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ゴッホ《ピエタ(ドラクロワによる)》徹底解説!サン=レミで生まれた名画

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ポスト印象派
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青い外套のマリアが、力の抜けたキリストをそっと抱きとめる――。
悲嘆の場面なのに、画面は不思議と明るい。黒で影を増やさず、青と黄、そしてわずかな紫や橙の響きだけで感情と立体を立ち上げているからです。

《ピエタ(ドラクロワによる)》は、アルルの騒動後にゴッホが入院したサン=レミ療養所で1889年に制作した宗教画。ウジェーヌ・ドラクロワの《ピエタ》を伝える白黒のリトグラフ(石版複製)を参照したうえで、色で“救い直す”ように再解釈した一枚です。

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ぬい
ぬい

ドラクロアの作品のカバーみたいなことかな?

そうだね!そんな感じ!

レゴッホ
レゴッホ
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《ピエタ(ドラクロワによる)》

まずは簡単に作品の情報を紹介します。

作品詳細
  • 作品名:《ピエタ(ドラクロワによる)》
  • 制作年・場所:1889年、サン=レミ=ド=プロヴァンス
  • 参照元:ドラクロワ《ピエタ》の白黒リトグラフ(油彩原作のモノクロ複製)
  • 形式:油彩・カンヴァス(縦画面)
  • ヴァージョン:油彩が2点ヴァチカン美術館ファン・ゴッホ美術館 所蔵)
  • テーマ:聖母が十字架降下後のキリストを抱く伝統主題「ピエタ」の再解釈
ぬい
ぬい

宗教画なんだね。

うん。ゴッホにしては珍しいかも。

レゴッホ
レゴッホ
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制作背景|“白黒の原図”を色で翻訳する

サン=レミ期のゴッホは体調を見ながら、ミレーやドラクロワ、レンブラントの版画や図版を手元に置きました。
狙いは、モノクロの明暗情報を色相と明度の組み合わせに置き換える練習です。

《ピエタ》でもその方法が徹底されます。陰影の濃淡を黒で足さず、青・黄・紫・橙の関係で量感と情感を作る。
結果として、悲しみの絵でありながら“暗くならない”という、ゴッホらしい倫理がにじみます。

ぬい
ぬい

19世紀には、名画を普及させるために白黒のリトグラフ(石版画)が大量に作られた。ゴッホが目にしたのは、その「白黒複製」だった可能性が高いんだね。

うん。
ゴッホが手に取った参照資料が白黒版画だった可能性が高いと言われているよ。

レゴッホ
レゴッホ
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構図の見どころ|抱擁のアーチと視線の円運動

左上から左下にかけて、マリアの上体と外套が大きな弧(アーチ)を描きます。
対してキリストの身体は反対方向へ傾き、二人の腕が楕円の回路
をつくって視線を循環させます。

この“抱擁のアーチ”が縦長画面の重心を安定させ、私たちを場面の内側へ招き入れる天蓋のような役割を果たします。
右側の岩の断面と、背後の空の流線は舞台装置として感情の震度を受け止め、画面の呼吸を整えます。

ぬい
ぬい

なるほどね。そこまで計算されてるの凄いな。

絵画って知れば知るほど奥が深いよな。

レゴッホ
レゴッホ
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色彩設計|青の包容 × 黄の恩寵(おんちょう)

マリアの衣はコバルトから群青へ深まり、折り目の影で冷たい紫がそっと効きます。
キリストの肌は黄とオーカーにわずかな緑が混ざり、血の気の引いた静けさと光の名残が同居します。

背景の空は黄緑から薄い青へゆっくり移ろい、夜明け前の気配を運び込みます。
輪郭のいくつかは淡い黄で縁取られ、形が硬く閉じずに“やわらかく抱えられる”印象に。

黒に頼らないため、画面は自らほのかに発光して見えます。これが、宗教画の悲嘆を希望の温度で包み直す要因です。

ぬい
ぬい

ゴッホって青と黄色の使い方が上手だよね。

そこに気づくとはお目が高い。

レゴッホ
レゴッホ
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ドラクロワとの違い|明暗法から“色相法”へ

ドラクロワ ピエタ

ドラクロワの油彩は重厚な明暗で量感と劇性を高めます。
ゴッホはその構図を受け継ぎつつ、明暗=黒の量を、色の相互作用へ翻訳しました。

その結果、嘆きの身振りは保たれながら、トーンは一段明るくなり、作品は「悲劇のクライマックス」から「抱きとめる救い」へと性格を変えます。
画面手前に差し伸べられたマリアの手は、場面の内側だけでなく私たち鑑賞者にも開かれています。ここに本作の優しさが宿ります。

ぬい
ぬい

ゴッホと比べると大分暗い印象。

色合いで雰囲気変わるよな。

レゴッホ
レゴッホ
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2つのヴァージョンを見分ける楽しみ

ヴァチカン版は空の黄〜黄緑がやや明るく、ドラマの光が際立ちます。

ヴァチカン版


アムステルダム(ファン・ゴッホ美術館)版は青が深く落ち着き、抱擁の静けさが前面に出ます。

アムステルダム版

どちらが“正しい”ではなく、ゴッホが色の温度を微調整しながら、物語の照度を探っていると見ると腑に落ちます。
可能なら二点を図版や現物で見比べると、色で物語をコントロールする手つきがはっきり体感できます。

ぬい
ぬい

ヴァチカン版の絶望感凄いな。

色合いで雰囲気変わるよな。

レゴッホ
レゴッホ
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まとめ|“色で受け止める”というゴッホの倫理

《ピエタ(ドラクロワによる)》は、白黒の原図を出発点に色で救いを語り直したサン=レミ期の到達点です。
青は包容、黄は恩寵。その二つがぶつかる境目で、紫や橙が生まれ、感情に奥行きが宿る。

宗教の物語を越えて、失われたものをどう受け止めるかという普遍的な問いに、静かな答えを返す絵。
大きな声では語らないのに、見終えたあと胸の温度が少しだけ上がる――そんな一枚です。

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