1886年にパリへ移ったフィンセント・ファン・ゴッホは、印象派や新印象派の画家たちと出会い、色と光の扱いを劇的に変化させました。
モンマルトルの風車や菜園、アニエールの河畔、にぎわうカフェ、そして浮世絵への憧れ──短い滞在ながら、主題も技法も一気に広がります。
本記事は、これまで公開してきた各作品解説へスムーズに飛べる“索引兼ダイジェスト”。気になる作品からお楽しみください。
- ムーラン・ド・ラ・ギャレット
- 《画家としての自画像》
- おいらん(英泉による)
- タンギー爺さん
- 《モンマルトルの風車》
- 《サン=ピエール広場を散歩する恋人たち》
- 《ヤマウズラの飛び立つ麦畑》
- 《セーヌの岸辺》
- 《テオのアパルトマンからの眺め》
- 《カフェ・タンブランの女》
- 《坊主としての自画像》
- 《梅の花(広重による)》
- 《靴》
- 《アニエールのレストラン・ド・ラ・シレーヌ》
- 《パリの小説》
- 《後ろ姿のトルソ(女)
- 《ひまわり》(1887)
- 《黒いフェルト帽の自画像》
- 《雨の大橋(歌川広重による)》
- 《ヴィーナスのトルソ》
- 《膝をつく人体模型》
- 《グラジオラスとエゾキクを生けた花瓶》
- 《アブサンが置かれたカフェテーブル》
- 《クリシー大通り》
- 《エティエンヌ=リュシアン・マルタンの肖像》
- 《モンマルトル:風車と菜園》
- おすすめ書籍
- まとめ
ムーラン・ド・ラ・ギャレット

ゴッホの《ムーラン・ド・ラ・ギャレット》を解説!ゴッホ流の描き方とは
作品名:ムーラン・ド・ラ・ギャレット(Moulin de la Galette / Montmartre)
制作年:1886年(パリ時代)
技法:油彩・カンヴァス(中判)
モチーフ:モンマルトルの風車と周辺の通り・人びと
関連:同主題のヴァリアントや素描が複数存在

サイズや版がいくつかあるやつだよね。
うん、モンマルトル連作のひとつ。現地での写生とアトリエ仕上げが混ざってる。

《画家としての自画像》

ゴッホ《画家としての自画像》徹底解説!仕事中の自分をブランド化した一枚
作品名:《画家としての自画像》
制作年・場所:1887(12月)–1888年(2月)、パリ(パリ期の掉尾を飾る自画像)
技法:油彩・カンヴァス
サイズ:約65×50cm(中判)
所蔵:ファン・ゴッホ美術館/アムステルダム
ポイント:印象派・新印象派の影響が濃く、黒を避けた明るいパレット、短く素早い筆触

場所も年もハッキリしてきてうれしい
パリ締めくくりの一枚って覚えておくと、他の自画像との流れが見やすいよ。

おいらん(英泉による)

ゴッホの《おいらん(英泉による)》完全解説!黄色の画面に花魁が躍る
作品名:おいらん(英泉による) / The Courtesan (after Eisen)
制作年:1887年(パリ時代)
技法/サイズ:油彩・カンヴァス/約 100.7 × 60.7 cm
所蔵:ファン・ゴッホ美術館(アムステルダム)
出典モチーフ:渓斎英泉の花魁図(当時の雑誌『パリ・イリュストレ』日本特集号の表紙に載った図版が手がかり)

雑誌の表紙を見て、等身大にデカく“油絵化”したってことね。
そう。印刷の小さな図を、色と絵肌で増幅してる。

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タンギー爺さん

ゴッホの《タンギー爺さん》を解説!背景に浮世絵?日本との関係は?
作品名:タンギー爺さん
制作年:1887年(パリ時代)
技法:油彩/カンヴァス
所蔵:パリのロダン美術館所蔵で知られる色彩豊かな最終版ほか、複数ヴァージョンが存在します。
キーワード:モンマルトル、浮世絵(ジャポニスム)、支援者の肖像

同じモチーフが何枚かあるやつだよね。
そう。暗めの初期版→色面が賑やかな最終版って進化してる。

《モンマルトルの風車》

ゴッホの《モンマルトルの風車》を解説!1886年パリでの作品
作品名:モンマルトルの風車(英題例 Windmills at Montmartre)
制作年:1886年(パリ、モンマルトル)
技法:油彩/カンヴァス
主題:丘の菜園・小屋と風車(モンマルトルに残っていた風車群)
所蔵:石橋財団アーティゾン美術館

“連作の一環”って理解で見ると、位置づけが掴みやすい。
そう。丘をいろんな角度と距離で何度も描いてるんだ。

《サン=ピエール広場を散歩する恋人たち》

ゴッホ《サン=ピエール広場を散歩する恋人たち》を解説!1887年パリ
作品名:サン=ピエール広場を散歩する恋人たち
制作:1887年5月(パリ、モンマルトル)
技法:油彩/カンヴァス
主題:サクレ=クールの丘の北側にある小公園(サン=ピエール広場)の並木と園路、そこで時間を過ごす恋人たち
所蔵:ファン・ゴッホ美術館
備考:同時期に公園・河畔・並木を題材とする近作が複数制作されています

場所はサクレ=クールの近くなんだ。
うん、当時のモンマルトルは“街の端境”で、畑や公園がまだ残ってたんだよ。

《ヤマウズラの飛び立つ麦畑》

ゴッホ《ヤマウズラの飛び立つ麦畑》を解説!1887年パリ期の作品
作品名:ヤマウズラの飛び立つ麦畑(一般に《ひばり〈Lark〉の飛び立つ麦畑》としても知られます)
制作:1887年6〜7月(パリ)
技法:油彩・カンヴァス
主題:刈り跡の手前帯/風にそよぐ麦の帯/高く澄んだ空、飛び立つ小鳥
所蔵:ゴッホ美術館(アムステルダム)

タイトルに揺れがあるの、あとで教えて。
任せて。鳥の同定にちょっと歴史があるんだ。

《セーヌの岸辺》

ゴッホ《セーヌの岸辺》を解説!1887年パリ、分割筆触でつかむ水と光
作品名:セーヌの岸辺
制作時期:1887年5〜7月(パリ、アニエール〜クリシー周辺)
技法:油彩/カンヴァス
主題:川べりの土手と並木、家並み、曇りがちの空、風を映す水面
所蔵:ファン・ゴッホ美術館
備考:同時期にセーヌ河畔や橋を主題にしたヴァリアントを多数制作

やっぱり連作のひとつなんだ。
うん。天気や視点を変えて何度も描いてるよ。

《テオのアパルトマンからの眺め》

ゴッホ《テオのアパルトマンからの眺め》を解説!1887年パリの作品
作品名:テオのアパルトマンからの眺め(英題例 View from Theo’s Apartment)
制作時期:1887年3〜4月
制作地:パリ・モンマルトル(ルー・レピック54番地)
技法:油彩/カンヴァス
主題:窓辺から望む屋根並みと遠景、点描的ストロークによる明るい空
所蔵:ファン・ゴッホ美術館

住所がはっきりしてるのが面白いな。
現地の坂道を知ると、画面の“段差”の理由も腑に落ちるよ。

《カフェ・タンブランの女》

ゴッホ《カフェ・タンブランの女》を解説!1887年初頭にパリの作品
作品名:カフェ・タンブランの女
制作時期:1887年1〜3月ごろ
制作地:パリ(モンマルトル、ブールヴァール・ド・クリシー沿いの Café du Tambourin)
技法:油彩/カンヴァス
モデル:アゴスティーナ・セガトーリ(Café du Tambourin の経営者、元モデル)
所蔵:ファン・ゴッホ美術館

モデルが店主本人ってところが、もう物語だね。
うん、店の“顔”を店の中で描いてるのがいいよな。

《坊主としての自画像》

ゴッホ《坊主としての自画像》を解説!ゴーガンへの誓いをまとった緑の肖像
作品名:坊主としての自画像
制作時期:1888年(ゴーガンとの交換を念頭に、同年秋に制作されたと考えられます)
制作地:アルル期の仕事として位置づけられます。
技法:油彩/カンヴァス
所蔵:フォッグ美術館

交換用の作品なんだ。
そう。詳しくは後で解説するね。

《梅の花(広重による)》

ゴッホ《梅の花(広重による)》を解説!ジャポニスムを油彩で増幅した実験作
作品名:梅の花(広重による)
典拠:歌川広重《名所江戸百景 亀戸梅屋舗》
制作:1887年10–11月、パリ
技法:油彩・カンヴァス
所蔵:ファン・ゴッホ美術館(アムステルダム)
備考:同年、同シリーズから《雨の橋(広重による)》も制作

橋のほうが先で、そのあとに梅って流れなんだ。
うん。同じ広重から続けてやって、手応えを深めてるよ。

《靴》

作品名:靴
制作年:1886年
制作地:パリ
技法:油彩/カンヴァス
主題:使い古した革靴一足(ほどけた紐、強い光沢と摩耗の描写)
備考:ゴッホは“靴”を繰り返し描いており、革靴だけの作例も六点ほど残るとされます

やっぱり一回きりじゃないんだ。
うん。少しずつ角度も質感も変えて、しつこく描いてる。

《アニエールのレストラン・ド・ラ・シレーヌ》

作品名:アニエールのレストラン・ド・ラ・シレーヌ
制作:1887年(パリ近郊アニエール)
技法:油彩/カンヴァス
主題:斜面道路に面したレストランの外観とバルコニーの人々、蔦や旗、店名の看板
関連:同年、アニエールやクリシー周辺でセーヌ河畔・橋・公園などの連作を制作)
所蔵:オルセー美術館

舞台が河畔の町アニエールってだけで、風が涼しくなる。
だろ?セーヌ沿いは光が跳ね返って、色が軽くなるんだ。

《パリの小説》

ゴッホ《パリの小説》を解説!黄色い本と一輪のバラが描く都会の机上
作品名:パリの小説(関連題《黄色い本》)
制作:1887年、パリ
技法:油彩/カンヴァス
主題:黄表紙の本の山と開いた本、机、ガラスのコップに挿したバラ
展示史:翌1888年3月のアンデパンダン展に出品を計画した際、もとの呼称「黄色い本」から《パリの小説》への改題を画家自身が望んだと伝わります

元タイトルは「黄色い本」だったんだ。
うん、展示に合わせて“パリの空気”が伝わる題にしたかったんだと思う。

《後ろ姿のトルソ(女)

ゴッホの《後ろ姿のトルソ(女)》を解説!石膏像でつかんだ光の設計
作品名:後ろ姿のトルソ(女)/Female Torso, Seen from the Back
制作:1887年、パリ
技法:油彩/カンヴァス
サイズ:40.8 × 27.1 cm
所蔵:ファン・ゴッホ美術館(アムステルダム)

:寸法まで小ぶり。勉強のための“実験台”って感じだ。
うん、短い時間で光の当たり方を試すには最適サイズだね。

《ひまわり》(1887)

ゴッホの《ひまわり》(1887)を解説!アルル連作の“前夜”
作品名:ひまわり(英題例 Sunflowers/しばしば “Two Cut Sunflowers” と呼ばれる図)
制作:1887年夏、パリ
技法:油彩/カンヴァス
主題:切り取られた二つのひまわりの花頭(種子盤と総苞片を強調)
所蔵:ベルン美術館(スイス・ベルン)
備考:同年夏に手がけられた“ひまわり”の作品群の一つと位置づけられます

この年だけで複数点、試してるんだね。
うん、色と構図の実験を重ねて、翌年の連作につないでる。

《黒いフェルト帽の自画像》

ゴッホ《黒いフェルト帽の自画像》を解説!暗い土色から光へ踏み出す起点
作品名:黒いフェルト帽の自画像
制作年・場所:1886–1887年夏、パリ
技法:油彩/カンヴァス
主題:黒いフェルト帽・黒い上衣の半身像、赤褐色の背景、右側からの光
位置づけ:パリ期のごく初期に属する自画像の一つ
所蔵:ファン・ゴッホ美術館(オランダ・アムステルダム)

最初期ってだけあって、まだ渋い色味だね。
うん、でもここから一気に色が明るくなるんだ。

《雨の大橋(歌川広重による)》

ゴッホ《雨の大橋(歌川広重による)》を解説!浮世絵を質感豊かに表現
作品名:雨の大橋(歌川広重による)
制作年・場所:1886–1887年、パリ
技法・サイズ:油彩/カンヴァス、約73×54cm
所蔵:ゴッホ美術館(アムステルダム)
出典モチーフ:歌川広重《名所江戸百景 大はしあたけの夕立》
備考:ゴッホが油彩で拡大・翻案した“浮世絵の模写”の代表作(三点現存するうちの一つ)

模写っていっても、ただのコピーじゃないね。
うん、“油絵にする”っていう別ジャンルの仕事なんだ。

《ヴィーナスのトルソ》

作品名:ヴィーナスのトルソ(Torso of Venus)
制作:1886年6月、パリ
技法・支持体:油彩/厚紙(oil on cardboard)
サイズ:約46.4 × 38.1 cm
所蔵:ファン・ゴッホ美術館(アムステルダム)

キャンバスじゃなくて厚紙なんだ。
機動力重視。練習を回すには軽くて早いのがいいんだ。

《膝をつく人体模型》

ゴッホの《膝をつく人体模型》を解説!石膏像で「光の体積」をつかむ
作品名:膝をつく人体模型(英題例:Kneeling Ecorche)
制作:1886年6月、パリ
技法:油彩
主題:ひざまずく石膏の人体模型(小型のスタディ用像)
サイズ:約35.2 × 26.8 cm
所蔵:ファン・ゴッホ美術館(アムステルダム)

簡潔な情報だけど、何を見せたい絵かがはっきりしてる。
そう。素材と光、そこに全集中って感じだね。

《グラジオラスとエゾキクを生けた花瓶》

ゴッホ《グラジオラスとエゾキクを生けた花瓶》を解説!1886年パリ
作品名:グラジオラスとエゾキクを生けた花瓶(Vase with Gladioli and Chinaese Asters)
制作年・場所:1886年8–9月、パリ
技法・支持体:油彩/カンヴァス
サイズ:約46.5 × 38.4 cm
所蔵:ファン・ゴッホ美術館(アムステルダム)
モチーフ:赤・桃のグラジオラス、白と黄のエゾキク(アスター)、ガラス花瓶、卓上に折枝

題名どおり、花と器だけでグッとくる。
余白を明るくして、花の色で画面を動かしてるんだ。

《アブサンが置かれたカフェテーブル》

ゴッホ《アブサンが置かれたカフェテーブル》を解説!ガラス越しの冷たい緑
作品名:アブサンが置かれたカフェテーブル(Café Table with Absinthe)
制作:1887年2–3月、パリ
技法:油彩/カンヴァス
サイズ:46.3 × 33.2 cm
所蔵:ファン・ゴッホ美術館(オランダ・アムステルダム)

要素は少ないのに、見どころは多いね。
削ったぶん、色と光が前に出るんだよ。

《クリシー大通り》

ゴッホの《クリシー大通り》を解説!青の素描がとらえた都会の呼吸
作品名:クリシー大通り(The Boulevard de Clichy)
制作時期・場所:1887年2月、パリ・モンマルトル
技法・素材:紙に鉛筆・ペン・インク・チョーク・水彩
サイズ:40.1×54.4cm
所蔵:ファン・ゴッホ美術館(オランダ・アムステルダム)

基本は素描なんだね。
うん、でも“色の試し描き”としては完成度が高いよ。

《エティエンヌ=リュシアン・マルタンの肖像》

ゴッホの《エティエンヌ=リュシアン・マルタンの肖像》を解説!
作品名:エティエンヌ=リュシアン・マルタンの肖像(Portrait of Etienne-Lucien Martin)
制作年:1887年11月(パリ)
技法・素材:油彩/カンヴァス
サイズ:65.8 × 54.5 cm
所蔵:ファン・ゴッホ美術館(アムステルダム)※ヴィンセント・ファン・ゴッホ財団蔵

サイズもしっかり。お店の壁に掛けても存在感すごそう
常連が“お、親方!”って見上げるやつね

《モンマルトル:風車と菜園》

ゴッホの《モンマルトル:風車と菜園》を解説!1887年のパリ
作品名:モンマルトル:風車と菜園(Montmartre: Windmills and Allotments)
制作:1887年3–4月、パリ
技法・素材:油彩/カンヴァス
サイズ:45.2 × 81.4 cm(横長)
所蔵:ファン・ゴッホ美術館(オランダ・アムステルダム)

横長のサイズ、景色がぐっと広がる。
視界の広さをそのまま画面に持ち込むための比率だね。

おすすめ書籍
「ゴッホについて本で学びたいけど、どんな本が自分に合っているのかわからない」そんなお悩みを持つあなたへ贈る、ゴッホ入門編の本をご紹介します!Top5は別記事で紹介しています。
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まとめ
パリ期は、主題の拡張と色彩の更新が一度に起きた時間でした。風景、カフェ、静物、肖像、そして浮世絵の翻案──どの入口から読んでも、ゴッホの“明るさ”が立ち上がってきます。上のリンクから、気になる作品へどうぞ。
【他の時代の作品を知りたい方向け】
・ゴッホのオランダ期の作品まとめ!ヌエネン・ハーグ・エッテンの名画
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