17世紀オランダ黄金時代の巨匠、レンブラント・ファン・レイン。
彼は「光と影の魔術師」と称されるほど、繊細な明暗表現を通して人間の内面や感情を描いた画家です。
《夜警》《解剖学講義》《放蕩息子の帰還》などの傑作から、“表情の研究”として知られる《トローニー》まで、
レンブラントの作品は今も世界中の人々を魅了し続けています。
この記事では、レンブラントの魅力や技法の特徴、そして代表作を初心者にもわかりやすく解説。
各作品の見どころや豆知識も交えてご紹介します。

名前は知ってたけど、“こんなにドラマチックな絵を描く人”だったんだね…!
レンブラントってどんな画家?

レンブラント・ファン・レイン(Rembrandt van Rijn, 1606–1669)は、17世紀オランダ黄金時代を代表する画家であり、「光と影の魔術師」と呼ばれる表現の達人です。
肖像画、宗教画、歴史画、自画像などあらゆるジャンルで活躍し、人間の内面に深く迫る表現力で知られています。

派手な色づかいじゃないのに、絵から“気持ち”が伝わってくるのって、すごいよね!
レンブラント作品の3つの魅力
① 光と影の使い方が神がかってる

レンブラントは「キアロスクーロ(明暗法)」という技法を使い、光と影のコントラストで感情や物語を演出しました。
ただ明るい・暗いのではなく、光が“心の動き”を浮かび上がらせているのが特徴です。
② 自画像で人生を描いた“セルフドキュメンタリー”

彼はなんと60点以上の自画像を描いており、20代から晩年までの姿を記録し続けました。
若き日の自信に満ちた表情、晩年の疲れや深いまなざし。
それらはレンブラントの人生そのものを映し出す、まさに**“画家による絵日記”**です。
③ 宗教や神話を“人間のドラマ”として描く

宗教画や歴史画でも、レンブラントは聖人や神々を遠くから仰ぎ見るのではなく、
感情をもった「ひとりの人間」として描きました。
だから彼の作品には、観る側も感情移入できるあたたかさがあります。

神さまの絵なのに、“この人の気持ち、わかる”って思えちゃうのが不思議!
レンブラントの代表作品10選|見どころ解説付き
1. 夜警(The Night Watch)|ドラマチックな構図と動き

- 年:1642年/所蔵:アムステルダム国立美術館
- 民兵隊の肖像画なのに、まるで舞台の一場面。光が指揮官に当たり、動きと緊張感に満ちた傑作。
・民兵隊の行進を動きのある構図で描いた大作。
・肖像画にドラマと動きを持ち込んだ革新作。
・光と構図の演出が圧巻、まるで舞台劇のよう。
2. 解剖学講義(テュルプ博士の解剖学講義)

- 年:1632年/所蔵:マウリッツハイス美術館
- 集合肖像でありながら、講義中の視線や動きがリアル。光の演出も巧み。
・外科医テュルプの解剖授業を描いた群像画。
・見る人の視線を光と構成で自然に誘導。
・科学と芸術が融合した知的で迫力ある1枚。
3. 放蕩息子の帰還

- 年:1661–1669年/所蔵:エルミタージュ美術館
- 父に抱かれる悔い改めた息子の姿が、慈愛と許しを静かに語る。晩年の傑作。
・悔い改めた息子を父が迎える聖書の一場面。
・無言の抱擁に深い感情がにじむ晩年の傑作。
・“赦し”というテーマを光で表現している。
4. ダビデ王の手紙を手にしたバテシバの水浴

- 年:1654年/所蔵:ルーヴル美術館
- 王の求婚を受けたバテシバが深く葛藤する表情を繊細に描く、心理描写の名品。
・王からの手紙を手に思い悩むバテシバを描写。
・衣の質感と肌の光が対比的で美しい。
・内面の葛藤を静かに語る心理描写の傑作。
5. ガラリヤ湖の嵐

- 年:1633年/※1990年に盗難・未発見
- レンブラント唯一の海景画。荒れ狂う波と船上のドラマに引き込まれる。
・荒れる湖に翻弄される弟子たちの恐怖を描写。
・レンブラント唯一の海景画としても貴重。
・1990年に盗難され、今も未発見の幻の名画。
6. ユダヤの花嫁

- 年:1665–1669年/所蔵:アムステルダム国立美術館
- 見つめ合う男女のあたたかな愛情が、画面全体に満ちている。
・見つめ合う男女の静かな愛情を描いた一枚。
・指先や視線に温かさと敬意が込められている。
・色彩と質感の重厚さも見どころ。
7. ペリシテ人に目を潰されるサムソン

- 年:1636年/所蔵:シュテーデル美術館
- 劇的な瞬間をとらえた歴史画。光の当て方が視線を導く。
・サムソンが裏切られ、捕らえられる瞬間を描く。
・緊迫した動きと構図でドラマ性を強調。
・宗教画にしては感情表現が非常に生々しい。
8. アンドロメダ

- 年:1630年/所蔵:マウリッツハイス美術館
- 神話の場面だが、アンドロメダの恐怖と絶望をリアルに描写。
・救出前のアンドロメダが絶望の中に立つ姿。
・若き日のレンブラントが情感を探った作品。
・理想化されないリアルな人物像が印象的。
9. 若き日の自画像(Self-Portrait with Dishevelled Hair)

- 年:1628年/所蔵:アムステルダム国立美術館
- 若き日のエネルギーと好奇心がにじむ、レンブラントの“表情の練習”。
・20代のレンブラントが鏡を見て描いた練習作。
・強い明暗表現に、後のスタイルの片鱗が見える。
・ちょっとやんちゃな表情も魅力のひとつ。
10. イサクの犠牲

- 年:1635年/所蔵:エルミタージュ美術館
- 旧約聖書の名場面を、圧倒的な感情と光の力で表現した作品。
・信仰と父性が試される旧約の名場面を描写。
・息子を殺そうとする瞬間の心理が生々しい。
・天使の登場で一転、緊張が解かれる構図が秀逸。
豆知識|レンブラントと現代とのつながり
- レンブラントの自画像シリーズは、セルフィー文化の先駆けとも言われることがあります。
- 彼の作品はNFTやAI生成技術の訓練データにも使われるなど、現代技術とも接点があります。

- 1990年に盗まれた《ガラリヤ湖の嵐》は、今なお未発見で「史上最大級の美術品盗難事件」の一つとして知られています。

400年前の絵が、今でも“いちばん人気”って、なんかロマンあるね!
レンブラントの表現技法とジャンルの幅|“トローニー”にも注目
レンブラントといえば宗教画や肖像画が有名ですが、実は彼は「トローニー(tronie)」と呼ばれるジャンルの作品も多数残しています。
トローニーってなに?
トローニーとは、特定の人物を描く肖像画とは異なり、表情・表現・衣装などを研究するための人物画です。
モデルは匿名で、画家自身が技法や感情表現を試すために描くことが多く、当時の美術市場でも一般販売用に人気がありました。
レンブラントは特に、
- 驚きや笑いといった豊かな表情の研究
- 異国風の衣装や光の当て方による視覚効果の探求
- 自分自身をモデルにしたトローニー(=自画像)も多数制作
といった形で、トローニーというジャンルを技術的・芸術的に深化させた第一人者でもあります。

“これは誰?”ってわからなくても、“いい顔だなあ”って思えるのがトローニーの魅力だよね〜
トローニーの代表例
- 《笑う男》や《東方の衣装を着た男》など、感情や物語性を含んだ一枚絵としての魅力も高く評価されています。


- 表情の練習として描いた作品が、今日では世界中の美術館で“肖像画的傑作”として扱われていることも。
トローニーはフェルメールやハルスなど他の画家も多く手がけましたが、レンブラントはそこに“人間性”と“精神性”を与えた点で別格といえるでしょう。
まとめ|レンブラントの作品は「静かな感情のドラマ」
レンブラントは、光と影を操りながら、感情・時間・物語を絵の中に封じ込めた画家です。
その作品には派手さではなく、人間の弱さ・強さ・ぬくもりが刻まれています。
彼の絵を見ることは、400年前の“ひとの気持ち”と出会うこと。
レンブラントは、宗教画や歴史画だけでなく、トローニーのような小品にも人間の深い表情や人生の機微を刻み込んだ画家です。
だからこそ、400年経った今でも、私たちは彼の絵を「美しい」だけでなく「心に響く」と感じるのかもしれません。

“昔の人なのに、いまのことみたいに感じる”って、絵の力ってすごいなあ!