
エウロパはクレタ島に連れて行かれ、そこでミノス王を生みました。
レト (Leto)
レトはゼウスの子、アポロンとアルテミスを産んだ女性で、ヘラはレトが出産地を見つけるのを困難にしました。
ヘラは彼女に呪いをかけ、どの土地もレトを出産させることを拒絶しました。
最終的に、デルポス島が浮島に変わってレトを受け入れ、アポロンとアルテミスが誕生しました。
ヘラが嫉妬深かった理由
上記のようにヘラは非常に嫉妬深く、ゼウスの愛人やその子供に容赦がないです。
しかし、ヘラが愛人やその子供に厳しかったのには理由があります。
古代ギリシャでは、一夫一妻制が一般的な価値観で、家庭内では妻が家長に次ぐ立場にありました。
そんな中、ヘラはオリュンポスの最高神ゼウスの妻として、妻の立場と尊厳を守っていました。
彼女自身、非常に貞節な女性で、ゼウス以外の男性とは絶対に関係を持たなかったのです。
ジューンブライド
ローマ神話では、ヘラはユノーとして知られています。
ユノーの英語名はジュノー(Juno)で、この名前が6月の英名「June」の起源となっています。
このことから、6月に結婚すると幸せになれるという伝統、「June Bride」が生まれました。
ジューンブライドって神話が起源なのか
今日では、ヘラは女性のエンパワーメントやフェミニズムのシンボルとしても見られることがあります。
彼女の嫉妬深さはしばしば批判されますが、それはまた、女性の感情や力を表現する手段ともなっています。
ヘラのアトリビュート
ヘラのアトリビュートには次のようなものがあります。
- 孔雀 (Peacock):孔雀はヘラの最も有名な象徴で、その美しさと不死性を表します。神話によれば、彼女の忠実な目付け役アルゴスの百の目が孔雀の羽に変わったとされています。
- 王冠 (Diadem or Crown):ヘラはオリンポスの女王として描かれることが多く、王冠は彼女の地位と権威を象徴しています。
- 王笏 (Scepter):王笏もまた、彼女の支配力を示す象徴であり、彼女が婚姻と家族に関する事柄において絶対的な権威を持つことを表しています。
実際に上記アトリビュートがどう描かれているのかを見てみましょう。
レンブラント・ファン・レイン『ヘラ』
レンブラント・ファン・レイン『ヘラ』には、2つが描かれています。
1つ目はヘラが頭に被っているに持っている王冠。
2つ目は右手に持っている王笏です。
アンニーバレ・カラッチ『ゼウスとヘラ』
アンニーバレ・カラッチ『ゼウスとヘラ』には、1つのアトリビュートが描かれています。
それは左下に描かれている孔雀です。
孔雀が傍に描かれていることから、この女性がヘラだという事がわかります。
おまけなのですが、男性の近くに鷲が描かれていることから彼がゼウスであることがわかります。
ピーテル・パウル・ルーベンス『天の川の誕生』
ピーテル・パウル・ルーベンス『天の川の誕生』にも1つのアトリビュートが描かれています。
それは左下に描かれている孔雀です。
それは右上に描かれている孔雀です。
孔雀が傍に描かれていることから、この女性がヘラだという事がわかります。
またこの絵にもゼウスのアトリビュートである鷲と雷が描かれています。
因みにこの絵でヘラに抱かれている赤ちゃんはヘラクレスで、これは天の川の誕生のエピソードを主題に描いた作品です。
おすすめ書籍
下記記事でギリシャ神話を学ぶ上でおすすめの書籍を紹介します。
リンク飛ぶのめんどくさい人向けにここでも紹介!
どちらもわかりやすくて初心者から上級者までおすすめの本です。
まとめ
ギリシャ神話の壮大なパンテオンにおいて、ヘラの存在は特異な輝きを放ちます。
彼女は単なるゼウスの妻やオリンポスの女王という枠組みを超え、結婚と出産、家庭の守護者としての役割を果たす女神です。
彼女の物語は、愛と嫉妬、権力と復讐、そして女性の地位とその複雑さを描くキャンバスです。
ヘラの神話は、古代ギリシャの社会や文化を理解するための重要な窓口を提供します。
彼女の象徴である孔雀と牛は、美しさと豊かさ、そして母性を象徴し、彼女が持つ王冠と王笏はその権威と統治力を示しています。
彼女のキャラクターは、ただの嫉妬深い女神ではなく、強さと知識、そして時には慈悲深さを持つ存在でもあります。