こんにちは、美術愛好者の皆さん。
今回は、ティントレットの『アベルの殺害』を解説していきます。
この絵画は旧約聖書の物語を題材としている作品なので、少しだけ旧約聖書にも触れつつ解説していきます。
本記事のコンセプト上、最初にじっくり鑑賞からしていますが、すぐ解説をご覧になりたい方は目次で気になる個所をクリックすれば直ぐに飛べるので、ご活用ください。
このサイトのどこか1記事にピンク色の僕がいるよ!
見つけたらラッキー!ぜひ探してみてね!!!!
『アベルの殺害』を鑑賞
解説を見る前に皆さんもぬいと一緒に、作品をじっくりと鑑賞してみてください。
タイトルからして、なんかめっちゃ怖い現場を描いた作品だね。
何があったかは知らないけど、落ち着いて。。。
しかし良い肉体をしておる。
よく見たらとても鋭利で長い刃物でやろうとしている。
こやつ本気だな。。。
この動物の頭もここに描かれているということは何か意味があるんだよね。
『アベルの殺害』を解説
十分に鑑賞できたでしょうか?
ティントレットの『アベルの殺害』は、アベルを殺そうとするカインの場面を描いています。
カインはアベルの顔を左手でつかみ、右手に持つ棍棒で彼を殴ろうとしています。
この作品では、画面右側の樹木のそばに、アベルが神に捧げた仔牛の頭部が転がっている様子も描かれています。
さて、ここからは『アベルの殺害』の解説に移ります。
行ってみよーーーー!
作品詳細
題名 :アベルの殺害(The Murder of Abel)
作者 :ティントレット(Tintoretto)
製作年:1553年
種類 :油彩画
寸法 :149.0 cm × 196.0 cm
所蔵 :アカデミア美術館(イタリア)
149.0 cm × 196.0 cm!
大きい絵なんだね!!!
ティントレットについて
ここで『アベルの殺害』の作者のティントレットについて、簡単に紹介します。
生没年:1518~1594年
出身:ヴェネツィア共和国、ヴェネツィア
代表作:
・『ダナエ』
リヨン美術館(リヨン)
・『天国』
ドゥカーレ宮殿(ヴェネツィア)
・『天の川の起源』
ナショナル・ギャラリー(ロンドン)
同世代の画家:
・ミケランジェロ・ブオナローティ
(1475~1564年)
・ティツィアーノ・ヴェチェッリオ
(1490~1576年)
ルネサンス全盛期のころの画家なんだね。
登場人物
ティントレットの『アベルの殺害』の登場人物を紹介します。
カイン
旧約聖書の『創世記』に登場する人類の祖であるアダムとイヴの息子でありアベルの兄。
人類最初の殺人者とされている。
人類最初の殺人者!!!
しかも弟を。。。
アベル
旧約聖書の『創世記』に登場する人類の祖であるアダムとイヴの息子でありカインの弟。
世界最初の殺人の被害者とされている。
なんで、こんなことになったんだろう。
動機を知りたいよ。。。
題材について
この作品の主題は旧約聖書の『創世記』のカインとアベルの物語です。
カインとアベルは、アダムとイヴの息子として、人類の起源に関わる重要な存在です。
カインは農業に精を出し、一方のアベルは羊飼いとして牧畜に専念しました。
ある時、兄弟は神に生贄を捧げましたが、神はアベルが捧げた初物にのみ興味を示し、カインの捧げた初穂を無視しました。
このことがカインに嫉妬心を生じさせ、結果的にカインはアベルを野原で殺害してしまいました。
なるほど、これが動機か。。。
アベルがいなくなったことに気付いた神はカインにその所在を問いましたが、カインは正直に答えませんでした。
そして神はカインに対して「アベルの声が地から私に向かって叫んでいる。なぜなら、お前が弟の血を地に流したからだ。お前は呪われ、この地を去ることになる」と言い彼を追放しました。
追放されている場面の作品とかもあるのかな?
実は、ティントレットの『アベルの殺害』で追放されているカインの姿も描かれています。
描かれる2人目のカイン
ティントレットの『アベルの殺害』をよく見ると、画面右の背景に追放されるカインの姿が描かれています。
ホントだ!
カイン居た!!!
これはティントレットの得意とする描き方であり、『誘惑されるアダムとイヴ』でも、追放されるアダムとイヴの小さな姿を背景に描いています。
ティントレットの得意技だったのか♪
隠された作品本来の意味
画面は樹木によって2つの場面に分かれており、カインの背中を通る斜めの線が樹木の右側に延長され、木々が生い茂る斜面を形成しています。
逃亡するカインは、その斜めの線上に小さく描かれています。
カインのポーズはやや不自然で、杖を肩に担ぎ、右手を上げながら画面右上を見上げています。
確かにポーズが不自然だ。
このポーズの意味を理解するには、アンドレア・ズッキの古い印刷物を参照する必要があります。
それによると、画面右上には神の姿が浮かび上がっており、呪われたカインはその神の姿を見上げています。
しかし、この作品では画面右端が切り詰められており、神の姿が失われてしまったため、本来の意味がわかりにくくなっています。
作品の構図
この作品の構図は、ティツィアーノ・ヴェチェッリオの天井画に触発されています。
ティントレットは天井画を壁のキャンバスに移し変え、自然の風景を背景に描いています。
2つの人物像は明暗のコントラストと光の渦を形成し、彼らの力強い身体の動きに圧倒されています。
ただし、鑑賞者には2人の顔はほとんど見えません。
アベルの頭部は鑑賞者に向かって突き出されており、短縮法で描かれた身体は鑑賞者の側に転がり落ちているように見えます。
制作背景
ヴェネツィアの税関庁舎に本部を構えるドイツ騎士団によって創設されたサンティッシマ・トリニタ同信会館は、1547年に絵画の装飾のためにフランチェスコ・トルビドに依頼しました。
そして、1550年9月にティントレットがこの依頼を引き継ぎ、『創世記』を基に5つの連作を制作しました。
それは『動物の創造』、『イヴの創造』、『父なる神の前のアダムとイヴ』、『誘惑されるアダムとイヴ』、そして本作品『アベルの殺害』です。
こうして『アベルの殺害』は制作されたのです。
連作だったのか!
作品の評価
サンティッシマ・トリニタ同信会館のティントレットの連作は、古くから高い評価を受けてきました。この評価は、ボルギーニだけでなく、カルロ・リドルフィ、マルティニオーニ、ボスキーニといった人々によっても言及されています。
1720年には、アンドレア・ズッキによって本作品の複製版画が作られ、現代においても本作品が切り詰められる前の姿を伝えています。
そして高評価には納得だ!
まとめ
今回はティントレットの『アベルの殺害』を鑑賞・解説をしてきました。
人類初の殺人現場の描写を捉えられた名作でしたね。
旧約聖書の物語について興味関心がある方は、こちらの記事から順番に解説しているので、是非ご覧になってみてください!
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