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パオロ・ウッチェロを解説!遠近法に取り憑かれた初期ルネサンスの画家

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アーティスト解説
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パオロ・ウッチェロ(Paolo Uccello, 1397年頃〜1475年)は、フィレンツェ初期ルネサンスで活躍した画家です。

彼の名前を一気に有名にしたのは、立てかけられた槍や倒れた兵士までを、きっちり一点に向かって並べた《サン・ロマーノの戦い》の連作。
また《聖ゲオルギウスと竜》では、幻想的な岩山と不思議なドラゴンを、将棋盤みたいな地面のパースの上に配置して、夢とも現実ともつかない世界を作り上げました。

同時代の人々からは「遠近法に夢中になりすぎて、食事を忘れる」とまで噂されたウッチェロ。
彼の作品は、厳密な線遠近法と、やや現実離れした物語世界が組み合わさった独特の魅力を放っています。

ぬい
ぬい

数学オタクとファンタジー作家が合体したみたいな画家だね。

そうそう、そのミックス感がウッチェロのいちばんおいしいところだと思う。

レゴッホ
レゴッホ
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パオロ・ウッチェロ

ここで簡単に人物紹介。

作品詳細

生没年:1397年頃〜1475年

出身地:フィレンツェ近郊(本名はパオロ・ディ・ドーノとされる)

主な活動地:フィレンツェを中心に、ヴェネツィアなどでも活動

代表作: 《サン・ロマーノの戦い》3点(ロンドン/パリ/フィレンツェに分蔵)、《聖ゲオルギウスと竜》、《大洪水》など

得意分野:線遠近法を徹底した構図設計、兵士や馬、ドラゴンなどの劇的な場面

特徴:人物はやや硬く、色彩は装飾的。幾何学的な空間の中に、寓話的・騎士物語的な世界を展開する

ぬい
ぬい

データだけ見ると“理系寄りの戦闘シーン担当”って感じ。

でもそこに妙なファンタジー要素が混ざるから、一筋縄じゃいかないんだよね。

レゴッホ
レゴッホ
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ウッチェロと遠近法|線のパースに命をかけた画家

15世紀前半のフィレンツェでは、ブルネレスキやマザッチョが線遠近法を理論化し、実験していました。
ウッチェロも若いころからこの新しい空間表現に強く惹かれ、円や立方体をさまざまな角度から描く練習を重ねたと伝えられています。

彼の特徴は、遠近法を「自然に見せる」ためというより、むしろ「見せつける」ように使うところにあります。
床のタイル、倒れた兵士、散乱する槍、建物の輪郭――それぞれが同じ消失点に向かって整列し、画面全体に幾何学的なリズムを生み出します。

その結果、現実の戦場や街角というよりは、計算し尽くされた舞台装置の上で物語が進行しているような、不思議な印象が生まれます。
ここに、ウッチェロならではの「奇想」が宿っています。

ぬい
ぬい

リアルに見せたいというより、「パースって面白いでしょ!」って主張してくる感じだね。

うん、そのちょっとやりすぎなところが、逆に今っぽくて好き。

レゴッホ
レゴッホ
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代表作《サン・ロマーノの戦い》|槍と馬で描く遠近法の実験場

パオロ・ウッチェロ《サン・ロマーノの戦い》を解説!ルネサンスの戦闘画

《サン・ロマーノの戦い》は、15世紀半ばに描かれた三点からなる大きな絵画連作です。
フィレンツェ軍と敵対勢力との戦いを題材にしながら、ウッチェロは歴史的記録というより「遠近法のショーケース」としてこの作品を設計しました。

画面には、鎧をまとった騎士たちが馬に乗り、槍や旗が斜めに交差しています。
地面には折れた槍や兵士の身体が一直線に並び、手前から奥へ向かうパースラインを強調しています。
馬の身体は彫像のように固く、色とりどりの鎧や旗が、夜の舞台でスポットライトを浴びているかのように浮かび上がります。

戦いの緊張感よりも、構図のリズムと形の美しさが前面に出ている点が、ウッチェロらしいところです。
遠近法に魅了された画家が、「もし戦場すべてを一つの幾何学図形にまとめたら?」という実験をしているようにも見えます。

ぬい
ぬい

歴史画っていうより、巨大なパースの練習帳みたい。

そう、それを本気でやっちゃったから、結果として名作になった感じだね。

レゴッホ
レゴッホ
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《聖ゲオルギウスと竜》|パースの上で踊るファンタジー

パオロ・ウッチェロ《聖ゲオルギウスと竜》を解説!ドラゴン退治の絵

もう一つの代表作《聖ゲオルギウスと竜》では、ウッチェロの幻想的な一面がよく表れています。

岩山の前で、騎士ゲオルギウスが白馬に乗り、槍で竜にとどめを刺そうとしています。
竜は大きな口を開け、血を流しながら地面に倒れ込み、背景には洞窟の暗がりが口を開けています。
一方で、救われた王女は優雅なドレス姿で、まるで宮廷の貴婦人のように静かに立っています。

注目したいのは、地面に描かれた四角形のパターンや、洞窟の輪郭がつくる強い遠近感です。
現実にはありえないほど整った“床”の上で、ドラゴン退治というファンタジーシーンが展開しているため、夢の中を覗き込んでいるような感覚になります。

ウッチェロの想像力と遠近法への執着が、もっとも詩的な形で融合した作品と言えるでしょう。

ぬい
ぬい

ドラゴンより、地面のパースのほうが主張強いのがじわじわ来る。

だよね。でもそのおかげで、余計に「変な夢を見た」みたいな世界観になってると思う。

レゴッホ
レゴッホ
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生涯と評価|同時代には理解されにくかった先駆者

ウッチェロは、フィレンツェの大きなプロジェクトにも参加しましたが、同時代の巨匠マザッチョフラ・アンジェリコほどの名声は得られませんでした。
遠近法に凝りすぎて、人物の自然さや感情表現がおろそかになっていると見なされた面もあったようです。

しかし、19〜20世紀になると評価は一変します。
形のリズムや幾何学的な構図を重視する近代の画家たちから、ウッチェロの作品は「抽象画の先取り」のように見えたのです。
特に《サン・ロマーノの戦い》の連作は、キュビスムや未来派の画家たちに影響を与えたとされています。

今では、感情豊かなルネサンス絵画の“本流”とは別のラインで、実験精神に満ちた唯一無二の画家として語られています。

ぬい
ぬい

当時は変人扱いでも、時代が追いつくパターンってやつだね。

うん、「やりすぎ」の人ほど、後になってから急にありがたがられるんだよね。

レゴッホ
レゴッホ
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おすすめ書籍

このサイトの参考にもさせて頂いている本を紹介します。

まとめ|ウッチェロを見ると何がわかるのか

パオロ・ウッチェロは、遠近法という新しい道具に心から魅了され、その可能性をとことん追いかけた画家でした。

《サン・ロマーノの戦い》に見られる槍と馬のリズム、《聖ゲオルギウスと竜》の不思議な舞台空間。
どの作品にも、現実の再現を超えた「構図そのものの面白さ」が前面に出ています。

ルネサンス絵画を「人間ドラマ」からだけでなく、「空間と形の実験」という視点でも楽しみたい人にとって、ウッチェロはぜひ知っておきたい存在です。
彼のパースだらけの世界に入り込むと、絵画が数学とファンタジーのあいだを自由に行き来できるメディアだということが、改めて実感できるはずです。

ぬい
ぬい

ウッチェロを知ると、「ルネサンス=写実」だけじゃないって分かるのがいいね。

ほんとそれ。線と形で遊びたい派には、めちゃくちゃ刺さる画家だと思う。

レゴッホ
レゴッホ
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