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ゴッホ《糸杉と星の見える道》解説!夜の風と絵具のうねりの名画

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ポスト印象派
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ぐいっと空へ伸びる黒い糸杉。金色の麦畑を切り裂く白い道。
空には渦を巻く星と弓なりの月。道端を寄り添って歩く二人の先を、馬車がゆっくりと進んでいきます。

《糸杉と星の見える道》は、サン=レミ療養所を去る直前の1890年春に描かれた夜景で、ゴッホが愛してやまなかった“糸杉+夜空”の組み合わせが、最後にもう一度凝縮された一枚です。夜なのに暗く沈まないのは、青と黄の高い明度をぶつけ、うねる筆致で空気そのものを光らせているから。見上げる空と、足もとの道の体感が、そのまま画面に貼りついています。

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ぬい
ぬい

ミレーの作品のカバーみたいなことかな?

そうだね!そんな感じ!

レゴッホ
レゴッホ
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《糸杉と星の見える道》

まずは簡単に作品の情報を紹介します。

作品詳細
  • 作品名:《糸杉と星の見える道》
  • 制作年・場所:1890年、サン=レミ=ド=プロヴァンス
  • 技法:油彩/カンヴァス
  • 主題:糸杉・月・星・麦畑・曲がる道・歩く二人と馬車
  • 所蔵:クレラー=ミュラー美術館(オッテルロー) ※展示替えあり
ぬい
ぬい

ゴッホって感じ!

星月夜に似てるよね。

レゴッホ
レゴッホ
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制作背景──出立直前、“糸杉と夜”への執着

アルルの騒動ののちサン=レミで静養していたゴッホは、1889年に《星月夜》や《糸杉》を連作します。糸杉は南仏の墓地に多い常緑樹で、「黒い音符のように風景を締める形」に惹かれていました。
本作はその翌年。オーヴェルへ移る直前の不安と昂りが混じる時期に、糸杉・星・道・麦という自分の核モチーフを一枚に束ね、夜の体感として定着させています。下絵にとどめず、現場の記憶を頼りに色を押し立てたため、空気の速度がそのまま筆致の速度になっています。

ぬい
ぬい

不安と昂りが絵にも表れているね。

そうだね。

レゴッホ
レゴッホ
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構図の読み方──垂直と曲線、天と地の張り合わせ

画面中央の糸杉は強い垂直軸として空を二分します。対して道はS字に曲がり、右上へ抜けていく。硬い垂直と柔らかな曲線の対立が、静止画の中に歩行のテンポを生みます。
星と三日月は、糸杉の上部左右に配置され、見上げた視線を左右に揺らしながら再び樹へ戻す視線の回路を作る。縦に伸びる樹と横に広がる空――その張力が、夜の広がりと人の小ささを同時に感じさせます。

ぬい
ぬい

ちっぽけな人と無限に続きそうな闇夜。

夜の良さがよく描かれているね。

レゴッホ
レゴッホ
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色彩設計──暗くしない夜、発光する青と黄

空は群青とコバルトの層に、緑みを帯びた明るい青が渦を描いて重なります。星の周囲は黄と白の輪が重ね塗りされ、光の振動を厚みで表現。麦畑はオーカーからレモンイエローまで幅を持たせ、夜気のなかでも体温の残る金色に見えるよう調整されています。
道は白と薄い青で明度を高く保ち、月光の反射を感じさせる。黒い絵具に頼らず、補色のぶつかり(青×黄)と明度差で夜の明るさを作るのが、ゴッホの夜景の要です。

ぬい
ぬい

ゴッホと言えば青と黄色ってイメージある。

確かに!

レゴッホ
レゴッホ
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筆致と絵肌──風の速度がそのまま線になる

空は小さな円弧の反復が重なり、星の周りで大きな渦に育ちます。麦は短く速いストロークが密集し、ざわめく穂先の手触りを出す。糸杉は濃い緑黒の縦方向のタッチで固め、樹液のような粘りを感じさせます。
近づけばタッチの“粒”が躍り、離れれば色面の“和音”に溶ける――その二段階の見え方が、夜の空気の厚みを支えています。

ぬい
ぬい

見る距離によって見え方が変わるのか!

機会があれば是非実物をお目にかかりたい。

レゴッホ
レゴッホ
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主題の意味──糸杉=境界の木、道=時間の線

南仏で糸杉は墓地や教会に寄り添う木。生と死、此岸と彼岸の境界を示すマーカーのように扱われます。そこへ「どこかへ連れていく」曲がる道と、寄り添う二人、ゆっくり進む馬車。
象徴を説明で押しつける必要はありませんが、画面が“いまこの瞬間の夜道”と“どこかへ向かう時間”を同時に含んでいることは、歩く速度と筆致のリズムから自然に伝わってきます。

ぬい
ぬい

うわ、そんな意味が隠されていたのか。

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まとめ──“見上げる空”と“歩く足”を同じ速度で

《糸杉と星の見える道》は、サン=レミ期に培った夜景表現の総まとめのような作品です。
暗さではなく発光する青、重みではなくうねる線。見上げる空と歩く足、二つの速度が一枚の中で噛み合い、私たちの体感に直結する。
星空のロマンよりも、帰り道の息づかいに寄り添う絵――それがこの作品の魅力です。

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