こんにちは、美術愛好者の皆さん。今回は、ルネサンス期の中でも盛期ルネサンスの巨匠ラファエロ・サンティがルネサンス期の芸術の粋を尽くした傑作、『システィーナの聖母』について熱く語りたいと思います。
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本記事のコンセプト上、最初にじっくり鑑賞からしていますが、すぐ解説をご覧になりたい方は目次で気になる個所をクリックすれば直ぐに飛べるので、ご活用ください。
『システィーナの聖母』を鑑賞


なんか綺麗な作品だね。


サイゼエンゼルスだ


割とみんなよそ見しているけど、この人は何処見てんの(笑)
『システィーナの聖母』解説
十分な鑑賞は出来たでしょうか?
それでは、いよいよ『システィーナの聖母』の解説スタートです。

題名 :システィーナの聖母
作者 :ラファエロ・サンティ
製作年:1513~1514年頃
種類 :油彩画
所蔵 :アルテ・マイスター絵画館、ドレスデン
『システィーナの聖母』はラファエロ・サンティによって1513~14年ごろに描かれた作品です。
この作品は、ラファエロが自身で最後まで完成させた最後の聖母子像と言われています。
現在はドイツのドレスデンにあるアルテ・マイスター美術館に所蔵されています。

日本ではサイゼリヤの絵として有名だよね
そうですね。
サイゼリヤでは下に描かれている天使しか鑑賞できませんが、実はこの天使たちは『システィーナの聖母』という作品の一部に過ぎないのです。
サイゼリヤで鑑賞できる絵画については別記事サイゼリヤの絵をご覧ください。
『システィーナの聖母』は数百年にわたって、様々な作品のお手本にされるほど素晴らしい作品です。
例えば19盛期の画家アングルの作品である『ルイ13聖の誓願』のモデルになったのは火を見るよりも明らかですね。

300年後もお手本にされてるの凄い!
さらに、この作品の素晴らしさを表す言い伝えとして、ルネサンス期の巨匠コレッジョが『システィーナの聖母』を初めて見たときにそのすばらしさに圧倒され「私も凡百の一画家に過ぎない」と叫んだというものがあります。
そんな素晴らしい絵『システィーナの聖母』についてもっと詳しく見ていきましょう!
『システィーナの聖母』の登場人物
ここで、『システィーナの聖母』に描かれている人物紹介とこの先解説する面白ポイントの頭出しをしていきます。
聖母マリア

一般的な宗教がでは慈愛に満ちた表情で描かれるが本作では厳しい顔をして描かれています。
どうして微笑んでいないのか、それにはラファエロのある計算が関係しています。
気になる理由は後程解説します。

気になる子ちゃん!
イエス・キリスト

マリアに抱かれている赤ちゃんがイエス・キリストです。
宗教画における幼子のイエス・キリストは、キリスト教の信仰や教義を視覚的に表現するための象徴的な要素としてよく描かれます。
通常、彼は無垢や純粋さの象徴とされ、神聖な存在として描かれます。

キリストって「救世主」みたいな意味の称号らしいよ。
聖シクストゥス

聖シクストゥスは、キリスト教の歴史で重要な聖人の一人で、特にカトリック教会で崇敬されています。
私はこの作品で一番意味が込められているのが彼だと考えています。
というのも、詳しくは後述しますが彼の至る所にラファエロの気遣い&忖度を確認できます。
またこれも後程解説しますが彼が指をさしていることにも意味があります。
聖女バルバラ

聖女バルバラは、キリスト教の聖人で、カトリック教会や正教会で崇敬されています。

ホントにどこ向いてるのさ
彼女の視線にもラファエロによって計算されています。
後述の解説をお楽しみに!

気になる子ちゃん!
天使たち

下に描かれているのは、皆さんおなじみの天使たちです。
彼らは天上の世界と我々鑑賞者がいる地上の世界をつなぐ役割を持っています。

は?どういうこと
それは例のごとく後述してます。
この二人の天使のモデルについては、様々な説があり「ラファエロが街で見かけたパン屋の窓をのぞき込む子供」や「制作の際に見学に来たモデルの女性の子供たち」がモデルとなったとされる説があります。
無数の謎の顔

背景に注目してみてください。無数の顔が緑のカーテンの影に浮かび上がっています。

まってよく見たらめちゃめちゃ顔あるよ!!!
怖い!!!!
こちらも詳しくは後述。
制作背景
『システィーナの聖母』は、元々ローマのサンシスト聖堂(Basilica di San Sisto)の祭壇画として制作されたものです。
制作の背景には、当時の教皇ユリウス2世が関与しています。教皇はサンシスト聖堂の改修を計画し、その一環としてラファエロに祭壇画の制作を発注しました。この絵画は聖堂の中心的なアートピースとして、信仰の象徴としての位置づけがされました。


見覚えがあるよな。。。
ラファエロはこのプロジェクトにおいて、芸術的な才能を発揮し、理想化された美と調和を追求しました。絵画は聖母マリアと幼子イエスを中心に据え、周囲には聖人や天使が配置されています。この作品はラファエロの最高傑作の一つとされ、サンシスト聖堂の祭壇に相応しい神聖な雰囲気を演出しています。
計算し作れた構図
『システィーナの聖母』は構図が計算しつくされているという点でも有名です。
しかも、複数個の計算が確認できます。
登場人物の配置
一つ目は、登場人物の配置です。
本作では上部では、登場人物の頭をつなぐと綺麗な三角形ができるようになっています。

さらにこの作品の主役であるマリアとイエスは、中心点をつなぐ線と先ほどの三角形を合わせると、ひし形の中に収まっています。


この三角形に人物を配置する技法は、三角構図という技法でラファエロよりも少し先輩のレオナルド・ダ・ヴィンチがはじめたものなのじゃ。
ラファエロは、ルネサンスの三大巨匠の中では一番年下で、レオナルドやミケランジェロの画法を熱心に学び、自身の作品に取り入れていました。

凄い!凄すぎる!
また、この作品は、登場人物の頭を繋ぐと十字架にもなっています。


凄すぎて言葉もない。
この計算つくされた構図は観る者に穏やかで感動的な印象を与え、ラファエロが理想化された美を描く上での巧妙な手法を示しています。
そして、驚くべきことにラファエロの計算はこれだけではありません。
現実世界とのリンク
2つ目の計算は、現実世界とのリンクです。

ん?どういうこと?

聖シクストゥスは何を指さしていると思いますか?

我々、鑑賞者かな?
マリアに語り掛けながら指をさしているように見えますよね。
そしてマリアは笑っていない。


無礼な鑑賞者を報告???
実はこれ、キリストの磔刑図を指さしているのです。

前述の通り、『システィーナの聖母』は元々ローマのサンシスト聖堂の祭壇画として制作されたものです。
サンシスト聖堂の磔刑図の前に飾られる事がわかっていたラファエロは、あえてマリアの顔を穏やかに微笑むのではなく厳しい顔で描いたとされています。

目の前にイエスの磔刑図があって
それを見ているから笑えていないってことか。。。
視線の循環


この人があっち向いている理由も早く教えてよ。
ラファエロは登場人物の視線に仕掛けをすることで、鑑賞者の視線を誘導しています。

ん?どゆこと?
始まりは、聖シクストゥスの指です。
その聖シクストゥスの顔はマリアとイエスに向いています。
イエスの顔は、聖バルバラを向いていて聖バルバラの顔は左側の天使に向いています。
左の天使は右の天使寄りに顔を向けていて、右の天使は目線はバルバラですが顔は聖シクストゥスに向いています。

振り出しに戻った!
このようにラファエロは絵の中で鑑賞者の視線を循環させる仕掛けを計算して描いていました。
天上と地上を繋ぐ構図
4つ目は天上と地上を繋ぐ構図です。

待ってました!
サイゼエンゼルスのところで言っていたやつだよね!
天上と地上の世界をカーテンと枠で区切っている。
神に託された役割を地上で行う教皇の冠と天使が区切りの枠に置かれている。
ラファエロはこの作品で、カーテンと枠を用いることで天上の世界と我々の世界を繋ぐ表現をしました。
ラファエロの忖度
聖シクストゥスの紹介の部分で触れた、この作品で見られるラファエロの気遣い&忖度を紹介します。
聖シクストゥスは、発注主のユリウス2世の叔父のシクトゥス4世の守護聖人であり、ユリウス2世にとってはとても重要な人物です。
そんな本作の聖シクストゥスの顔は発注主のユリウス2世をモデルにしています。


また、よく見るとユリウス2世の出身であるデッラ・ローヴェレ家の紋章である樫の木の葉っぱの模様が描かれていたり、左下の王冠の先端にはどんぐりが描かれており、発注主であるユリウス2世が喜ぶ仕掛けがちりばめられています。


さすがラファエロ!めっちゃ忖度!!!!
そんた君だよ!
謎の顔の正体
いよいよ、背景の謎の無数の顔の正体に迫ります!


こわっ
実はこれらは全て天使の顔です。

え?天使?サイゼエンゼルスとは別の?
彼らは熾天使(セラフィム)、智天使(ケルビム)と言い天使の中でも最上位の天使です。
『システィーナの聖母』以外の作品でも天上の聖母子を描いた作品では。しばしば彼らを見ることが出来ます。

【関連記事】

天使にも位があるんだ!
位が高い天使程、顔と羽だけで描かれる事が多いです。
そのうち、天使の階級まとめ記事も書きたいですね。

え。じゃあ体のあるサイゼエンゼルスは?

体が描かれているので、下級天使ですね。

という事は、同じくサイゼで見られる『受胎告知』のガブリエルも?

上級天使では無いですね。
まとめ
聖母マリアと幼子イエスを描いたこの作品は、その美的完成度と神聖な雰囲気において、芸術の頂点を極めています。
聖母マリアの優雅なポーズ、幼子イエスの無垢な表情、色彩の美しさはまさに感動的。ラファエロは緻密なディテールと絶妙な構図を通じて、理想的な美を追求しました。
絵画全体には、周囲に描かれた天使や聖人たちが神聖な調和を醸し出しています。この調和はまさに魂を打つものであり、芸術の魔法に身を委ねたくなります。
システィーナの聖母は、ドレスデン美術館に収められ、その存在は芸術愛好者を魅了し続けています。この作品を観ることで、ルネサンス美術の深遠さと美の追求に触れ、心に深い感銘を受けることでしょう。
ドレスデン美術館へ足を運び、その美に浸る贅沢なひとときを過ごしてみてください。美はここに極まっているのです。

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